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アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

沖縄米軍属女性殺害③「日本全体の問題」とは何か

2016年05月23日 | 日米安保・沖縄

    

 沖縄では22日、在沖米軍司令部があるキャンプ瑞慶覧前で追悼抗議集会が行われ、2000人が悲しみと怒りに震えました(写真左、中)。

 しかし、NHKは22日夜7時のニュースから23日朝7時のニュースまで、集会についてはおろか、事件自体についてさえ一切取り上げませんでした(写真右)。「事件の影響」(政府・自民党)を最小限に抑えようとする安倍政権の意向を反映したきわめて政治的な「報道」です。

 読売新聞は社説(21日付)で「今回の事件で看過できないのは27日のオバマ米大統領の広島訪問に対する影響だ」と言い切りました。これも「国益」最優先の政権に沿ったわかりやすい論説です。

 NHKや読売、産経など、いわば〝確信犯”だけでなく、いかにも政府を批判し、沖縄に寄り添っているかのように見えながら、重大な落とし穴がある主張や論説があります。

 以下、朝日新聞の社説(21日付)から抜粋します。

 「沖縄県民は幾度、おぞましい事件に直面しなければならないのか。…全国の米軍専用施設の75%近くが集中する沖縄で、米軍関係者による相次ぐ事件は深刻な基地被害であり、人権問題にほかならない。これ以上、悲惨な事件を繰り返してはならない。そのためには、沖縄の基地の整理・縮小を急ぐしかない。…日本の安全に米軍による抑止力は必要だ。だがそのために、平時の沖縄県民の安全・安心が脅かされていいはずがない。たび重なる米軍関係者による事件は、そうした問いを日本国民全体に、そして日米両政府に突きつけている。…辺野古移設の見直しや…日米地位協定の改定も、放置されてきたに等しい。地元の理解のない安全保障は成り立たない。こうした県民の不信と不安を日本全体の問題として受け止め、幅広く、粘り強く米側に伝え、改善の努力を始めなければならない」

 全国の米軍専用施設が沖縄に集中していること、事件は「深刻な基地被害」であることを指摘しています。「県民の不信と不安を日本全体の問題として受け止める」必要があるとも言っています。納得する人は少なくないのではないでしょうか。

 しかし、では「日本全体の問題として受け止める」とは何をすることなのか。その具体的な提起は何もありません。「基地の整理・縮小」「辺野古移設の見直し」「日米地位協定の改定」、すべて項目だけの抽象論です。

 一方、はっきり言い切っていることがあります。「日本の安全に米軍による抑止力は必要だ」。すなわち日米安保条約(軍事同盟)による米軍の駐留は「必要だ」という断定です。そのために「沖縄県民の不信と不安」を払拭する「改善」を米側に求めようと主張しているのです。(なお、「平時の沖縄県民の安全・安心が脅かされていいはずがない」と言いますが、「平時」でなく「有事=戦時」ならいいとでも言うのでしょうか)

  これでは基地を沖縄に集中させて犠牲を強いる現状は何も変わりません。

 「米軍による抑止力」=日米安保条約(軍事同盟)が「必要だ」というなら、その負担(犠牲)は日本全国で平等に担うのが当然です。すなわち、「沖縄の基地は本土へ移せ」「基地は本土が引き取る」と言うべきです。「日本全体の問題として受け止め」るとはそういうことでしょう。
 ところが日本の全国紙(本土紙)は、朝日に限らず、日米安保体制を肯定しながら、「沖縄の基地を本土へ」とは言いません。なぜなら、「本土の読者=国民」がそれに反発するからです。

 「沖縄」に寄り添っているように見せながら、ではその犠牲を平等に引き受けるのかと、自分に降りかかってきそうになると口をつぐむ。「本土メディア」と「本土の国民」のこの無責任な持たれあいが、沖縄の現状を作り出している一因です。
 日米両政府とともに、「本土メディア」と「本土の国民」も、「沖縄」の軍事植民地化の加害者であることを自覚する必要があります。

 しかしそれでも、私は「沖縄の基地を本土へ」には賛成しません。それは、「米軍による抑止力(日米安保条約=軍事同盟)が必要」だという前提に反対だからです。この前提を覆すことが、沖縄にとっても日本にとっても喫緊の最重要課題だと考えるからです。軍事基地は沖縄にも本土にもあってはならない、と主張することが、日米安保体制を覆す道につながると考えるからです。

 あなたはどうするのですか?
 米軍抑止力=日米安保体制を肯定したまま、犠牲を沖縄へ押し付け続けますか?
 日米安保体制を肯定し、犠牲を平等にするため「基地は本土(自分の居住地)へ」と主張しましか?
 それとも、日米安保体制に反対し、沖縄からも本土からも全ての基地撤去を目指しますか?

 いま問われているのは、私たち「本土の国民」です。

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