Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.342:09年:10~11月の教育業界関連マーケティング情報

2009年12月13日 | 教育関連マーケティング情報
あっと言う間に二ヶ月分の記事がたまってしまいましたので、今回は日経MJ誌09年:10~11月の教育業界関連マーケティング情報をお伝えしたいと思います。

バックナンバー(下記Blogに掲載)
vol.299:4月の教育関連のマーケティング情報
vol.307:5月の教育関連マーケティング情報
vol.311:教育産業はインドを目指す?(6月~7月分)
vol.325:8月~9月の教育業界関連マーケティング情報1
vol.326:09年:8月~9月の教育業界関連マーケティング情報2

◆男性ファッション実務検定(10/14 日経MJ4面)
【記事の内容】
ベストドレッサー賞等で有名な一般社団法人日本メンズファッション協会が2010年度より「メンズファッション検定」を
開始します。詳細は下記URLを参照願います。
http://www.mfu.or.jp/autho/index.html

男性ファッションの商品企画から販売・管理までを網羅する内容で、1級から3級までの三段階の検定があるそうです。2,3級はこの業界を志望する学生等を対象、1級はアパレル業界で実務経験のある社会人が対象とのことです。受験料は3,2級が6,000円、1級が12,000円となっています。

女性ファッションに比べて男性ファッション業界は人材の層が薄いそうです。そうした状況を打破するためには新たな人材の獲得と知識能力の底上げが必須と判断し、この検定を開始したとのことです。
【コメント】
一時期のやや浮ついた感のある「検定ブーム」が落ち着き、このように狙いの明確な検定が登場してくることは大変望ましい事と考えます。ちなみに上記サイトから検定の申込みと同時に教科書が購入できるようになっていますが、どんな内容の教科書なのか、どういう学習スタイルを取るのか(テキスト講読or eラーニング等)の説明がないのがやや残念な点です。
筆者だったら、3級は思い切って「ファッションに興味のあるユーザー層」を対象にしたテストにし、アパレル業界の人材の裾野拡大に特化したコンセプトの検定にしてしまうかなあ~。

◆10/23 「理想の学習環境」家具で MJ6面
【記事の内容】
「達人競争力を創る」という筆者の好きな連載企画の記事です。この連載では毎回様々な会社の中のスペシャルな社員を紹介しているのですが、今回は東京大学のKALSのプロジェクトに関わっているコクヨファニチャーの堀場正明さんが主人公でした。
KALSについては本メルマガでも何度か紹介していますが、従来の講義を聴くことを中心とした授業でなく、学生が能動的に考えディスカッションするようなアクティブラーニングを推進するための学習環境を創造していこうというプロジェクトです。コクヨさんはその活動に深く関わっており、さまざまな使い方のできる「まが玉机」や、図書館という空間で独学とグループディスカッションを両立させるようなソリューションを提案しています。
【コメント】
多分この堀場さんとは、東大の山内先生の所で一度お会いしたことがあるような気がするのですが、もしかしたらコクヨの別の方だったかもしれません。しかし、自分の関心がある領域で活躍している方が新聞に出ているというのはなんとも嬉しいことです。コクヨさんでは近々「能動型学習用家具」というシリーズを発売するということですのでこれも期待大です。

◆10/26 「マーケティングツールが無料に」 日経MJ7面
【記事の内容】
ネットマーケティングで活用できる様々なツールが最近無料で提供されているという記事です。主として中小企業の利用を想定して提供されているそうで、記事では下記のようなツールが紹介されていました。
Userheat
サイトにアクセスしたユーザーのマウスポインターやスクロールの動き等を計測し、サイトのどこを熟読していたかを推測するツールです。そしてこのデータをWebサイトの改善等に役立てることができます。
デテクル
中小規模のECサイトを対象とした無料のレコメンドツール。Amazonの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」みたいなことができちゃいます。
どこどこJP
アクセスしてきたユーザーの住所をIPアドレスから分析し、地域別クロスメディアを実現することが可能となります。

【コメント】
ユーザーの情報をそこまで取得分析しちゃっていいのかな?という疑問はさておき、筆者が一番気になったのがUserheatです。上手に活用すればeラーニングコンテンツの改善に活用できそうですよね。こういうツールがあれば安価に大量のeラーニング学習者の学習活動を分析できるので、かなりおもしろそうです。

◆11/04 資格講座、受講者どう獲得 日経MJ9面
【記事の内容】
資格の学校でおなじみTACの斎藤社長のインタビューです。景気低迷で学生や社会人の資格取得熱が高まり、都心で開講している講座はあっという間に満員になるほどの盛況ぶりだそうです。しかし矢野経済研究所によると08年度の資格取得学校の市場規模は前年比4%減と厳しい状況が続いているとのこと。
そこで、TACでは9月に早稲田経営出版から資格学校事業を譲り受けるなど、同業のM&Aを積極的に行っています。斎藤社長はこの記事の中で「M&Aを積極的に行うことで事業を拡大させたい」と語っています。

【コメント】
「不況になると資格が流行する」とよく言われますが、資格取得学校の経営はそんなに楽ではないようです。11日の同紙の記事によると、専門学校・カルチャー教室の前年度比伸び率は0.1%とほぼ横ばい。TOPのヒューマンリソシア(ヒューマンアカデミー)は8.7%ダウン、この記事のTACは1.3%アップという状況です。今後少子化の影響等でマーケットが縮小していく中、業界内だけでなく業界の外からのM&Aが増大しそうな予感です。

