俺のランニング生活

大学で長距離走をやっていました。練習日誌や普段思っていること、自分の陸上競技論を書きます!

どのくらい休むべきか

2014-07-19 14:51:18 | 陸上競技論

長距離走の一般的なトレーニングでは、強度の高い、いわゆる「ポイント練習」と、ジョギングなどの強度の低い回復を目的とした練習を交互に繰り返し、身体の超回復(super compensation)を狙います。ここで問題となるのはどのくらい回復の時間をとるかです。ポイント練習から回復の時間が十分でないまま次のポイント練習をしてしまっては、オーバートレーニングとなってしまいます。また、回復の時間が長すぎると、超回復で向上した体力の水準がもとの状態に戻ってしまい、十分なトレーニングの効果が望めなくなってしまいます。そこで、私たちは経験から回復の時間を判断してトレーニングのスケジュールを立てています。ただ、この判断を間違ってしまい、十分なトレーニングの効果を得られない場合も少なくありません。そんな場合は、次の情報を参考にしてはいかかでしょうか。Jan olbrecht著のThe Science of Winning に、科学的な根拠に基づく様々なトレーニングの回復に要する時間が記されています。この本は水泳の専門書ですが、陸上競技にも応用できると思います。

 

 

様々なトレーニングの回復に要する時間

出典:Jan Olbrecht, 2013,The Science of Winning [Kindle Edition]F&G Partners

 

 

Training Type (トレーニングタイプ) ※<  >内は陸上競技における具体的なトレーニング

 

   Extensive Endurace (低強度有酸素運動)

<ジョギング>8時間~12時間

 

    Intensive Endurance(高強度有酸素運動)

<ペース走、ビルドアップ走> 24時間~30時間

 

   Sprint / Short sets (短距離スプリント走)

<短距離スプリント走> 30時間~40時間

 

   Extensive Anerobic Training (低強度無酸素運動)

<ビルドアップ走、インターバルトレーニング> 36時間~48時間

 

  Extensive Strength Training (低強度筋力トレーニング)

          40時間~60時間

   

  Intensive Anerobic Training (高強度無酸素運動)

         <インターバルトレーニング、レペティショントレーニング> 40時間~60時間

 

 Intensive Strength Training (高強度筋力トレーニング)

             48時間~72時間


アフリカ系以外の選手にヒントを探す

2014-06-16 22:47:37 | 陸上競技論

ケニア人は速い!エチオピア人は速い!

長距離界ではいつものように聞くフレーズです。ケニア人やエチオピア人などのアフリカ人の速さの秘密を解き明かす研究はたくさん行われています。

 

標高の高い場所に住んでいる。

ランニングエコノミーが優れている。

少年時代に走って通学する。

 

などの結論に至っています。

 

研究すればするほど、日本人では埋めることのできない環境や身体能力の差が明らかになります。

そこで、アフリカ系以外の長距離ランナーで世界レベルでの活躍をしている選手のトレーニング方法などを研究したらいいのではないかと思います。

今回は、アフリカ系以外の選手で5000m13分10秒以内のランナーのデータをまとめてみました。

アフリカ系以外の選手で5000m13分10秒を切っているのは35人、12分台は8人です。これらの選手がどんなトレーニングをしているか研究をすれば、日本人が13分一桁あるいは、12分台で走るための手掛かりがつかめるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 


レナト・カノーヴァ(Renato Canova)のトレーニング原理

2014-03-30 23:59:01 | 陸上競技論

今回は、イタリア人のコーチ、レナト・カノ―ヴァ(Renato Canova)のトレーニング原理についてです。カノ―ヴァは世界一流のケニア人を数多く指導しています。以下のような選手がカノーヴァの指導を受けています。

 

・サイフ・サイード・シャヒーン(Saif Saaeed Shaheen):5000m12分48秒 3000mSC7分53秒(世界記録)

 

・ニコラス・ケンボイ(Nicholas Kemboi ):10000m26分30秒

 

・モーゼス・モソップ(Moses Mosop):10000m26分49秒 マラソン2時間3分06秒(非公認記録)

 

 

 

参考:https://www.youtube.com/watch?v=zfFDwOcMUXI

 

 

 

