アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

翁長知事「承認取り消し会見」5つの問題点

2015年10月13日 | 沖縄・辺野古

   

 翁長沖縄県知事が13日、ようやく正式に「辺野古埋立承認」を取り消しました。防衛省は直ちに国交相に対し「不服審査請求・執行取り消し申立」を行い、埋立工事を強行する構えです。辺野古新基地阻止のたたかいは新たな段階に入りました。

 同日午前10時からの翁長氏の記者会見は、今後のたたかいの出発点ともいえるものでした。しかしそこには多くの問題がありました。それは辺野古新基地阻止のために、見過ごすことができないものです。

 ①なぜ重要会見が「30分」の時間制限なのか

 会見は開始前から、「30分」と限定されていました。そのため記者の質問は7人で打ち切られました。「ほかに日程があるため」(司会の県広報)だといいます。
 しかし翁長氏にとって、いいえ今の沖縄にとって、この問題以上に重要な「日程」があるでしょうか。会見は十分な時間をとり、記者から質問が出なくなるまで行うべきでした。
 
 これを問題にするのは、翁長氏のこうした官僚的なやり方が、一連の政府との協議を密室で行い、議事録すら作らなかった秘密主義とけっして無関係ではないからです。
 翁長氏は県民に対して十分な情報提供を行う義務があります。今後に通じる重要な問題です。

 ②「取り消し」を今日まで引き延ばしてきた責任を不問にするのか

 知事就任(昨年12月10日)以来10カ月。第三者委員会の報告からも90日が経過してしまいました。本来なら就任後真っ先にしなければならなかったことを、今日まで引き延ばしてきたのはなぜなのか。その責任をどう考えているのか。記者団はなぜその点を追及しないのか。
 この間、埋立工事の既成事実化はすすみ、辺野古の現場ではケガ人や逮捕者まで出し、「1カ月休戦(集中協議)」では安倍政権に戦争法案(安保法案)強行の時間まで与えてしまったのです。その責任は免れません。
 「取り消し」でこれまでの責任が帳消しになるわけではありません。

 ③安倍政権に「不服審査請求」の口実を与えた責任をどう釈明するのか

 安倍政権が「不服審査請求」を行うことについて、翁長氏は国が「私人」と同様に不服審査するのは「疑問だ」と述べました。その通りです。国が私人と同じように「不服審査請求」することは行政不服審査法の趣旨に反するというのが複数の専門家の見解です。したがって、沖縄防衛局に対して「聴聞」など行なう必要はなかったのです。
 ところが、「意見聴取」をわざわざ「聴聞」と言い換えてまで防衛局から意見を聞こうとしたのは翁長氏自身です。みずから国を「私人」扱いしてしまったわけです。それは今後政府に口実をあたえかねません。その責任はどう考えているのでしょうか。記者団はなぜそれを問わないのでしょうか。

 ④なぜ「承認撤回」について言及・質問しないのか

 埋め立て承認の「取り消し」と「撤回」は違います。「取り消し」は最終的には、「法的瑕疵」の有無が法廷で争われることになります。そこに政府が抗弁する余地があります。
 「撤回」はそうではありません。「撤回」によって争われるのは、沖縄に新基地を造ること自体の是非です。
 本来行うべきは「取り消し」ではなく「撤回」なのです。
 当面は「取り消し」の是非が争われることになりますが、「撤回」の可能性が消滅しているわけではありません。いえ、消滅させてはなりません。新基地阻止のための「知事の最大権限」は「取り消し」ではなく「撤回」なのです。そのことを、今の時点で明らかにしておく必要があります。

 ⑤日米安保条約=軍事同盟を賛美しながら本当に辺野古新基地に反対できるのか

 翁長氏は会見で、「(日米安保条約は)自由、平等、民主主義の共同・連帯」だと述べました。翁長氏が日米安保条約=軍事同盟を支持していることは周知のことですが、あらためて積極的に賛美したわけです。その上に立って、「日本の安全保障は日本全体で考えるべき」だというのが翁長氏の主張です。
 同じ「県外移設」論でも、日米安保条約に反対する立場から当面の問題としてそれを主張するのと、翁長氏のように日米安保条約を積極的に支持する立場から「県外移設」を主張するのでは、大きな違いがあります。
 日米安保条約=軍事同盟を積極的に容認・支持しながら、日米安保条約に基づく「日米合意」をたてにした安倍政権の「辺野古新基地強行」に、本当に反対することができるでしょうか。
 これこそが、これからのたたかいで問われる根本問題です。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 翁長知事の「法的義務」違反... | トップ | 「南京大虐殺のユネスコ登録... »