◆11/13 DIY協会 資格者向け「御用聞き」人材育成 日経MJ4面
【記事の内容】
日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会では、DIYアドバイザー資格の保有者を対象とした実技研修を拡充します。参加費は原則無料とのこと。この実技研修では住まいの補習や防犯機器に関する内容を重点的に実施し、年50回の開催を予定しているそうです。

DIYアドバイザーの有資格者の7割はホームセンターで働く社員です。ホームセンターでは従来の待ちの姿勢の販売から脱し、高齢者のお宅に訪問し、各種器具の取り付けや電球の交換など「御用聞きサービス」を推進しているそうです。その担い手の育成が急務となってきたので今回の実技研修を実施する運びとなったそうです。
【コメント】
資格付与団体として、有資格者へのフォロー策を推進している点が素晴らしいですね。また業界の経営課題解決のために必要な人材を描き、その育成に向けての取り組みを個々の会社で非効率に行うのでなく業界団体がイニシアティブを取って実践している点も見逃せません。

ちなみにDIYアドバイザーの資格取得に向けた通信教育講座は本学で実施運用しております。
実践DIYコースのご案内
4年ぐらい前にこのコースのeラーニング化の話があり、筆者も何回かDIY協会に打合せにうかがったことがあります。残念ながら実現には至りませんでしたが、今となっては懐かしい思い出です。

◆11/16 デジタルペンで東大生が遠隔授業 日経MJ11面
【記事の内容】
学習塾大手のワオ・コーポレーションでは、「Axis東大オンライン」というネットを利用した現役東大生による個別指導を開始しました。
Axis東大オンライン
このサービスの特徴はアノト社のデジタルペンを活用している点です。これにより手書きのアナログ感覚を活かしつつネットでの遠隔指導を実現しています。ワオ・コーポレーションさんでは以前より塾での模擬試験の採点等でこのペンを活用していた経緯もあり、今回の新サービスに至ったものと思われます。
【コメント】
人間の接するところはアナログに、裏はデジタルを活用することで「どこでも」「素早く」を実現する。なかなか素晴らしい取り組みだと思います。実はワオさんには数年前にアノトペンを活用した採点の仕組みを聞かせていただいた事がありまして、その時も凄いなあと感心しておりました。しかしその後も、より有効な活用を社内で検討されており、今回のような斬新なサービスに繋がったことを知りました。デジタルの教育利用というのはすぐに形になるものでなはく、先行投資と形になるまでの辛抱が大事なのだと改めて思った次第です。

◆11/20 国際的な英検協同運営 日経MJ17面
【記事の内容】
日本英語検定協会では、ブリティッシュ・カウンシルと組み、国際的な英語検定試験「IELTS(アイエルツと読みます)」を2010年4月から日本国内で共同運営するそうです。日本でのIELTSの知名度を高め受験者数を4現在の7,000人から1万人にしたいとのことです。
【コメント】
一般に海外の大学に留学する際に英語能力を証明するにはTOEFLが有名ですが、イギリスやオーストラリア等の大学ではIELTSの方がメジャーです。さらに最近ではアメリカでもIELTSもOKという大学が増加しており、その結果どちらの試験が留学に有利なのかが静かな話題になりつつあります。色々とネットを調べていると、留学先のリクワイアメントによってはIELTSの方が有利な場合もあるようです(「TOEFLか?IELTSか?」を参照のこと)。

さらに、真偽の程は定かではありませんが、日本人にとってはIELTSの方が英語能力が高く評価されるというような情報も見つけました。

とすると、日本英語検定協会と協力して受験しやすい環境(試験会場の増加、受験料金決済の効率化等)を提供しさえすれば、受験者数の増加はかなり期待できそうです。しかも留学希望者というニッチな受験者層であれば、英検の受検者とのカニバリゼーションも起こらない筈です。

当初、筆者はIELTSについてよく知らなかったので、この共同運営はうまくいかないのではと早合点していたのですが、調べてみるとこれは結構いけそうですね。

2ヵ月分ですが結構色々とありましたね。また1月末ぐらいに特集します。

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2 コメント

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むむむ。 (福岡の英会話講師♪)
2009-12-14 00:51:24
ちょくちょく拝見させていただいています。
なるほどー 同じくIELTSはそんなにわからないので、そろそろ対策しておいたほうがよさそうですね。
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コメントありがとうございました (koga@さんのう)
2009-12-14 19:50:21
福岡の英会話講師♪さん
コメントありがとうございました。

10年前にイギリスの大学院に留学する際IELTSを受験したという方から下記のメールをいただきましたので紹介させていただきます。

>>>>>>>>>>>>以下転載>>>>>>>>>>>>

受験料が1回2万円で、試験も朝から夕方までみっちり、リスニングはイギリス訛りだし駅のホームのアナウンスは雑音交じりのオージーイングリッシュ!という試験でした。

論文試験もあって「クオリティ・オブ・ライフについてあなたの考えを述べなさい」という課題です。

受験から10数年を経た今も鮮明に覚えています。日本のふつうの大学生レベルにはかなり敷居が高い試験であるのは間違いないですが、英検やGTECなど、国内資格よりはグローバル水準(だいたいIELTS**点です、というと「ああ、そのくらいね」という共通理解ができる)なので、国際化にはうってつけだと思います。

日本人に限らず、IELTS自身が持つブランドと質が高く評価されているので、特にイギリス圏の大学ではIELTSがないと鼻であしらわれてしまいます。

>>>>>>>>>>>>以上転載>>>>>>>>>>>>
イギリス訛りのリスニングにオージーイングリッシュの駅のアナウンス、ちょっと面白そうで受験したくなりますよね~というのはさておき、10年前の情報なので今はどうなのかよく分かりません。

それではグッダイ~
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