今、彼のトレーニング原理は世界中で注目されています。今回は彼のトレーニングの期分け(periodization)について書きたいと思います。トレーニングの期分けとは最も重要なレースに調子のピークを持っていくために時期によってトレーニングの内容を変化させる手法のことです。彼のトレーニングの期分けでは6か月を、1.導入期(introductive period)、2.基礎構築期(fundamental period)、3.準専門期(special period)、4.専門期(specific period)の4時期に分けています。それぞれの時期のトレーニング内容は以下の通りです。

 

 

 

 

 

1.導入期(introductive period)

 

・期間は約3週間。

 

・ゆっくりとしたペースで長時間走を中心に行う。

 

・ヒルスプリント(登り坂での全力走)で速筋繊維の動員を促す。

 

 

 

2.基礎構築期(fundamental period)

 

・期間は2カ月間

 

・LT付近ペースでの持続走を行う。

 

・各種目ごとの1回の走行時間、ペースは以下の通り。

 

              ・800m走者 20~40分 800mの自己ベスト×1.4~1.5

 

             ・1500m走者 30~50分 1500mの自己ベスト×1.3~1.4

 

         ・5000m走者 45~70分 5000mの自己ベスト×1.15~1.25

 

              ・10000m走者 60~90分 10000mの自己ベスト×1.15~1.25

 

              ・ハーフマラソン走者 80分~100分 ハーフマラソンの自己ベスト×1.15~1.25

 

              ・マラソン走者 105分~150分 マラソンの自己ベスト×1.1~1.2

 

   ※5000m15分の自己ベストならば、900秒(15分)×1.15~1.25=1035秒(17分15秒)~(18分45秒)→5kmを17分15秒(1kmあたり3分27秒)~18分45秒(1kmあたり3分45秒)のペースで45分~50分走る

 

 

 

 

 

・全トレーニング期間の中で走行距離を増やす時期。

 

 

 

3.準専門期(special period)

 

・期間は2ヵ月間

 

・800m,1500m,5000m走者は以下のトレーニングを行う。

 

      ・ショートレペティション(短い急走と完全回復を繰り返す)

 

          ・ 狙いとする種目の自己記録×0.95-0.90のペースで行う。

 

    ・インターバル

 

         ・狙いとする種目の自己記録×1.08-1.05のペースで行う。

 

         ・急走の距離が合計で4~6kmになるようにする。

 

         ・回復時間は短くする。

 

 

 

・10000m、ハーフマラソン、マラソン走者は以下のトレーニングを行う

 

  ・インターバル

 

      ・狙いとする種目の自己記録×0.98-0.95のペースで行う。

 

      ・各種目ごとの急走の合計距離は以下の通り

 

          ・10000m走者:10km~12km

 

           ・ハーフマラソン走者:12km~15km

 

           ・マラソン走者:20km~30km

 

・持続走

 

      ・各種目ごとの走行距離、ペースは以下の通り

 

           ・1500m走者 4km 1500mの自己記録×1.18

 

           ・5000m走者 8km~12km 5000mの自己記録×1.125

 

           ・10000m走者 15km 10000mの自己記録×1.125~1.1

 

           ・ハーフマラソン 25km  ハーフマラソンの自己記録×1.055

 

           ・マラソン 45km~50km マラソンの自己記録×1.125

 

・狙いとするレースよりも短い距離のレースや長い距離のレースに出場して、スピードと持久力を磨く。

 

 

 

4.専門期(specific period)

 

    ・レースペースでのインターバルやレペティションを行う

 

        ・例えば、800m1分44秒の走者は400m×5本(50秒、5分の回復)で行う。

 

        ・上記のような練習の急走の距離、あるいは本数を増やしていき、よりレースの状況に近づける。

 

                例えば、500m×4(63秒、5分の回復)、400m×6(50秒、5分の回復)

 

   ・質の高い練習の間は2~3日空け、その間はゆくっりとしたジョギングを行う。

 

          ・モーゼス・モソップの場合、回復時のトレーニングは、朝60~80分、午後40~60分、それぞれゆっくりとしたペースで行っている。

 

 

 

 

 

その他特記事項

 

・全期間にわたって回復(regeneration)のためのランニングはLTペース×1.4~1.3といった極めて遅いペースで行う。参考:

 

・上で示した各時期のトレーニングは、その時期に最も強調すべきトレーニングであり、それのみを行えばよいということではない。トレーニングの時期が進行しても、前の時期に強調されたトレーニングを適度に混在させる。そうすることで、前の時期に獲得された能力を維持しながら、新たな能力を積み重ねることができる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

従来のトレーニングとの違い

 

ナイキ・オレゴン・プロジェクトの元コーチである、スティーヴ・マグネス(Steve Magness)はカノーヴァのトレーニングの特徴を以下のように分析しています。

 

 

 

従来のトレーニングの期分けの典型的なパターンは、「基礎構築期に弱い強度でたくさんの距離を走り込み、試合が近づくにつれ練習量を少なし、強度を強くしていく」といったものだった。彼はこの期分けを「直線型期分け(linear periodization)」と名付けてる。なお、この期分けはアーサー・リディアード(Arthur Lydiard)のトレーニングに端を発している。

 

 

 

 

カノ―ヴァのトレーニングの期分けの特徴は、「トレーニングにスピードと持久力の2つの軸を設け、トレーニングの時期が進行していくにつれ両軸を融合させ、狙いとしたレースに必要な持久力とスピードを獲得する」というものである。マグネスはこの期分けを「漏斗(ろうと)型期分け(funnel periodization)と呼んでいる。「漏斗型期分け」では、基礎構築期に、弱い強度での長時間のランニングで持久力を鍛えることと並行して、60m全力走や、ヒルスプリントのような最大出力でのランニングでスピードを鍛える。試合が近づくにつれ、持久力、スピードを鍛える両トレーニングのスピードを、狙いとしたレースのペースに接近させていく。また、練習量に関しては、トレーニングが進行していくにつれ増加し、前試合期をピークに、試合期にかけ減少していく。

 

 

 

 

このようにすることで、トレーニング全期間にわたって、高い速筋の動員率が維持される。そうすると、潜在的なスピードを常に発揮できる状態になり、トレーニングの効率が向上する。

 

 

 

 

 

参考Webサイト:Let'sRun.com(http://www.letsrun.com/forum/flat_read.php?thread=4465229&page=1)

 

参考文献::Steve Magness(2014) The Science of Running: How to find your limit and train to maximize your performance, Origin Press 

 

 

 

※今回はソースの一部がwebサイトなので、信頼性は各自のご判断に委ねます。


5000mで12分台出すためのスピード

2014-03-05 21:43:50 | 陸上競技論

7年以上も前に書いた記事なのですが、「5000mと1000mの記録の関係」を読んでくださる方が多いようです。

この記事では、5000mで12分台を出すためには、1000mを2分21秒以内、1500mを3分39秒以内で走れる走力が必要だということを書きました。(詳しくは、こちらを読んでください。http://blog.goo.ne.jp/run-run-aizawa/e/667af7e1ae9e8e57f909c3e1f2172b33

 

今回は、実際に5000mを12分台で走った選手の1500mの記録をまとめてみました。5000m12分台走者の中から1500mの自己記録が判明している52人のデータを用いています。52人の12分台走者の1500mの平均記録は3分35秒72で、1500mの日本記録3分37秒42より上です。日本人が5000mを12分台で走るには、1500mで日本記録を破る力を持つ選手が5000mに本格的に取り組む必要があるのではないでしょうか。


ランニングエコノミーの改善

2014-03-02 21:08:27 | 陸上競技論

ランニングエコノミー(running economy)とは日本語で「走りの経済性」と訳します。これは、一定のペースで走るための酸素の消費量で、車で例えるなら燃費です。少ない酸素の消費量でより速く走れれば、長距離走の記録はよくなります。

 

優れたランニングエコノミーを持つ走者には以下の特徴が見られます。

 

骨盤の前掲、短い脹脛(ふくらはぎ)の周囲、長い脛(すね)、少ない体重、上下動の少ないランニングフォーム、短い接地時間、弾性力が強い脚  高い最大スピード

 

 

この中の「短い接地時間」、「弾性力が強い脚」「高い最大スピード」を実現するトレーニング方法を紹介します。

 

●エクスプローシブトレーニング(explosive training)

