さいたま赤十字病院呼吸器内科 『こちら彩の国 呼吸器科』

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インフルエンザに合併した侵襲性肺アスペルギルス症

2017年03月26日 | カンファレンス室

もうすぐ新年度という今日この頃ですが、今でもインフルエンザの患者さんが散見されているかと思います。

先日A型インフルエンザに合併した侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)を経験しました。

IPAはアスペルギルスにとる組織侵襲型ないし感染型の代表で、ほとんどすべての症例が白血病、悪性リンパ腫などの血液疾患、膠原病、全身消耗性疾患、臓器移植後など基礎疾患を有する症例に発症するとされていますが、まれにインフルエンザの続発した症例を経験されます。インフルエンザウイルスに感染するとリンパ球の減少、細胞性免疫低下、末梢血T細胞減少などの免疫能低下が起こり、さらには気道の線毛上皮、杯細胞の壊死、脱落、気管支腺上皮の破壊、気道の粘液線毛クリアランス能が低下するため重篤な肺感染症を合併しうるとされ、そのひとつとしてIPAが挙げられるかと思います。自分自身も以前報告し(日本呼吸器学会誌 2001;39(9):672-677)、当院でも報告したことがあります。(Respirology 2005; 10(1): 116-119)インフルエンザの合併症としてまれではありますが、注意すべき病態と思いますので、知識の整理をしておいてください。

IPAの病態には血管侵襲型PAと気道侵襲型PAの2病型がありますが、血管侵襲型PAの方が高頻度のためIPAの画像所見としては血管侵襲型PAの画像所見(ハローサインを伴う結節・コンソリデーション、エアクレセントサインを伴う空洞)が有名ですが、今回の症例は気道侵襲型PAの画像所見でした。

気道侵襲型PA(アスペルギルス気管支肺炎)はIPAの約15%を占めるとされています。画像所見は経気道感染症を反映して斑状の気管支周囲コンソリデーション・すりガラス陰影、小葉中心性結節影、tree-in-budを認めます。病理学的には気管支肺炎を反映してコンソリデーション・すりガラス陰影を、アスペルギルス細気管支炎を反映して小葉中心性結節影を来すとされています。

  

今回の症例も教科書的な気道侵襲型PAに矛盾しないCT所見ということです。教科書をきちんと読む姿勢、大切かと思いました。

細菌性感染症との画像所見の違いはありますか?マイコプラズマなどの非定型肺炎は鑑別に上がるかとは思いますが、画像所見全体が粒状影主体で、すりガラス陰影が多く、まだらな斑状コンソリデーションがやや違和感を持ちました。何と言ってもキノロン薬、マクロライドに無効だったということが一番の根拠かとも思います。

インフルエンザの合併症としてのIPA、頻度は決して高くなく、さらには気道侵襲型PAはさらにまれかと思いますが、頭の片隅においていただけたら幸いです。

追伸。

3月25日さいたまスーパーアリーナで行われたONE OK ROCKのコンサートに行ってきました。本当にオリジナルグッズのTシャツとマフラータオルを身につけ、3時間40分あまりずっと立ちっぱなしで興奮状態のままでした。

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