Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.348:09年:12月の教育業界関連マーケティング情報

2010年02月07日 | 教育関連マーケティング情報
メルマガネタが枯渇してきた時はこれに限る!
ということで、2週間風邪が抜けない中、採点地獄とシラバス作りに明け暮れる今週は昨年12月の日経MJに掲載された教育業界関連マーケティング情報をお送りします。

バックナンバー(下記Blogに掲載)
vol.299:4月の教育関連のマーケティング情報
vol.307:5月の教育関連マーケティング情報
vol.311:教育産業はインドを目指す?(6月~7月分)
vol.325:8月~9月の教育業界関連マーケティング情報1
vol.326:09年:8月~9月の教育業界関連マーケティング情報2
vol.342:09年:10~11月の教育業界関連マーケティング情報

◆学習塾サバイバル(12/16 日経MJ 3面)
【記事の内容】
少子化による市場縮小の中、学習塾がどのようなサバイバル戦略を推進しているかを特集した記事です。キーワードは「低年齢からの囲い込み」と「自社ノウハウの外販」とのこと。

通常、中学受験を目指す子供は小学校3~4年生頃から塾に通い始めるのですが、それ以前の子供達に対するサービスを提供する動きが出てきています。
栄光が運営する「サイエンスラボ」やジーニアスエデュケーションが供する1~4年生向け通信教育「ピグマキッズくらぶ」などです。これらのサービスにより、顧客層の拡大と後の中学受験予備軍の確保を目指しているそうです。

また「自社ノウハウの外販」に関しては、日本エデュネットさんが遠隔個別指導のサービスを私立高校に外販するといったビジネスを展開しています。
高校で自習中に分からない部分がでてきた時、提携先の予備校のサイトにアクセスすると、現役大学生や専門の講師が画面上に登場。生徒が送信した問題に、講師が直接赤ペンを入れて添削指導をしてくれるというものです。私立高校では生徒を獲得するために進学実績を向上したい。しかし限られた人数の先生で生徒の学習を支援するには限界がある。そこで、このような学習塾が外販するサービスを導入することで人件費を抑えつつ、きめこまかな学習支援を実現できるという訳です。

【コメント】
「低年齢からの囲い込み」は今年から始まる「子供手当て」効果もあってかなり期待が持てそうです。また「自社ノウハウの外販」は、見方を変えれば、教育のSaaS化あるいはクラウド化とも考えられます。教師というものの存在が「全人的」で「物理的な実体のある」ものから「学習支援」という機能に変化し、ネットを通じてバラ売りされるようになってきたというのは進化なのでしょうかそれとも・・・考えさせられます。

◆若者の仕事観変える商人道(12/23 日経MJ 3面)
【記事の内容】
これはオラクルひと・しくみ研究所の小阪裕司氏が執筆している「招客招福の法則」という連載コラムの記事です。この記事では普段商人向けに商売の話しかしていない小阪氏が、高校生相手に「商売の話」の講演会を依頼された時のエピソードを紹介しています。何を話そうか悩んだ末に「仕事はこんなに面白いものなのか」ということをテーマに話したそうです。商人達が喜びに満ちた顔でいきいきと働く姿をプロジェクターで映し、商売の現場で起きている生の話を伝えたところ、高校生からは「将来に対して前向きになれた」「仕事は食べるために仕方なくやるものと思っていたが、この講演を通じて考え方が180度変わった」といった感想が寄せられたそうです。

【コメント】
本年より大学のキャリア教育を担当している中でコガが一番苦労しているのは、仕事のやりがいや楽しさをどう伝えていくかという点です。やれ倒産だリストラだと暗いニュースばかりが流れる世の中で、就業に対する明るい夢や展望を抱こうと言ってもなかなか伝わりません。そんな時、最もメッセージとして伝りやすいのは、実際に働いている「普通の人」の声なのです。どこにでもいるような普通の社会人が仕事で遭遇した些細な喜びや楽しさをポロッと語ってくれるのが、彼らを前向きにさせる上でどんなに役立つことか!

