S嬢のPC日記

2004年から2007年まで更新を続けていました。
現在ははてなで活動しています。

「たったひとつのたからもの」:感想

2004年10月27日 | たったひとつのたからもの
「たったひとつのたからもの」放送ということで、
ブログというのは、ナマで個人の反応を見られるという
貴重な媒体だなあと実感しました。
なにしろアップが早いですから。

さて、gooブログの新サービス「トレンドランキング」
今回、大活用させていただきました。
時事ネタに近いとこで出てきてますから、この番組。
今日中に、もう少し増えるのかな。

ドラマの感想としては、
全体としては、好感、かな、と。
「どっぷり泣きたい」人には、やや物足りなかったかな、
と、思えるようなさらっとした作りになっていました。
いいですか?ここで泣かせますよ~~的な演出を
前面に出していなかったということに対しての好感です。
明治安田生命CMで使われた小田和正の曲も
使われ方が最小限で、これも好感。
(いや、曲はいいんですが、曲の使い方というところで)。
このドラマの大きなテーマである「短くてもイキイキと生きた命」
という意味では、
ダウン症の子どもの好演に勝るものナシ、という感じでした。
要所要所でダウン症児・者を使った演出に敬意です。

このドラマの中で、
先天性心疾患を持ったダウン症児の親としての自分が見て、
共通点のある経験ももちろんあるわけで、
出てくるシーンに、
ああ、あるある、も、もちろんあるんですが、

あ、それ、ないない
(手を振って、言う感じ)

ってのが、いくつか出てくる。
コレに対して、
「まあ、短時間で見せるためにはしょうがない、か、ねえ」
という妥協点を感じる。
「見せるためのものだから、理解を容易にするためには
 仕方がないか」と、そう思う。

代表的なのが、
両親が、ダウン症、そして心疾患の告知を受けて
衝撃を受けているシーンで、
ダウン症の赤ん坊がきゃっきゃと笑う。
「ほら、あの子、笑ってるわ」というシーン。

あ、それ、ないない

生後一ヶ月くらいで、きゃっきゃなんて笑ってたら、
誰も苦労しませんって。

あ、それ、ないない

子どもの状態にもよりますが、
たいがいのダウン症の赤ん坊は、
生後一ヶ月は「昏睡状態」に近い。
よく眠る、おとなしい、手がかからない赤ん坊、
泣き声もか細く、ミルクを飲むだけでも、
たいがいくたびれきって眠ってしまいます。
夜中に大きな声で泣く元気がある子はあまりいない。
しかも、重度の心疾患で、肺高血圧症の状態ならあり得ません。
だからこそ、苦労する。
手がかからずに、こんこんと眠り続ける赤ん坊、
母親の頭から消えない「ダウン症」という言葉。
手がかからないからこそ、頭はそれでいっぱいになる。
反応が乏しい赤ん坊を抱え、
だからこそ、特に生後半年くらいの間は、母親にとって、
精神的にとても厳しい時期になることが多いです。

衝撃を受ける両親、
「あ、この子、笑ってるわ」

あり得ない!
そんなに簡単にそんな反応が見られるんだったら、誰も苦労しない!

でも、「ドラマ」としては、わかりやすいんでしょう、この展開。
はい、目をつぶりましょう。

と、いう感じがしました。
似たようなところは随所にあった。
でも、主役の男の子を含め、
様々なシーンで好演を見せていたダウン症児・者の姿が
いきいきと映されること、
そのことはとても大きかったと思う。

ただし、
さて、身近な現実、というときに、
困った落とし物という部分を感じたところもいくつかありました。
例えば、最も大きなところでは
この両親の「否定期」が短いこと。
障害の受容に対してかかる時間は、全くの個人差があり、
早いからいい、遅いから悪い、と一概には言えない。
一般に、命の危険がある子の方が、命中心になり、
否定期が短くなる場合もある。
このドラマを見た人が、身近にいる、または出会うダウン症児の親、
特に「否定期が長め」の人に対して非難の目を向けないこと、
ドラマの頑張りを、安易に求めないことを祈ります。
なにしろこの作品は、
親が衝撃を受けるところ、障害の受容に向かう経過で、
かなりの経過、かなりの時間を吹っ飛ばして作ってありますから。
そして、最も小さなところで言えば、
このドラマで出てくる、先輩ママが使っている
ダウン症児に対しての「ダウンちゃん」という呼称。
コレはダウン症児の親の中でも、意見が分かれるものですが、
わたしはこの呼称、「嫌い派」です。
ただ、好んで使う派は多いので、
「嫌い派」は、黙ってそれに甘んじる傾向はありますが。
このドラマで、「先輩ママが使っていた」からといって、
安易に使って欲しい呼称とは思えない。

