最近肺癌治療の進歩の話になると免疫療法が主役になっています。先日当院に開催した癌診療連携セミナーで埼玉県立がんセンター呼吸器内科の酒井先生に講演していただきましたが、そのときの講演のほとんどを免疫療法が占めていました。肺癌に関する他の研究会に行っても免疫療法がメインです。今後も肺癌治療においては免疫療法が主役の一翼を占めていくのは間違いないかと思います。
その肺癌免疫療法ですが、現在2種類の抗PD1抗体薬が上市されています。この2種類の薬剤どのように使い分けていくのでしょうか?
2種類の薬剤の特徴を簡単にまとめると、①オプジーボは2次治療に使用する薬剤(1次治療には適応なしです)で、2次治療においては組織型問わず、PDL1発現率問わず有効性のエビデンスがあります ②キイトルーダはPDL1発現率により適応症例が異なります。PDL1発現率が50%以上あれば1次治療に使用していく薬剤です。2次治療においては、PDL1発現率が1~49%であれば使用可能、1%以下であれば使用不可能になります。
以上より肺癌免疫治療について整理すると
①初診時の組織検体にてPDL1発現率を検索すること→PDL1発現率が50%以上であればキイトルーダを1次治療として使用することを検討することが必要と思います。
②PDL1発現率が50%以下の症例においては、2次治療以降に免疫チェックポイント阻害薬を使用することを考えることになるかと思います。PDL1発現率が1%以下ならばオプジーボを使用します。(最近では1%以下の場合は免疫療法を行う前に殺細胞性抗癌剤を使用することを考慮するよう勧告されているようですが)PDL1発現率が1~49%のときにはキイトルーダ、オプジーボのどちらかを2次治療に使用すること検討します。
日常臨床で興味のあるところは、PDL1発現率を測定出来ていて1~49%の症例においてどちらの薬剤を使用した方が有効性が高いかということです。今後の症例においては初診時に組織検体からPDL1発現率を測定しているのは間違いなく、PDL1発現率との関連についてデータを出しているキイトルーダの方がエビデンスがあるように見えますが、オプジーボがPDL1発現率と関連が乏しいかというとそうではないのと思いますし、確固としたエビデンスはないのが現状です。また今のところPDL1発現率の測定は1回限りに限定されています。専門家の話では、治療後の経過によってPDL1発現率は変わってくるとのこと、つまり初診時に測定したPDL1発現率は2次治療以降にも当てはまるかというとそうばかりではないようです。
PDL1発現率1~49%の肺癌症例の二次治療においては、今後のエビデンスを参考にしながら決めていくしかないと思いますが、今のところ同等の効果ということのように思います。個々の薬剤の特徴(2週間隔投与か3週間隔投与か?薬剤投与量の問題、有害事象を含めたデータの蓄積など)をよく考えながら使用していただけたら幸いです。こんなことを考えている間にまた新しい免疫チェックポイント阻害薬が使用出来るようになり、また新たな悩みが出てくるのでしょうが・・
先週行った局所麻酔下胸腔鏡の風景です。先週は2件施行しました。以前も報告しましたが、2016年は31件局所麻酔下胸腔鏡を施行しました。局所麻酔下胸腔鏡は需要のある検査であることは間違いないので、今年も昨年以上に多く行うことになるのではないかと思います。もし興味のある呼吸器内科の先生がいましたら、見学に来ていただけたらと思います。もちろん当院呼吸器内科で一緒に局所麻酔下胸腔鏡を行うのも大歓迎です。