アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「共謀罪」を先取りする安倍政権(沖縄防衛局)の報道圧力

2017年07月24日 | 政権とメディア

     

 「本土」ではまったく報道されていませんが、安倍政権(防衛省)による言語道断の報道干渉・圧力が、沖縄で起こっています。「共謀罪」法適用の危険もあり、ことは重大です。

 経過はこうです(琉球新報=以下新報、沖縄タイムス=以下タイムスの報道から)。

 7月14日 新報とタイムスが、安倍政権が進めている辺野古新基地建設の護岸工事現場付近でサンゴが破壊される恐れがあるとの記事を、市民団体提供の写真とともに掲載(写真左は新報)。

 7月19日 新報とタイムスが、米軍北部訓練場(東村、国頭村)に新設されたヘリパッドで、オスプレイの離着陸によって芝生が焦げている実態を、「読者提供」の写真とともに掲載(写真中は新報)。

 7月20日 沖縄防衛局が上記の報道(2枚の写真)について、「臨時制限区域内、提供施設区域内で不法に撮影されたもので大変遺憾」「報じるにあたっては情報が不法行為で得られたものではないかを精査し、適切な措置をとることを要望する」とする文書を、県政記者クラブ加盟各社に送付

 7月21日 タイムスが「読者の知る権利にかなうものと判断し報道した」とする自社のコメントを掲載。

 7月22日 新報が普久原均編集局長名で「指摘の写真はいずれも…読者・県民に伝えるべき重要な情報だと判断した。…危険性には十分配慮しつつ、今後も報道していく」との談話を掲載。

 沖縄防衛局の行為には多くの問題があります。

 ① 防衛局がクレームをつけた2枚の写真は、新報、タイムス両紙が反論している通り、辺野古新基地建設やヘリパッドの現状を伝える貴重な情報であり、報道は当然。それを防衛局が「遺憾」とするのは、「報道の自由」「国民の知る権利」に対する国家権力(安倍政権・防衛省)の露骨な攻撃である。

 ② 防衛局「文書」が「報じるにあたっては…」などというのは、今度の報道にまで口をはさむものであり、報道・メディアに対するあからさまな干渉・圧力である。

 ③ そもそも沖縄の米軍基地は米軍が「銃剣とブルドーザー」で暴力的に奪ったものである。そのうえさらに日米両政府は県民の反対を無視して新基地を造ろうとしている。その安倍政権が沖縄の市民活動(写真撮影)、報道にクレームをつけ圧力をかけるなど盗人猛々しいにもほどがある。

 ④ 防衛局「文書」が「不法に撮影された」というのは、日米安保条約・日米地位協定に基づく基地内立ち入り禁止のことと思われるが(写真右はキャンプ・シュワブのフェンスの「立ち入り禁止」掲示)、「報道の自由」「国民の知る権利」は日本国憲法に基づく基本的権利である。どちらが優先されるべきかは言うまでもない。防衛局「文書」は憲法よりも日米安保・地位協定を上におく安倍政権の反憲法・対米従属姿勢を露わにしたものである。

 ⑤ 「共謀罪」法は「277の罪」が対象とされるが、その中には「刑事特別法―軍用物の損壊等」が含まれている。安倍政権が今回の写真撮影・報道に「共謀罪」を適用し(あるいは適用の脅しをかけ)、市民の活動と報道を抑圧する(あるいは自粛させる)危険性がある。

 新報、タイムスが防衛局に反論し、今後も読者・県民の立場に立った報道を続けると言明していることはきわめて正当であり、断固支持します。(ただ、普久原編集局長の談話にある「危険性には十分配慮しつつ」がどういう意味なのか、注視したいと思います)

 同時に、これは言うまでもなく両紙だけの問題ではありません。防衛局が「文書」を県政クラブ加盟各社に送付したことに端的に示されているように、両紙をやり玉に挙げることによって沖縄のメディア全体に脅し・圧力をかけるのが防衛局の狙いです。
 県政記者クラブは自らの問題として、共同して、防衛局の不当な干渉・圧力に抗議し、「抗議声明」を発表すべきです。

 さらに言うまでもなく、これは沖縄だけの問題ではありません。全国紙はじめ「本土」メディアはこの問題を報道すべきです。そして、「本土」の私たちも安倍政権(防衛省)に対し抗議・批判の声を挙げねばなりません。


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