さいたま赤十字病院呼吸器内科 『こちら彩の国 呼吸器科』

さいたま市近隣での呼吸器診療に興味のある、
若手医師、医学生の見学(平日)を歓迎します。ご連絡ください。

IgG4関連疾患の胸部画像所見

2017年06月25日 | カンファレンス室

先週末東京にて隔月で開催されている呼吸器の勉強会に行って来ました。その勉強会は2例の症例検討と特別講演の二本立ての会ですが、恥ずかしながら症例検討の2症例とも正解することが出来ませんでした。呼吸器内科医たるもの、常に研修医の気持ちを忘れないで謙虚に勉強していかなければいけないと反省させられました。

症例検討の1例がIgG4関連疾患でした。その症例は胸部異常陰影にて病院受診し、その後耳下腺腫大、眼瞼腫大を認め、IgG4関連疾患としては典型的経過になるかとは思いますが、呼吸器内科医としては無症状の胸部画像異常の段階でIgG4関連疾患を疑いたいものです。その症例の胸部画像所見は両側上葉主体の気管支血管束肥厚(広義間質病変)、軽度縦隔リンパ節腫大、左下葉の徐々に増大する結節影でした。IgG4関連疾患の胸部画像所見としては①縦隔リンパ節腫大、②広義間質の肥厚(小葉間隔壁肥厚)、③気管支壁肥厚、④胸膜下/気管支血管束に沿った浸潤影、⑤結節影、浸潤影など多彩ですが、メインの所見は広義間質病変であり、サルコイドーシスの鑑別疾患のひとつにが挙げられるかと思います。今回の症例も第一にサルコイドーシスを挙げていました。つまりサルコイドーシスを疑う画像所見の症例においては常にIgG4関連疾患を鑑別に挙げる習慣をつけるべきなのでしょうね。

ちなみに広義間質病変の鑑別疾患として、教科書的には①肺水腫、②癌性リンパ管症、③急性好酸球性肺炎などのKerley lineを来す疾患以外に④サルコイドーシス、⑤リンパ増殖性疾患(悪性リンパ腫含む)、⑥multicentric castleman病(MCD)、⑦IgG4関連疾患、⑧薬剤性肺炎、⑨肺胞出血、⑩Erdheim Chester病、が挙げられ、教科書にもIgG4関連疾患が記載されています。教科書に書いてあることですから、きちんとコメント出来ないといけないのですね。

また、今回の症例は左下葉に非特異的結節影がありました。この研究会に毎回参加してくれ、本当に画像診断の素晴らしさを教えてくれている胸部放射線科専門医の某先生が「左下葉の結節影があるので、IgG4関連疾患が第一に考えられますね」とコメントしてくれたこと、本当に感動しました。広義間質病変を主体としながらも多彩な画像所見を呈するIgG4関連疾患、全体の所見を一元的に説明出来ないような画像所見のときにも鑑別に挙げるべきと勉強させていただきました。

次回は9月に予定されています。今度こそ正解できるように精進したいと思います。

追伸。先日日本緩和医療学会の教育セミナーを聴きに横浜に行って来ました。肺癌を扱う呼吸器内科医としては常に緩和医療については勉強しておかなければいけないと思い参加したのですが、なんと1600人もの参加者がいました。あまりにの参加者の多さにびっくりしていました。もちろん看護師、薬剤師などの他職種の参加者も多かったのは思いますが、在宅医療をしている医師が質問したりと、医師もかなり参加していたと思います。これから更なる高齢化を迎え、緩和医療の充実が必要になってくると思われますが、たくさんの参加者を見て、緩和医療の領域の未来は大丈夫とちょっとほっとしる次第です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする