アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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「建白書」・「選挙公約」に反する翁長知事の対米「書簡」

2015年04月25日 | 戦争・天皇

      

 沖縄選出の玉城デニー衆院議員(生活)が22、23両日、ワシントンを訪れて米議会関係者と会い、翁長雄志知事の「書簡」を手渡しました。5月訪米予定の翁長氏の「露払い役になる」(玉城氏、17日付沖縄タイムス)目的でした。

 しかし結果は、「辺野古見直しに同意する意見はなかった」(玉城氏)とし、「帰沖後に翁長知事に米国の厳しい現状を報告する方針」(25日付沖縄タイムス)だといわれます。

 ところで、玉城氏が米国議員などに手渡した翁長氏の「書簡」とは、いったいどのような内容だったのでしょうか。

 その全文が琉球新報(4月18日付)に掲載されました。たいへん重大な問題を含んでいます。同紙から、翁長氏の「書簡」全文を転記します。

 「戦後70年間、沖縄は多くの基地を負担し、日米の安全保障に貢献してきました。しかしながら人口増加と経済成長を続ける中で、米軍基地は沖縄発展の阻害要因となっており、今後も国土面積のわずか0・6%の沖縄に米軍専用施設の74%を集中させ続けることは不可能な状態です。
 このまま辺野古の埋め立てを強行するようであれば、県民の怒りは日米両政府、在沖米軍へ矛先が向かうことになります。
 沖縄県としては日本の安全保障は日本国民全体で考えるべきであることから、普天間飛行場の辺野古移設に反対し、県外移設することを求めております
 貴殿におかれましても、われわれの考えにご理解を賜り、ご協力をお願い申し上げます。」(太字は私)

 沖縄の基地が「日米の安全保障に貢献」してきたなど、いかにも「日米安保体制が重要だというのは十二分に理解している」(5日の菅官房長官との会談)という翁長氏らしい評価で、けっして賛同することはできませんが、その問題は別途考えるとして、ここでは重大な事実の歪曲を指摘しなければなりません。

 それは沖縄県が普天間基地の「県外移設」を求めていると言い切り、それへの「理解と協力」を求めていることです。
 いったいいつから普天間基地の「県外移設」が沖縄県の考えになったのでしょうか。

 翁長氏はこれまで再三にわたり、41全市町村長連名の「建白書」(2013年1月28日)が沖縄の民意だと言ってきました。「建白書」こそ「オール沖縄」の旗印のはずです。その「建白書」は、普天間基地について何と言っているでしょうか。

 「米軍普天間基地を閉鎖・撤去し、県内移設を断念すること」

 これが「建白書」です。「県外移設」と「県内移設断念」は、本土の人間には同じように聞こえるかもしれませんが、大変大きな違いがあります。「県外移設」とは、沖縄県以外の本土に基地を移せ、ということです。沖縄の運動において、この言葉をスローガンに掲げることは特別の意味を持ちます(桃原一彦氏「県外移設論の理解必要」2014年9月29日付沖縄タイムス参照)。

 「建白書」はその「県外移設」の立場ではありません。「県内移設を断念」せよ、とは、普天間の代替基地をどこにするかという「移設」論ではなく、無条件に閉鎖・撤去せよ、ということです。

 この違いは極めて重要です。先日も引用した沖縄タイムスの県民世論調査(21日付)の結果をもう一度紹介します。

 普天間飛行場について「どのような解決方法が望ましいと思いますか」という質問に対し、県民の答えはこうでした。
   名護市辺野古の新基地建設     18・7%
   県外への移設              18・3%
   国外への移設              25・6%
   無条件の閉鎖・撤去          32・4%
   その他・答えない             5・0%

 沖縄県民は「県外移設」と「無条件閉鎖・撤去」を区別したうえで、ダブルスコアに近い差で「無条件閉鎖・撤去」を選択しているのです。

 翁長氏が対米「書簡」で「県外移設」が沖縄県の意思であるかのように言うのは、「建白書」に反するだけでなく、県民多数の意思にも背くものです。

 さらにそれは、翁長氏自身の選挙公約にも反します。「建白書で大同団結し、普天間基地の閉鎖・撤去、県内移設断念、オスプレイ配備撤回を強く求める」(知事選政策「基本的な認識」)。これが翁長氏の公約だったからです。
 翁長氏の「建白書」「選挙公約」違反は、けっして許されるものではありません。それは辺野古新基地建設を阻止するこれからのたたかいにも重大な影響を及ぼします。

 同時に指摘しなければならないのは、こうした翁長氏の重大な誤りに対し、それを指摘する県政与党の議員・政党会派が皆無だということです。
 とりわけ問題なのは、日本共産党です。共産党は昨年の総選挙政策(11月26日発表)でも「普天間基地の無条件撤去を求めます」と明記したように、「無条件撤去」が党是です。本土へ基地を移す「県外移設」論の意味を熟知したうえで、それには絶対反対のはずです。「建白書」は「県外移設」ではなく「県内移設断念」だから共産党も賛成・賛美することができるのです。

 その重大なポイントである、「県外移設」を勝手に対米的に公言した翁長氏の暴走、独断専行に対し、共産党はなぜ一言も異議申し立てをしないのでしょうか。「建白書」や「選挙公約」に反する翁長氏の言動を、なぜ正そうとしないのでしょうか
 翁長氏自身はもちろん、翁長氏を無批判に賛美する共産党など翁長県政与党の姿勢、責任もきびしく問われなければなりません。

 

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