エクスプローシブトレーニングはジャンプやバウンディングといった爆発的な力を出すトレーニングです。

(参考:ロシアの跳躍選手のトレーニング http://www.youtube.com/watch?v=uHGz3Li2cv4

これらのトレーニングでは、筋肉の弾性力、腱の弾性力、筋力、筋収縮のスピード(神経系の改善)に効果があります。筋肉や腱の弾性力とは、筋肉や腱が伸びたり、縮んだりした際に元の状態に戻ろうとする力です。ゴムを引っ張って手を離した時に、元の状態に勝手に戻ることを想像してください。筋肉や腱の質を変えて弾性力を高めておけば、酸素を消費せずに力を発生させられるのです。また、筋収縮のスピードを改善すると一定時間に発揮できる力が増大します。これらがランニングエコノミーを改善するメカニズムをまとめると以下のようになります。

 

「筋肉の弾性力」、「腱の弾性力」、「筋力」、「筋収縮のスピード」、これらの向上

一定の酸素消費量で筋細胞1つあたりの発揮できる力が増大

ある一定のスピードで走行する際、動員される筋細胞が減少

酸素の消費量が減少

ランニングエコノミーが改善

 

また、「筋肉の弾性力」、「腱の弾性力」、「筋力」、「筋収縮のスピード」、が向上すると、「短い接地時間」、「高い最大スピード」にも繋がります。

 

具体的なトレーニング方法

 

・片足ホッピング(片足ずつ両足行う)

http://www.youtube.com/watch?v=DEmADtDgd0k

・ハードルジャンプ

http://www.youtube.com/watch?v=tvVr-Gca9FI

・足首ジャンプ

http://www.youtube.com/watch?v=a_kVnBeKvAo

・バウンディング

http://www.youtube.com/watch?v=p2bYUE2roX4

 

以上を、それぞれ20m×5本程度、1分程度の回復を挟んで行う。

 

※他にもさまざまな同種のトレーニングがあるので調べてみてください。

 

 

●ヒルトレーニング(坂道トレーニング)

坂道を全力で駆け上がるトレーニングなどもエクスプローシブワークの同じような効果があります。

 

具体的なトレーニング方法

・100m~200mの坂道ダッシュ×4~15本

・坂道でのホッピング20m×5本

・坂道でのバウンディング20m×5

 

 

●ハイスピードトレーニング

 狙いとするレースペースより速いペースで走るトレーニングがランニングエコノミーの改善に繋がります。

中速のランニングで獲得された筋力は、それより高速のランニングには適応しません。なぜなら、筋肉を動かす神経が高速のランニングに適応していないからです。この状態だと、より大きな力を出すにはより多くの筋細胞を動員するしかなく、酸素を多く消費してしまいます。しかし、神経が速い動きに適応すると、それより遅い動きには簡単に対応でき、酸素の消費量が減るのです。

 これがマラソン選手であっても最高スピードを高めなければならない理由です。マラソン選手はレースペース以下で長い距離を走る練習が多いのですが、この練習だけだと神経の機能が遅いランニングの動作に固定されてしまい、ランニングエコノミーが損なわれてしまいます。42mを速く走れるランナーは、速いピッチ、長いストライドといったスキルを42kmにも応用できるのです。

 

具体的なトレーニング法

・6~8秒間の全力走×10(十分な回復を挟んで)

・レースペースより速いペースでのインターバルトレーニング

 

 

上記の3種類のいずれかのトレーニングをポイント練習(質の高い練習)の直前に行うか、そのトレーニングを単独で行うかにしてください。かなり身体に負荷がかかるので、回復を目的としたトレーニングの日に行うのは望ましくありません。負荷をかける日と回復をはかる日の練習強度のメリハリをつけると効果が上がります。

 

 

Heikki RuskoとNeena Paavolainen らは以下のような実験をしています。(Rusko, Paavolainen,1999)

 

9週間18人のランナーA、Bのグループに分けてトレーニングをさせ、実験開始直後と実験終了時に5000mのタイムトライアルを実施しその結果を比較した。トレーニングの内容は以下の通り。

 

Aグループ:

週3時間のエクスプローシブワーク、ハイスピードスプリント+通常のランニング練習

 

Bグループ:

通常のランニング練習のみ

 

9週間後、全員に5000mのタイムトライアルを実施したところAグループは平均3%(約30秒)ほど記録が向上したが、Bグループにはほとんど変化がなかった。

 