それでも、この話題作が、一般社会の小さなシーンに
生かされていくことを望みたいと思う。
ダウン症だけではなく、障害を持った子どもはどこにでも生まれる。
生後すぐに命が危ぶまれる子どもはどこにでも生まれる。
そのことを身近に感じる人が増えてくれたら、
とも思います。

最後に、このドラマの最大の感想は、
明治安田生命のCMで使われた
「父親が息子を抱きしめる」一枚の写真に勝てるものではない
ということでした。
あの写真は、全てを物語るのにふさわしい、すばらしい写真だと思います。
ただし、あの写真を発端にして広げることで、
いきいきとした「秋雪くん役」を演じた子どもが
人々の脳裏に焼き付いたことを喜ばしく思っています。


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1.関連記事
gooブログ スタッフブログ「トレンドランキング等機能追加のお知らせ」
自記事「たったひとつのたからもの」

2.前記事にトラックバックをいただいたところ
OUTER HEAVEN 「10月26日 特別視」
レッツ エンジョイ オサレライフ!「生まれてきた子供がもし・・・」

3.「gooブログ・トレンドランキング」や「ブログ検索」より
 「泣いた」以外の感想が記載されているところを基準に抽出。
・お揃いの思い出♪「たったひとつのたからもの」
・世の中は不思議なことだらけ「たったひとつのたからもの」
・+腐るか実るか石榴「たったひとつのたからもの」
・♪映画日記♪「たったひとつのたからもの」
・ichiの備忘録「ドラマ「たったひとつのたからもの」
・ 心に残る走馬灯「たったひとつのたからもの」
・ cizzz's daily life「たったひとつのたからもの」

*10/28 追加TB
・美トイレ推奨します「たったひとつのたからもの」
・ちんたら日記「『たったひとつのたからもの』を見た」
・あっきーはうす「たったひとつのたからもの」
・ねこまんま「 母は強しって言うけれど…」

皆様の記事を全て、とても興味深く読ませていただきました。
ありがとうございました。
簡単な自己紹介ですが、
「生後すぐに命の危険にさらされたことがあり、
 生後3ヶ月で手術経験を持つ、現13歳のダウン症児の母」です。
手術の内容は、心室中核欠損症、動脈管開存症、気管支狭窄処置、でした。


*追記*
検索でこのページから入られた方、どうぞこちらにもお進み下さい。


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30 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
初めまして。 (ado-tan)
2004-10-28 03:22:19
TBありがとうございます。

私は健康体ではありませんが重病でもありません。

映画やドラマなどを見て、考えさせられながら日々を送っています。

一言日記ですがTB嬉しかったです。
返信する
はじめまして。 ()
2004-10-28 09:59:10
はじめまして。TBありがとうございます。



ブログを始めて3ヶ月。

日常で知り合えない方たちのお話を聞けることを

嬉しく思います。

S嬢さまの記事、「たったひとつのたからもの」を

読ませていただきました。



S嬢さまが書かれた「困った落し物」。

私も心に留めておきたいと思います。



私の記事にもTBさせていただきました。
返信する
こんにちは (S嬢)
2004-10-28 10:05:49
あの「一言日記」はよかったですよ、とても。

アレだけというのも、センスいいなあと思った。

蟹江敬三の役はドラマとして必要な役どころで、

そしてアレはいいセリフで、すぱんと残りましたね。



ado-tanさんのところは、映画カテゴリは読破しました。

試写会行ける環境は、いいなあと思った。

レンタル屋に行って、何借りようか迷うときがあったら、

こんなのもいかが?

(古いっすよ~~~)



「普通の人々」(親子の難しさ)

「フランス軍中尉の女」(女って怖い)

「AIKI」(素敵な「師」や「友人」と出会った男の子の話)

「オーバー・ザ・トップ」(「親子」と「腕相撲」と「熱いゾ」の映画)

「ブラザーサン・シスタームーン」(美しいです)

