6月26日(金)、東京にて行われた呼吸器の研究会に行ってきました。その研究会は症例を通してみんなで勉強し合う会です。2症例を検討したのですが、2症例とも肺胞出血を来たした悪性腫瘍でした。(1例がmalignant epithelioid hemangioendotheliomaいわゆるangiosarcomaで、もう一例が胆管細胞癌でした。)その2症例から勉強したことをまとめてみました。
まず、肺胞出血を来たしているにも関わらず、最初は血痰くらいで症状がとても軽かったこと、呼吸不全もありませんでした。肺胞出血イコール貧血と思っていたのですが、1例は貧血はありませんでした。肺胞出血という病態はいつも重篤な状態ではないということ、つまり胸部異常陰影を来たしている症例すべてにおいて肺胞出血の可能性を念頭におかなければいけないと実感しました。肺胞出血の画像所見は多彩であり、今回の2症例は多発浸潤影、スリガラス陰影、結節影であったり、多発浸潤影、スリガラス陰影と決して特異的所見ではありませんでした。
多彩な画像所見を呈する肺胞出血において、1例は結節周囲のスリガラス陰影を来たす、いわゆるhalo signを呈していました。halo signと言うと侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)の画像所見とされていましたが、最近の報告では非特異的所見とされています。halo signを呈する疾患としては①感染症(アスペルギルス以外にも結核、カンジダ、レジオネラ、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルスの報告あり)、②肺梗塞(敗血症性梗塞も)、③GPA(以前のWegener肉芽腫)、④悪性腫瘍(粘液産生腺癌を含む腺癌、血流の豊富な腫瘍、肝癌、腎癌、肉腫などの転移、MALToma、カポジ肉腫)などが挙げられていました。今回の症例のように、同じhalo signでもIPAなどの感染症と比較して、腫瘍性疾患の方が中心の濃厚影より周囲のスリガラス陰影の方が目立っていたように思いました。出血の程度の差による違いなのでしょうか?
また、今回の2症例とも、胸部CT所見で小葉間隔壁肥厚を認めていました。小葉間隔壁肥厚を来たす疾患としては、①癌性リンパ管症、②肺水腫、③急性好酸球性肺炎などKerley線を来たす疾患を筆頭に、④悪性リンパ腫を含めたリンパ増殖性疾患、⑤肺胞蛋白症、⑥サルコイドーシス、⑦感染症(ウイルス、PCP含む)、⑧アミロイドーシス、⑨Erdheim-Chester病などがあり、⑩肺胞出血もその一疾患とされています。
せっかくの機会ですので、halo signを来たす疾患、小葉間隔壁肥厚を来たす疾患について整理しておいてはいかがでしょうか?
答えの伏せられている症例検討に対して、時間を気にしながら正解に近づけるように導いていく司会の先生、本当にご苦労様でした。恥はかき捨て、参加者は経験年数を問わず、自分の思ったことをフランクにどんどん発表し、内容の濃いより充実したひとときにしていけたらと思います。
追伸。その1週間前の6月21日に鎌倉の紫陽花を見てきました。この時期になると毎年のように紫陽花を見に行っているのですが、今年の紫陽花はひとつひとつの花が大きく、今までで一番きれいだったと思います。今年はピークが例年より早かったとのこと、今週末はもう終わってしまってたのでしょうか?
長谷寺の紫陽花です。
御霊神社に咲いていたガクアジサイ「八丈千鳥」です。
御霊神社から見た江ノ電線路周囲の紫陽花です。
極楽寺駅から撮った江ノ電です。
名月院の紫陽花です。今年の紫陽花は本当に満足でした。