 

5000mが15分00秒のランナーが3%の記録改善に成功したら14分33秒になります。この種のトレーニングがいかに重要かお分かり頂けると思います。

 

参考文献

Owen Anderson, Running Science, Human Kinetics,2013

Paavolainen, L. et al. Explosive-Strength Training Improves 5-km Running Time by Improving Running Economy and Muscle Power, Journal of Applied Physiology,1999

 

長距離を速く走るには何を改善すべきか

2014-02-19 23:14:26 | 陸上競技論

何事も目的を持って行うということはとても大切なことだと思います。トレーニングについても例外ではありません。長距離走を速く走るためには、 


「何を改善したら記録が向上するのかを知る」→「それを改善するトレーニングを行う」

 

を行うことが必要だと思います。「何を改善したら記録が向上するのか」という疑問に対して、単に「持久力」とか「スピード」といった定義が曖昧なものではなく、正確にその要素をとらえることが必要だと思います。

 

今回紹介するのは Owen Anderson著, "Running Science",にあった内容です。この本は昨年出版されたばかりの本で、目からウロコが落ちるような内容です。今までの日本の伝統的な長距離走のトレーニングを覆すような内容でショッキングでした。また、川内優輝選手や藤原新選手の活躍の理由が分かった気がしました。

http://www.amazon.com/Running-Science-Owen-Anderson/dp/073607418X

 

 

この本の中でOwen Andersonは、以下の7つの要素を挙げています。

 

 

トレーニングで改善すべき7つの要素

 

1.最大酸素摂取量

一定時間に身体に取り込める酸素の最大量。

 

2.最大酸素摂取量100%ペース維持時間

最大酸素摂取量が出現するペースを維持できる時間。人によって4分から10分と差がある。

 

3.乳酸性作業閾値

高強度の運動で血中に蓄積される乳酸を再利用して、エネルギーに変換する能力。

 

4.疲労への耐性

高強度の運動時に、脳からの運動制限の指令に打ち勝つ能力。従来は運動中の疲労の原因は主に乳酸と考えられてきたが、それだけでは説明しきれない現象がある。その矛盾に対して、Tim Noaksは、身体が限界を超えて運動しないように、予測を立てて末梢を管理している、セントラルガバナー(central governor)を提唱した。(Noaks,1997)

 

5.ランニングエコノミー

走りの経済性。一定のペースで走るためにどれだけ少ない酸素の消費量に抑えることが出来るか。車で例えるなら燃費。最大酸素摂取量が同じ2人のランナーでも、ランニングエコノミーが優れているランナーの方が長距離を速く走れる。

 

6.ランニングの為の筋力

走動作に関わる筋力。

 

7.ランニングの最大スピード

20m~300mを全力で走る際の最大スピード。

 

 

 

「最大酸素摂取量」や「最大酸素摂取量100%ペース維持時間」、「乳酸性作業閾値」 は伝統的な日本の長距離走のトレーニングでよく改善が図られてきましたが、「疲労への耐性」、「ランニングエコノミー」、「ランニングの為の筋力」、「ランニングの最大スピード」はまだまだ未開拓の部分だと思います。

特に興味深いのは「ランニングエコノミー」と「ランニングの最大スピード」です。アフリカのランナーは体型が走りに有利なために「ランニングエコノミー」が優れていると言われていますが、実はトレーニングで改善することが可能なのです。また、マラソン選手であっても「ランニングの最大スピード」を向上させることが42kmの記録改善につながると著者は説いています。


200m、400m、800m、1500m各記録の相関関係

2014-02-16 20:52:35 | 陸上競技論

久しぶりの投稿です。

 私は以前、様々なレベルの短距離走者の200mと400mの記録の関係を調べたことがあります。その結果おおよそ次のような関係が成り立つことがわかりました。(※単純なことなので私以外にもこのことに気付いた人はいると思います。)

 

400mの記録=(200mの記録+2秒)×2

 

例えば200mが25秒の選手の400mの記録は

 

(25+2)×2=54

 

から54秒であると予測できます。

 

 

また、400m、800m、1500mの各記録の相関関係はDanielsが"Daniels Running Formula"で報告しています。(Daniels,1998)

 

 