「”オリビア・ハッセー”の ロミオとジュリエット」

(迫力のあるジュリエットは素敵)
返信する
空さま (S嬢)
2004-10-28 10:17:56
彼らのダンス、ってのが、

普通の人、彼らに縁が無い人にどう見えるのか、

ってのは、わたしにはもうわからなくなっているので、

空さんの感想は興味深かったですよ。



すみません、ちょっとこっちも寄ってっていただければうれしいかなと。

http://blog.goo.ne.jp/satomies/e/86037d212c4bdbe09190df373daeb539



飛び入りモンの企画だと、絶対にステージ上がりますね。

ブラジルだのアフリカだの、ジャンルはなんでも来いです。

盆踊りもうまいっすよ~~。

「踊れる場所」の夜遊びに連れていくことが、今のとこの「夢」かな。



あと、こんなトコもあります。

http://salsagumtape.fc2web.com/index.html



知的障害児・者は音楽に対してストレートに表現しますので、

彼らに関わって、そのストレートさに「はまる」アーティストは

多いようです。
返信する
TBありがとうございます (5656)
2004-10-28 13:53:42
こちらの記事を読ませていただいて、あらためて「ドラマなんだなぁ」と思いました(当たり前ですが・・・)。このドラマ、事実に基づいていたり、本当にダウン症の子役さんを使っているだけに、ドキュメンタリーと錯覚してしまう恐ろしさもありますね。



ま、テレビの恐ろしさもありますが、特にダウン症の子供を持つということは、一定の確率で誰にでも起こりえるという関心を世間が知ることは、良いことですね。
返信する
その発言は。 (kurumakik)
2004-10-28 14:14:46
TBありがとう。



セリフを聞いた瞬間、さっとひいたんだけど。

その後「お名前は?」って聞いたので、一瞬とまどった。

そのあと名前で呼んでたし。



結局あまりの戸田恵子さんのテンションの高い「ダウンちゃんね~!」に敵か味方か、まったく判別つかず、しばらく疑惑の目で見続けていました。(悪い人は出てこなかったけどね、結局)

テンションの高さがまた「嫌悪感」を呼ぶのかも知れない、と思いつつ、、実際その場にいたらどう反応していいのかわからないかもしれない。



とりあえず、以前知り合いだった教師の方のタイプだわ、と思って最後までうたぐってました。



教えてもらうまでそんな呼称があることを知らなかったんだけれどね。
返信する
5656さま (S嬢)
2004-10-28 14:36:49
そうなんです、

やっぱり、「ドラマ」なんです。

だから、どこか、引いて見てましたね。

ホントはね、自分にフラッシュバック、来るかなとちょっと不安だった。

だいじょうぶでしたね、「ドラマ」だったから。

まあ、同じ題材で大竹しのぶ主演だったら、また違ったかも、ですが、

そうなると、ダウン症の子たちと「食い合って」しまうので、

今回のキャスティングで「良し」だったんではないかと。

松田聖子は力はないかもしれないけれど、

とにかく「素直に」やろうとしていたことだけはよくわかるし、

歌の世界で彼女が持つ「色気」の部分を見事に引いてたのは、

彼女に対して好評価です。
返信する
あ~~れ~~は~~~ (S嬢)
2004-10-28 14:42:46
「ダメ」だね。



あんな大衆の面前で「ダウンちゃんね!」なんて

大声で叫ぶヤツ、ダウン症の子の親にいないって。

ダウン症の子の親だったら誰だって、赤ん坊の親がさ、

外に連れ出して、人にどう見られるかって、

ドキドキしてたまらない時期なんて知ってるもの。

「ダウンちゃん」発言がどうのってよりも、

あり得ないって、あのシチュエーション。

わたしだって、疑惑持ったわよ。

なんだコイツって。



よくいるんだ、

さも味方のような顔で寄ってきて、

ああいう大騒ぎする輩ってのが。

昔、看護婦だったとか、なんとかのこうとかで

「よく知ってるのよ~~~」とか言うオバサン。



わたしはスーパーの野菜売り場んとこで、

「心臓はどうなの?」とか、

「かわいいわよねえ~~、ダウンちゃんって」

って大声で騒がれて、

ものすごくヤだったこと、あるもの。



ダウン症がどうのってより、

アトピーの子見つけて、そこまで騒ぐか?スーパーで、

って感じ。

まいったよ、ホント。

ちょっと忘れられない。
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トラックバックありがとうございます (めすねこ)
2004-10-28 15:19:54
「否定期」という言葉すら知りませんでした。

そして、やっぱり親と言えどもそういう時期を経るんだと言う事が分かって、変な言い方ですがほっとしました。

まだ未婚で子供を持つのは先の事なんですが、障害を持った子供が生まれた時に私は大丈夫だろうかという不安ばかりが先走っていたので…

返信する
TBさせていただきました。 (ぐーたん)
2004-10-28 15:49:53
こんにちは!

TBさせていただきました。

ただ単純に涙し、その感想でおこがましいのですが。

???なことがありましたら、忌憚なくご意見くださいね。
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