Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.325:8月~9月の教育業界関連マーケティング情報

2009年10月25日 | 教育関連マーケティング情報
月に一度はこの特集を組もうと思っていたのですが、ついつい6月からお休みしていることに気がつきました。あまり遡って再開してもニュースとしての新鮮味に欠け面白くないので、今回と次週で8月~9月分の日経MJから関連記事をピックアップしてみたいと思います。今回は社内でのスペシャリスト養成に関する記事をピックアップしてみました。

サントリーウイスキーの親善大使(日経MJ、09/8/5 15面)
ウイスキーの販売量はピークだった1983年に比べておおよそ5分の1に落ち込んでいるそうです。そうした状況を打破するため、サントリーでは2007年からウイスキーの魅力を語る「ウイスキーアンバサダー」という社内資格を設け、新たなな顧客獲得につなげているそうです。この資格に合格するのはかなりの難関、というより毎年30人しか研修を受けることができないという狭き門のようなので、社内でもまだごく一部の人しか資格を取得していないそうです。ウイスキーは嗜好品のため、覚える知識は膨大です。加えて競合他社のウイスキーの知識、客と接してその魅力を伝えるための表現力や接客力までも資格取得に要求されるというのですから大変です。

しかし、この社内資格の取り組み、有資格者が増えること以上に、会社として「ウイスキーの復権に力を入れる」という方向性を全社員に具体的に示すことに大きな意義があると筆者は考えています。実際今年は10年ぶりにウイスキーの出荷が前年を上回ったということです。

さてさてウィスキーの販売がピークだっという1983年は、筆者が20歳になった年でした。当時はサントリーQや、キリンシーグラムのNEWSなど、比較的安い値段で買えるウイスキーも多くよく一人暮らしのアパートで飲んでいました。それとバブリーだったからか、あの頃のウイスキーのCMには傑作が揃っています。例えば・・・・

NEWSのCMにはジャン・マイケル・ビンセント


サントリーQのCMにはデュランデュランのReflex


サントリーホワイトのCMにはハービー・ハンコックの Watermelon Man


圧巻だったのは、サントリーローヤルのアントニオ・ガウディ編とアルチュール・ランボー編
ガウディ編

ランボー編


筆者も今回これらのCMを25年ぶりに見ましたが、どれもクオリティ高いですねえ。特にサントリーローヤルのガウディとランボーのCMにはやられました。四半世紀たった今でも古さを感じさせないどころか、この25年間でこのクオリティを超えるCMは一体いくつあったのだろうと考え込んでしまいました。

あれ、ウイスキーアンバサダーの話でしたよね。脱線失礼しました。

UCC コーヒーアカデミー(日経MJ、09/9/2 15面)
ウイスキーの次はコーヒーです。UCCコーヒーアカデミーでは、社内スペシャリストだけでなく、一般消費者からコーヒー店のマスターまでを対象に資格講座を開催しています。1回2時間半×4回と比較的お手軽な一般消費者向けのベーシックコースを筆頭に、現在6種類の講座が用意されています。またそれらの講座を終了した際に授与される資格は初級・中級・コーヒープロフェッショナルの三段階があるそうです。さらに社内資格としては別途「コーヒーアドバイザー」があり、こちらは試験の合格率5~6%という超難関とのこと。このように社外向けの資格と社内スペシャリスト向けの資格講座両方を行うことにより、UCCコーヒーアカデミーでは、アカデミー専用の教室も利用できる等「ソフトとハードの両面でカリキュラムの充実が図れた」とおっしゃっています。

上記のサントリーと異なり「一般消費者」「得意先(コーヒー店)」「社内スペシャリスト」と幅広い対象層向けに、学習範囲やレベルを変えて、複数の資格を提供している点が興味深いですね。しかしウイスキーもコーヒーも嗜好性の高い飲み物という共通点があります。ワインのソムリエ、日本酒の利き酒など、嗜好性の高い飲食物には資格がつきもののようですね。

ファストリが経営者養成機関(日経MJ、09/9/7 6面)
同じ社内のスペシャリスト養成でもこちらは次世代の経営者養成機関を作ってしまったファーストリテイリングのお話しです。「ファーストリテイリング-マネジメント&イノベーションセンター(FR-MIC)」と呼ぶ機関を2010年に設立、社内外から選抜した人材を3~5年かけて育成するそうです。

社長の柳井氏曰く、「今後の事業拡大に経営者が圧倒的に不足している。また自分も会長職に専念したいので日常的な業務執行を担える経営者の育成が急務」とのことです。30~40代前半の社員を対象に日本国内で実施するそうですが育成方法は至ってシンプルで、「直面する現実の課題を解決し、新しいビジネスチャンスを開発するため、実際の経営を通じて人を育てる」というものです。指導にあたっては一橋大学等の提携した外部の人の協力等もあるとのことです。単純に言えばOJTで経営者を育成するのですが、現実の経営の中でどう自己省察をさせていくかが鍵となるのではと筆者は考えます。

この記事の中で柳井社長は、「我々は以前の日本企業のような横並びや年功序列を前提としない新しい形の終身雇用制を目指す」と述べています。よくIBM、ソニー、リクルート等の企業が「人材輩出企業」と呼ばれています。それらの会社を辞めた人が別の会社で頭角を現したり、自分で会社を興し成功しているケースが多いからです。しかし柳井社長はそうは考えず、一生ファストリで満足して働けるよう、「外部の会社に出て行くより、常に魅力的な会社であり続ける」とおっしゃっています。

社員にとって、一つの会社で働く最も大きな誘因の一つが、「自分の力を伸ばせること・力を発揮する場があること」です。この経営者養成機関の設立は、単に次世代経営者を育てるだけでなく、「ユニクロ流終身雇用」に向けて、社員の大きな動機付けになっているのだと筆者は思いました。

熱血講義でノウハウ伝授(日経MJ、09/9/11 6面)
最後は、アース製薬のEMAL(エマール)部と呼ばれる量販店に商品の陳列を提案する部隊の人材育成の話です。エマール部は「生活者の目線で売り場を提案する」ため、30~40代の女性契約社員で構成されています。しかしそれだけでは単なる消費者の声に終わってしまいます。そこで彼女らがプロとして活躍できるよう、育成の陣頭指揮をとっているのが部長の今西さんです。量販店のバイヤーに「今西流」と呼ばれるほど有名だった今西さんは、今まで自身が培ってきた営業のノウハウをマニュアル化・体系化し、500品目を超える自社商品の知識から年間販促計画までを盛り込んだテキストを作成したそうです。加えて全国37カ所の営業所で講習会を実施し、テキストでは伝えきれない今西流の「暗黙知」を伝授していったそうです。結果として、スーパー等から売り場の陳列を任されるケースが増えているとのことです。

この事例のポイントは、「非正規社員のプロ化」「ノウハウの形式知化」「暗黙知の対面指導」の3つにあると筆者は考えています。資格の場合、知識やスキルを吸収し、一定のレベルに達すると資格が付与されます。しかしアース製薬では、知識・スキルの定着がゴールでなく、それらを実践の中で活用し、成果をあげることがゴールになっていると思われます。いずれにせよ、今西さんという伝説の営業パーソンが、今度は自分のノウハウを非正規社員に伝えていくことで「面」で提案活動展開ができるようになったことが凄いと感じました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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