これらのデータを用いて、Danielsが作成した400m、800m、1500mの各記録の相関関係の表に200mの記録を追加したもの(表1)を作成しました。

 

表1からは以下の2つのことがわかります。

1.持久力とスピードのバランス

2.ある距離での目標記録を達成するために必要な他の距離での記録の目安
200,400,800,1500の相関

 例えば、800mで2分を切るためには、200m:25秒、400m:54秒、程度の記録が必要だと分かります。

 

 200mの記録改善は400mの記録改善に、400m記録改善は800mの記録改善に、800mの記録改善は1500mの記録改善に、1500mの記録改善は5000mの記録改善に、5000mの記録改善は10000mの記録改善へと繋がっていきます。この論法でいけば、長距離走者といえども、短い距離でのスプリント力の養成が重要だということになります。今、ネット上でアメリカのAlberto Salazarが指導するMohamed Farahや Galen Rupp(それぞれ、ロンドン五輪10000m金、銀メダリスト)のトレーニングが公開されていますが、彼らも長距離走者ながら短距離選手が行っているようなトレーニングを取り入れているようです。

これらのことから長距離走の記録が頭打ちになっている選手は、短い距離の記録を改善するようなトレーニングを行うことが勧められます。「短距離は短距離、長距離は長距離」と分けて考えるのではなく一つの「走り」として捉え、スピードと持久力をバランスよく引き上げることが大切だと思います。


憧れのゲブレシラシエに!

2012-02-26 22:17:43 | 日誌(練習日誌)

東京マラソンに行ってきました!

 

今日の最大の目当ては、ハイレ・ゲブシラシエ選手の走りをこの目で見ること!

そして、あわよくば会ってサインを頂こうかと色紙とペンの準備も。

中学校の頃から憧れだったゲブレシラシエ選手の走りを、生で見れるのはまたとないチャンス。ゲブレシラシエ選手の年齢からしても、日本で彼の走りが見れるのはこれが最初で最後かなと思いました。

 

 

友人と二人で10km、20km地点の日比谷で彼の走りを見ました。

   

(写真は友人が撮影。自分のデジカメではうまく撮れませんでした・・・・)

身長165cmのはずが、それ以上に大きく見えました。そして、とても軽そうに走っていました。

いつも、テレビでしか見れなかった走りが、目の前で見れて感激しました。

 

日比谷で観戦したあと、急いでゴールの東京ビッグサイトへ!

たのむ~ゴールに間に合ってくれ~

マラソンを観にきたのに、自分たちもマラソンしているんじゃないかと言えるくらい走りました。

 

ゴール地点につくと

??

トップがゲブレシラシエ選手じゃない・・・

35km地点を携帯電話のワンセグで見た時はトップを走っていたのに・・・

トップはケニアのキビエゴ選手!

そして2位は日本人の藤原新選手。ゲブレシラシエ選手の前を日本人が走る姿は初めて見ました。凄い!!

3位はケニアのキプロティッチ選手。


そして4番目に入ってきたのがゲブレシラシエ選手でした。

途中までは2時間5分台のペースだったのですが、記録は2時間8分17秒

日本人選手であればこの記録でも好記録ですが、ゲブレシラシエ選手にとっては不本意な結果だったと思います。

 

その後、ゴールした選手とどこで会えるのかいろいろな所をウロウロ

ビッグサイトの中は入れないし、警備員がたくさんいてゴールの向こう側には行けないし・・・

友人とあちこち歩きまわりました。

そして観客席の裏側にまわったら、ビッグサイトの出入り口を発見!そこを選手が出入りしていました。

 

そこで、待つこと2時間。ゲブレシラシエ選手はなかなか姿を現しません。

諦めて帰ろうかと思ったその時・・・・・

表彰式に向かおうとゲブレシラシエ選手が出てきたのです!

 

その時、私は大きな声で

「Haile~!」

と声をかけてみました。

すると・・・

  

こちらの呼びかけに応えてくれました!

やった~!友人と大喜びしました。

 

そして表彰式が終わり彼がこちらに戻ってきたとき、思い切って頼んでみました!

Haile!Could I have your autograph?(サインを頂けますか?)

すると・・・

やった~!友人と再び大喜びしました。

Thank you very much!!

 

すると、近くにいた女性もノートを差出して彼にサインをお願いしました。

でも、書くものがない!

