サッカー日誌 / 2012年06月02日


「なでしこ」科学支援30年の歴史


大畠襄先生の報告を聞いて

日本サッカー史研究会5月例会
(5月21日 JFAハウス会議室)

★チーム・ドクターの草分け
 日本サッカー史研究会の5月例会では、これまでとは違う分野を取り上げた。常連メンバーの大畠襄先生から、女子サッカー選手の身体と障害についてのお話を聞いたのである。
 大畠先生は日本代表チームと三菱サッカー部で、日本初のチーム・ドクターだった。日本サッカー協会の医事委員長、FIFA(国際サッカー連盟)医事委員、AFC(アジアサッカー連盟)の医事委員長を務めた。日本とアジアのスポーツ医学の開拓者の一人である。
 1980年に結成された日本女子サッカー連盟の会長にもなった。女子サッカーと縁ができたのは、三菱と関係が深かったからだろう。当時の女子サッカーの普及と組織化には、三菱養和クラブが大きな役割を果たしている。
 大畠先生とそのグループが1985年から1995年にかけて発表した6編の女子サッカー選手についての論文と報告がある。それを解説していただいた。

★胸部(乳房)への危険はない
 外国の論文の紹介もあった。
 イタリアの報告によると、女子選手の胸部のケガは0.6%と極めて低い。その他の障害も含めて「女子のサッカー競技への参加に反対する意見を利する根拠は何一つ見出せなかった」と結論している。オーストリアの調査も「女子の胸部(乳房)がサッカーによって危険にさらされるという仮説は、証明することができなかった」としている。
 関西サッカーの大御所、田辺五兵衛さんが1960年代に女子サッカーを始めたとき「将来、育児に支障をきたさないように」と、胸でボールを受けるときは両手の掌を内側に向けて胸を抑えてもよいという特別ルールを作った。いまとなっては「笑い話」である。
 いずれにせよ「サッカーは女性には向かない」とした、むかしの考えに科学的根拠はなかった。社会的偏見にもとづくものだったことは明らかである。

★研究と現場の結びつき
 女子選手にどのようなケガ(外傷)が多いか、どのような状況でケガをしているか、などについての報告もある。
 女性特有の貧血が運動能力に及ばす影響とその対策についての調査と研究もある。
 こういう調査研究は、大畠先生とそのグループのお医者さんが女子チームの遠征などにチーム・ドクターとして帯同した機会に行われている。そして、その成果は選手たちのその後のケアやトレーニングの現場に結びついている。
 1983年に中国の広州で開かれた「国際女子サッカー大会」のときに、すでに調査が行われている。日本の女子サッカーは、その初期からチーム・ドクターの科学的サポートを受けてきたわけである。
 「なでしこJapan」の活躍の背景に、30年近くにわたる科学の支援があることを知った。

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