さいたま赤十字病院呼吸器内科 『こちら彩の国 呼吸器科』

さいたま市近隣での呼吸器診療に興味のある、
若手医師、医学生の見学(平日)を歓迎します。ご連絡ください。

選択肢の増えた分子標的治療薬

2015年11月29日 | カンファレンス室

11月26日から28日に3日間、横浜にて日本肺癌学会総会が開催されました。たくさんのセッションがあり、演題も盛りたくさんで拝聴する人間としてはちょっと大変だったように思います。(関東地方会のように1列で開催される方が落ち着いて勉強出来ると思うのは自分だけでしょうか?)内容的にも盛りだくさんでしたが、今回は免疫療法のセッション(特別講演を含め)が多かったのと、分子標的治療薬の発表が多かったのではないでしょうか?

肺癌領域においても分子標的治療薬がどんどん進歩しています。今後どの薬剤を使っていくほうがいいかさらなる検討が必要ではないかと思います。その分子標的治療薬についてちょっと触れさせていただきます。

①EGFR TKIについて

現在EGFR TKIについては3種類の薬剤が使用可能です。その3剤をどう使い分けていくことが重要なのでしょうか?日常診療においては、個々の薬剤における有効性(奏功率、PFS、OSなど)が議論され、その結果をエビデンスとして薬剤を選択していることが多いように思いますが、本当はそれだけが重要なのでしょうか?EGFR TKIを使用しているほとんどの症例が治癒を目指すことが難しい病態であるならば、有効性以外(有害事象を含めたQOL)にも注目することが必要ではないのでしょうか?今回の学会においても、治療薬剤に期待することが男女で大きく異なるという報告があり、当然ながら個々人でも異なります。我々治療者側としては有効性に関するエビデンスばかりに注目しないで、有害事象、QOLを含めた総合的な薬剤選択が必要ではないかと思いました。有効性の向上については併用療法(ベバシヅマブ、他の殺細胞性抗癌剤)に今後期待してみたいと思います。(そのときにも是非ともQOLについては大事にしていきたいと思います。)また、EGFR TKIにおける獲得耐性例においては第3世代のEGFR TKIが近い将来上市されるとのこと、期待したいと思います。第3世代のEGFR TKIを使用すべきか否かについては再生検が必要になり、我々呼吸器内科医としては気管支鏡、胸腔鏡、超音波ガイド下生検など検体を採取するための技術のさらなる向上に努めたい思います。

②ALK阻害薬について

現在ALK阻害薬について2種類の薬剤が使用可能です。どちらの薬剤を最初に使用すべきか否かという発表がまあまあありました。最初に上市され使用していたクリゾチニブにPDになった症例に対し、新たに上市されたアレクチニブを投与し、有効であったという報告が多いなかで、最近の症例ではアレクチニブから投与されPDになった症例に対してクリゾチニブを投与し有効であった報告もありました。ALK阻害薬については、個々の症例において両薬剤を必ず使用するというスタンスは必要なのではないかと思いました。

12月5日には肺癌学会関東地方会があり、またたくさん勉強して来ようと思います。

 鎌倉長谷寺のライトアップされた紅葉です。今週末あたりもまだ楽しめるのではないでしょうか?

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11月のチェストカンファレンスのお知らせ

2015年11月15日 | お知らせ

11月に入り、大分寒さがしみるようになりました。風邪を引いている方も増えているのではないでしょうか?健康第一、無理しないで行きましょう。

毎月恒例になっていますさいたま赤十字病院のチェストカンファレンスですが、11月は18日(水)午後7時より開催いたします。(場所はいつもと同じ、さいたま赤十字病院本館4階の成人病センターです)若い先生からベテランの先生まで楽しめるような症例を用意してお待ちしています。興味のある方は奮ってご参加ください。

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