ひとりごと

ミーハーなさばきちが、観た映画の感想をテキトーにつぶやいてます。
基本的にレビューはネタバレですのであしからず。

恋するトマト

2006年09月02日 | 映画「か」行
大地康雄の茨城弁の上手さときたら・・・。
映画のために覚えましたって感じじゃなく、生まれた時から茨城弁喋ってきたようで、野田正男というキャラクターが実在するかのようにやたらリアルに感じられました。


や、茨城弁に感心するような映画じゃないのですこれは。
大地康雄さんが10年以上も構想を温めていた渾身の一作。45歳独身、農家の長男に生まれた野田正男が、結婚詐欺に遭いフィリピンで落ちぶれ、あるフィリピン人女性との出会いをきっかけに一度は捨てたはずの農業に再び情熱を見出すという、挫折と再生を描いた物語。

農家のヨメ不足問題。ほとんど興味もなかったけど、実はこれって結構切実な問題だ。いろんな意味で。
何年か前に、日本人女子は皆農家のヨメになりたがらないので、東南アジアなどの外国からお嫁さんをもらっている、なんて話を聞いたことがある。
映画前半、裏切られ続けた正男の堕ちっぷりがなんとも痛ましい。結婚したくてたまらないのに結婚できず、おまけに外国で詐欺にあってホームレスまで落ちぶれるなんて、あんまりじゃないの。
高齢化に加え後継者不足の上仕事はきつくて割に合わず、農家を辞めてしまう人も少なくない。これはまさしく現在進行形の問題だ。一体これからどーなんの日本の食料自給率!!

そんでもって、いい年こいたジジイどものあの買春ツアーはどうよ?全く恥ずかしいったらありゃしない。日本人のイヤ~な姿を観てしまったな・・・。
「芸能人にしてあげるから」とまだ10代そこそこの女の子を日本に送り込み、実際やってることといったら・・・。まさに名ばかりの「芸能スカウト」。正男はある人物との出会いでそんなダークな職業に就くことになり、意外な才能を発揮していく。
正男はそれまでの人生、一生懸命自分のやるべきことをやって生きてきた。どのくらいの縁があったのかわからないけど、結婚への希望も決して捨てていなかった。でも人間何がきっかけで人生狂うかわからない。
あれだけ活き活きと農業への情熱を語っていた正男が、茨城訛りの英語でやくざな仕事に手を染める。なんとも複雑な気分にさせられる。

しかし、かえるの子はかえる。正男はやはり生まれながらの農家なのだ。いくらやくざな仕事で大金を手にしようが、持って生まれたDNAはどんなことをしても変えられない。
映画後半、同じく農家の出身であるクリスティーナとの出会いが荒んでいた正男を癒していく。
この辺の件、やはり人は一人では生きられないのだなあと感じた。別にクサイこというつもりはないけど、お互い様というか、損得勘定なしに助け合っていかなければ人間生きていけないのだ。

ラストはある程度予想は出来たものの、やっぱり素直に感動しました。いろいろあったけど、これでやっと正男も報われるな、とほっとしました。それにしてもフィリピンで栽培されたあのトマトはおいしそうだったなあ。