きょう14日告示された東京都知事選で、野党4党(民進、共産、社民、生活)は、鳥越俊太郎氏を統一候補として推薦しています。
自民、公明が推薦した猪瀬、舛添両知事が「カネ」で失脚したあとの知事選で、自公に反対する市民目線の新知事が切望されていることは言うまでもありません。
しかし、鳥越氏が「野党統一候補」になった経緯には、いくつもの疑問・問題点があります。
「鳥越氏擁立」に至る経過を振り返ってみましょう。
7月6日 宇都宮健児氏、「政策など整いつつある。どれだけ支援の輪が広がるか」とし、11日に正式に出馬表明する意向を表明
8日 石田純一氏(タレント)、「野党統一候補が必要。自分が選ばれれば出させてもらいたい」と、市民団体の代表とともに出馬表明
11日(参院選投開票日) 宇都宮氏、正式に出馬表明。 石田氏、出馬断念
<昼前> 鳥越氏、民進党幹部に電話で「知事選に出ようかと思う。支援してくれないか」(13日付中国新聞=共同)
<夜> 鳥越氏、民進党・岡田代表と会談(擁立決定)
民進党・枝野幹事長、共産党・小池書記局長との話し合いで鳥越氏を「野党統一候補」とする方針で一致。
枝野、小池両氏、宇都宮氏に「鳥越氏を4党で推すことにした」と伝え、2度にわたり出馬断念を要請
12日 <午後2時> 鳥越氏、出馬表明の記者会見
<午後4時半> 野党4党が鳥越氏を統一候補とする正式決定(写真左)
13日 <午後2時> 日本記者クラブで、宇都宮、鳥越、増田、小池4氏の共同会見。宇都宮氏は出馬の意向を重ねて表明
<午後7時すぎ> 宇都宮氏、出馬断念を表明(写真右)
以上の経過から、疑問・問題点は少なくとも7つあります。
① 共産、社民が「宇都宮擁立」でまったく動かなかったのはなぜか。
前回の知事で100万票近くを獲得し、本人が出馬の意向を示している宇都宮氏は、当然「統一候補」の最有力とされてしかるべきでした(2日のブログ参照)。しかし、前回、前々回宇都宮氏を推薦した共産、社民両党はまったくその動きを見せませんでした。
② 「市民(グループ)」が”蚊帳の外”に置かれたのはなぜか。
参院選では「野党と市民の共闘だ」(共産党・志位委員長)と言いながら、このかん肝心の「市民」が一貫して蚊帳の外に置かれたのはなぜなのか。「鳥越擁立」の過程で「市民」の姿はまったく見えませんでした。
「市民」の姿が見えたのは、石田純一氏が出馬表明する過程と、宇都宮氏の支援グループでしたが、結局そのいずれの声も無視されました。
③ 「公約」も「政策」もない鳥越氏をわずか半日で「統一候補」に決めたのはなぜか。
経過で明らかなように、鳥越氏が民進党幹部に出馬の意向を伝えてから「統一候補」に決まるまでの時間はわずか半日です。しかもその時点では鳥越氏は明確な「公約・政策」もなかったことは、出馬会見で自身が認めた通りです。
野党4党は、「公約」も「政策」もない鳥越氏を、信じがたい短時間で「統一候補」に決めたのです。
④ 「政策協定」も結ばずに「統一候補」に決めたのはなぜか。
鳥越氏と野党4党の間で「政策協定」が結ばれたという報道は、少なくとも14日(告示)朝の時点までありません。「政策協定」も結ばないまま「統一候補」に決めるなど、少なくとも「市民目線」の政党のやることではありません。
⑤ 野党4党は「候補者統一」のために何をしたのか。
「統一候補」をめぐって報道されてきたのは民進党(本部、都連)の混迷した動きばかりです。鳥越氏が名乗り出たのはいわば「タナボタ」でしょう。
統一候補擁立へ向けて4野党は何をしてきたのか。どんな議論をし、どういう動きをしたのか。有権者の前に明らかにする必要があります。
⑥ 宇都宮氏が出馬断念したのはなぜか。
宇都宮氏は鳥越氏が「統一候補」に決まったことに対し、「とにかく勝てる候補をというのは今までの自公の選び方と全く同じじゃないか」(13日、写真中)と批判し、出馬の意向を堅持していました。13日の共同記者会見やテレビ番組でも「出馬の意向は変わらない」と言明していました。
ところが同日の夜になって急転直下の「断念」。「断念会見」でも「今の野党の統一候補、選定過程が全く不透明ですよね」(写真右)となおも批判していました。それなのになぜ「断念」したのか。その間何があったのか。共産党などからどのような働きかけがあったのか。
⑦ 一貫して「密室」の中でことがすすめられてたのはなぜか。
宇都宮氏が指摘する通り、舛添氏辞任以降、鳥越氏擁立決定まで、「統一候補」をめぐる野党4党の動きは一貫して不透明でした。市民の目が届かない密室の中で進められてきました。これで「市民も含めた共闘」と言えるでしょうか。
以上の「7つの疑問」は、実は「1つの解」ですべて説明がつくでしょう。
それは、「野党共闘」といいながら、その実は一貫して民進党主導であり、民進党の密室の非民主的な候補者決定に共産、社民、生活3党が唯々諾々と従ったということです。
「民進党にとって鳥越氏は前身の民主党時代から続く意中の人。前回の2014年の都知事選では舛添要一氏の対立候補として細川護熙元首相を担ぐ前に擁立が検討された。…鳥越氏も前向きだったが家族の反対で断念した経緯がある」(13日付中国新聞=共同)。鳥越氏はまさに民進党の候補者なのです。
そして前回宇都宮氏を擁立した共産、社民両党は、そうした民進党との「共闘」を最優先し、信義も道理も踏みにじって宇都宮氏に煮え湯を飲ませたのです。
これが「共闘」と言えるでしょうか。こんな「野党共闘」でいいのでしょうか。