愛媛県・内子町の中心にある八日市・護国の町は、明治から大正にかけ、木蝋の生産・輸出で栄えました。しかし、パラフィンなどのように、蝋が化学精製されるようになってくると、需要も衰え、街も急速に寂れてしまいました。
ところが、何が幸いするかわからない。急速に寂れたことによって、余計な手を付けられることなく栄えたころの美しい町並みがフリーズドライされることに。後年、それが観光資源となることに気づいた官民の慧眼が、この街を復元・整備。1983年に愛媛県指定文化の里「木蝋と白壁の町並み」として指定されて以後、それが「まちおこし」の成功へとつながっていたのです。
大正時代に建てられた歌舞伎劇場「内子座」は、こんな内子のシンボルとして端正な姿を現在に留めています。この芝居小屋は、内子の町が木蝋や生糸などの生産で栄えた大正5年に、地元の人々の娯楽の場として地元有志の出資により建設されました。
農閑期には歌舞伎や文楽、後に映画や落語なども演じられていたが、芝居が廃れていった戦後には映画館に改装。さらに商工会館として利用すべく桟敷の撤去などの大改装を受けたが、商工会館の閉鎖後、老朽化により取り壊されようとしていました。しかし、町並み保存の機運も高まった頃に、まちづくりの核として活用していくべきとの町民からの要望により、実際に歌舞伎公演ができるよう舞台や客席を復元・整備することになり、1995年に復活しました。
回り舞台や迫りなどの舞台装置から客席の広告看板に至るまで、その復元は徹底。今や、日本の芝居や劇場関係者からは、伝統的な芝居公演を開催することができる貴重な「小屋」として知られています。この業界に少なからず関わりのあるワタシとしては、非常に興味深く見学させていただきました。関係者の熱意には頭が下がりますね。
- 訪問日:2006年1月22日