S嬢のPC日記

2004年から2007年まで更新を続けていました。
現在ははてなで活動しています。

「ぼくのお姉さん」

2004年11月22日 | 書籍紹介
子どもの本の世界に「障害」を語られているものは多いと思う。

中でもわたしが好きなのはこちら

「障害」を語る6つの短編をまとめたもので、
ダウン症が語られているものが表題作の「ぼくのお姉さん」
ダウン症の姉を持つ「弟」が、
「姉」に対しての差別的視線を自らも浴びながらも、
結局は「善」で終わるストーリーで、
作者の意図かそうでないのかわからないけれど、
「ダウン症」にまつわる話が「善」で終わりやすいことを
象徴しているような気もするというか。

「ダウン症児の母親」でありながら、
わたしはこの本の6つの短編の中で、
実は、この「ダウン症」にふれた表題作よりも、
後の5つの短編の方が
もっともっと「読むに価する」と思っています。

それは、自分の奥底に住む、
「ごく普通の人間が、障害児・者に持つ差別や偏見」を
えぐり出されるような気がするからです。

後の5つの短編には、
障害児・者に対しての「攻撃」が、赤裸々に出てくる。
特に「歯形」という短編では強烈です。
また「こおろぎ」という短編の中に出てくる、
「都合の悪いことを、障害児の責任にしてしまってやり過ごす」
という部分が、
本当に自分の中にかけらもないだろうかとさえ、思う。

自分の中に住む「偏見や差別」を直視しないで理想論が語れるか

とも思うのだけれど、
自分の中に棲息しかねない「差別や偏見」の直視は
実はちょっと怖いです。

「首かざり」の中に出てくる、
障害を持つ友達への優しさが、
新たな差別や偏見につながっていくことも悲しいし、
「あざ」に出てくる、
いじめを受けた少女が、攻撃を障害児に向ける行為も、悲しい。
でも、「あざ」に出てくるような、
ことの本質をちゃんと見つけられるおかあさんになりたいな、と思う。

坪田譲治文学賞
新美南吉児童文学賞
児童文学者協会新人賞
赤い鳥さし絵賞

という4つの賞を受賞しているこの本は、
子どもの本を置いてあるちょっと大きめの本屋なら、
たいがい置いてあるし、
古本屋で、見つけることもある。
探すのも買うのも、たいして困難の無い本だから、
多くの人に読んで欲しいなあと思う本ですね。
児童文学ではあるけれど、
大人にこそ、読んで欲しいと思う本ですね。

文庫版もあります。

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