12月16日(水)、さいたま赤十字病院にてチェストカンファレンス(胸部画像カンファレンス)が開催しました。院内および院外から多数の参加者があり、盛況なカンファレンスになりました。そのときの検討項目のひとつに牽引性気管支拡張がありましたので、報告させていただきます。
牽引性気管支拡張(traction bronchiectasis)は、静脈瘤様に不規則な拡張を示す気管支のことを指し、周囲肺に生じた器質化や線維化などによる容積減少によって形成されるとされています。IPF/UIPやNSIPなどの慢性、亜急性経過の間質性肺炎においてもしばしば見られる所見と思いますが、今回は急性経過に出現した牽引性拡張の意味(強調する意義)についてです。
急性経過に出現するびまん性肺陰影において胸部CTより「牽引性気管支拡張あり」と読影出来れば、「肺の縮みあり」と判断出来るため、通常の感染症らしくはなく、間質性肺炎またはその類似疾患を考えると言うのは正しい判断かとは思います。では、「牽引性気管支拡張」イコール「予後の悪いDADパターン」と言っていいのでしょうか?
確かに急性間質性肺炎(AIP)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)などDADを来たしやすい疾患のHRCT所見として牽引性気管支拡張が強調されています。薬剤性肺炎においてもDADパターンは牽引性気管支拡張が出現する、amyopathic dermatomyositisでも同様の所見に注目されているため、日常臨床ではHRCTにて牽引性気管支拡張に注目し、そしあれば「DADのような予後不良の病態」を疑い、慎重に対応していることが多いと思います。ただ、「牽引性気管支拡張」イコール「DADパターン」は少し言い過ぎではないかという症例も多々経験するところであることも間違いないと思います。
次の症例は薬剤性肺炎にて死亡した症例の胸部HRCT所見です。経過からDADと考えています。
次の症例はどうでしょうか?急性経過の呼吸不全にて緊急入院した症例です。入院および抗菌薬投与にて改善した症例です。原因は完全には解明出来ていませんが、少なくともDADではない経過と考えています。
牽引性気管支拡張を来たす原因としてはDAD以外のものもあるということ、「牽引性気管支拡張」イコール「DAD」は少し言いすぎであることを是非確認していただけたらと思います。定義にもありましたが、原因として線維化以外に器質化の関与もあるわけですから、原因からも一概に予後不良とは言えないのも当然ですね。
牽引性気管支拡張の評価からDADか否かの評価が出来ないか?とても重要なテーマかもしれませんね。牽引性気管支拡張の範囲が広いのも有用な情報でしょうか?また、フォローアップ中(治療にもかかわらず)に牽引性気管支拡張が進行するのも重要でしょう。上記2症例にも言えることですが、DADの牽引性気管支拡張は拡張の程度が強く、ゴツゴツした(不整)拡張に見えるのは僕だけでしょうか?
これからの臨床研究に期待したいと思います。