時のうねりのはざまにて

歴史小説もどきを書いてみます。作品と解説の二部構成で行こうと思います。

蒲殿春秋(三十九)

2006-08-23 23:22:28 | 蒲殿春秋
範季一行が到着してから暫くして
奥州の実質的支配者藤原秀衡が訪ねてきた。

範季の下座に座してはいたが、さほどそのことに気を留めたわけではない。
逆に範季の方が気を遣っているようにも見えた。

数日後、秀衡の舅であるという人物が訪ねてきた。

その人物は範季の側に控える人々を見渡した。
その視線は範頼の前でぴたりと止まった。
眼を向けられた範頼はなぜか緊張した。

その夕刻、範頼は養父範季から先刻会った秀衡の舅
藤原基成の屋敷へ向かうようにと命じられた。

基成から差し向けられた使者を案内にさほどはなれていない基成の館に向かう
範頼。

ほの暗い夕闇を跳ね返すかのような黄金のたちならぶ町並みを通り
豪勢な屋敷に誘われる。
ひたすら広い渡り廊下を歩いた後に通された部屋でしばし待たされる。

やがて、着飾った女房が現れて
この屋敷の主の元に通されることになった。

「やはりそなたであったか」
範頼の挨拶をうけた基成の最初の言葉がそれであった。
「わしはそなたをみるのは二度目じゃ。
もっとも最初のときはそなたはまだ幼子であったがな。
のう、源範頼どの」

自分の素性を知るこの人物はどのような者なのかを範頼はまだ図りかねていた。

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