2009年の後学期、コガは株式会社デジタル・ナレッジというeラーニングのベンチャー企業で働く吉田自由児さんにインタビューをお願いし、インタビュー映像を録画・編集したビデオ作成しました。これをキャリアを考えるという1年生対象の授業の中で学生に見せたところ、「ベンチャー企業の見方が変わった」「大企業への就職ばかり考えていたが小さい企業も仕事を任せて貰えるのでおもしろそう」といった反響がありました。
これからも色々な職場で働く、普通のビジネスパーソンインタビュービデオ作りを続けていきたいと思っておりますので、本メルマガの読者の皆様もコガがお声を掛けさせていただいた折にはよろしくご協力のほどお願い申し上げます。

◆ご当地検定、学生に照準(12/28 日経MJ 4面)
【記事の内容】
地域にまつわる知識を問い、一定基準に達すると合格とする「ご当地検定」。地域活性化の一環として広まったものの、どのご当地検定も受検者の確保に四苦八苦しているとのこと。そこで地元の大学生へのPR等を実施してテコ入れ策を実施しているという記事です。

例えば「京都・観光文化検定試験」では同志社大学のミスキャンパスを選ぶコンテストで、検定の過去問題を提供し関心を持ってもらったり、学生向けの無料の勉強会を実施したりしているそうです。また「神戸学検定」とは学生の団体受検割引制度等を実施したところ、受検者数が9.5%増加したそうです。さらに鹿児島商工会議所では、小中学生を対象とした「かごしまジュニア検定」を企画実施、県民の鹿児島への関心や観光意識の向上を狙っているとのことです。

【コメント】
一体どのぐらいの「ご当地検定」が存在するのでしょうか?「御当地通」というご当地検定のポータルサイトを見てみましたが、このサイトに掲載されている検定だけでも100以上はありそうです。
確かに新たに検定を企画するのはおもしろい取り組みだとは思いますが、継続して受検者を確保し、問題を作り続けていくのはかなり大変な仕事です。
そこで大学をターゲットとして普及拡大していくという視点は賢い戦略かもしれません。なんと言っても毎年卒業し新入生が入ってきますので継続的に新規顧客を獲得しやすいチャネルだからです。
ですがもう一歩踏み込んで、大学生を受検者としてだけでなく出題者として捉えると、地域活性化にとって新たな視点が生まれてきそうです。例えば学生が考える問題の質を競わせたり、学生同士で問題出し合う対抗戦をしたり、出題者と解答者という従来の検定の垣根を壊すと、地域の活性化に対して大学生の担う新たな役割がでてきそうですね。

◆アニメキャラ寺社に増殖中(12/28 日経MJ 14面)
【記事の内容】
最後はちょっと時節柄に合わせた記事です。受験シーズンに突入した昨今。苦しいときの神頼みの代表格といえば絵馬。この絵馬に最近異変が起きているのです。「痛絵馬」という萌え系のイラストを描いた絵馬が増殖中なのだそうです。発信地は「萌え寺」として一躍有名になった八王子にある了法寺。この寺では美少女風のキャラクターを採用した案内看板を提示したところアニメ好きの若者の参拝が急増。またアニメ「らき☆すた」に登場する埼玉県の鷲宮神社はファンの「聖地」としてブームとなりカリスマ絵馬師まで登場しているとのことです。調べてみたら今年のカウントダウンの模様がASCIIさんのWebサイトに掲載されていました。
2010年も萌えろ! 鷲宮神社年越しカウントダウンレポ!
なかなかの盛り上がりですね。

【コメント】
「寺社」と「萌え」一見全くかみ合わない組合せに思えますが、これが起爆剤となって鷲宮神社近辺の地域活性化に貢献しているそうです。最近読んだ『観光の地域ブランディング─交流によるまちづくりのしくみ』(学芸出版社 2009)という本の中でもこの事例が取り上げられており、たまたま舞い降りたブームをうまくキャッチし、地元と出版社が協力してオリジナルグッズを作成したり、あらたな参拝客(?)のニーズに対応した商品を開発・提供しているとのことです。
以前某教育子会社のeラーニング担当者と、これからは「萌え系eラーニングが来そうだよね」などと冗談で話していたのですが、「萌え」はeラーニングでなく「宗教」と先に融合したみたいです。もっとも「萌え」系の参考書はかなり沢山出版されており

『マンガでわかる統計学 回帰分析編』オーム社 (2005)
『元素周期 萌えて覚える化学の基本』PHP研究所 (2009)
『ねこ耳少女の量子論~萌える最新物理学~』PHP研究所 (2009)

などがあります。
PHPさんでシリーズ化されているところを見るとかなり売れているのかもしれません。考えてみるとシュレディンガーの猫なんてもともと「萌え」っぽい響きがありますよね~。

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