白い花なら百合の花
黄色い花なら菊の花
悲しい恋なら何の花
真赤な港の彼岸花
懐かしい浅川マキの「港の彼岸花」です。なんでこんな歌詞を取り上げたのか。他でもありません。昨日今日、渥美半島にも界隈の道端に真っ赤な彼岸花が咲き始めたからです。
彼岸花は地獄花。実に不思議な空間と心情を演出するものです。この歌をうたった浅川マキは4年近く前に名古屋で息を引き取りました。享年67歳。いまのわが身と同じです。
「曼珠沙華 抱くほどとれど 母恋し」
これは女流俳人の中村汀女の作です。彼岸の季節のたびに思い起こされる句です。この汀女が逝かれたのは20数年前の9月の彼岸の入りの日でした。私の母が逝ったのも10数年前のこの9月でした。
それだけの偶然に過ぎないのですが、汀女の一句はこの季節の私には常に鮮烈に響くのです。多分それは、曼珠沙華がもつ戸惑う程に強烈な形相と色彩に、「恋しさ」の深さが滲むからではないでしょうか。
強烈といえば彼岸花について、もうひとつ付け加えねばならないのは種田山頭火の句です。
「なかなか死ねない彼岸花咲く」
彼岸花が強烈なのか、山頭火が強烈なのか。ここまでくると分からなくなるというものです。