 

そこで私は、

I can lend you this one (これ貸します)

ゲブレシラシエ選手にマジックを貸しました。

その後、わざわざマジックを返しに来てくれました。

 最後は握手をして別れました。

 

レースの結果は良くなかったのに、自分達のようなファンの要望に笑顔で応えてくれるところに皇帝ハイレ・ゲブレシラシエの偉大さを感じました。

今年1月ドバイマラソンで3人のエチオピア人が2時間4分台を記録している中、今日の記録では五輪代表にはなれないかもしれません。

しかし、春のマラソンできっと五輪代表に入れる記録を出してくれると私は信じています。

 

 

今日は中学時代から憧れだった選手に会えて感激しました。

私の心の中で、ハイレ・ゲブレシラシエは永遠のヒーローです!

 

思い出に残る一日となりました。

 

(写真は、すべて友人が撮ってくれたものです。綺麗な写真どうもありがとうございました。)

 

 

 


ランニング本

2012-02-25 10:53:59 | 陸上競技論

先日、書店で大発見がありました!


それはJack Danielsの著書"Daniels' Running Formula"の邦訳版がでていたこと。


邦訳版のタイトルは『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』。ついに出たか~という感じです。

この本は長距離走をやっている人には私が一押しする本の一つです。

この本の画期的なところは、あらゆるレベルのランナーにトレーニング時のペースがわかる表を提供してくれるところです。この表を見ると、ある種目の自己記録から予測される最大酸素摂取量、多種目の予測記録、最適なトレーニングのペースがわかるのです。


著者のDanielsはトレーニング時のペースの領域を5つに分類しています。


Easy Pace(イージーペース)

低速度のジョギングを行うときのペース

最大心拍数の65%~79%のペース


Marathon Pace(マラソンペース)

中速度のジョギング或いは、ペース走を行うときのペース

最大心拍数の80%~90%のペース


Threshold Pace(閾値ペース)

血中乳酸濃度が急激に増加する直前のペース

最大心拍数の88%~92%のペース


Interval Pace(インタバールペース)

インターバルトレーニングを行うときのペース

最大心拍数の98%~100% インターバルトレーニングを行うときのペース


Repetition Pace(レペティションペース)

レペティショントレーニングを行うときのペース


Danielsの表を見ると、それぞれの領域で具体的なペースがわかります。


例えば5000mの自己記録が14分55秒のランナーは


最大酸摂取量:70ml/kg/min


Easy Pace(イージーペース): 1000m 3分54秒

Marathon Pace(マラソンペース):1000m 3分23秒

Threshold Pace(閾値ペース):1000m 3分14秒

Interval Pace(インタバールペース):400m 71秒 1000m 2分59秒

Repetition Pace(レペティションペース):200m 32秒 400m 65秒 800m 2分10秒


となります。


トレーニングのメニューを考えるとき、私たちは目標タイムからトレーニングのペースを決めてしまいがちです。例えば5000mの目標タイムが14分59秒なら、1000m3分で5本など。しかし、それは合理的なやり方とは言えないでしょう。ランナーの現状からトレーニングのペースを決めるべきなのです。




ついでに今まで、私が読んだランニング関係の本でお勧めしたいものを紹介します。


中長距離走の基礎を学ぶ場合は以下の2冊をお勧めします

リディアードのランニング・バイブル [単行本]

アーサー リディアード (著), Arthur Lydiard (原著), 小松 美冬 (翻訳) 

リディアードのランニング・バイブル

中・高校生の中長距離走トレーニング [単行本]

ラリー グリーン (著), ルス パティ (著), Larry Greene (原著), Russ Pate (原著), 山西 哲郎 (翻訳), 有吉 正博 (翻訳), 豊岡 示朗 (翻訳) 

中・高校生の中長距離走トレーニング


より専門的に中長距離走を学ぶ場合はこれ!

800mのかつての世界記録保持者、セバスチャン・コーのMulti-Tier Trainingが学べます。

長い距離ばかり走っている長距離ランナーは読むといいと思います。

長距離ランナーといえども、短い距離のスピード練習を含むバランスのとれたトレーニングが必要です。

中長距離ランナーの科学的トレーニング

デビッド マーティン (著), ピーター コー (著), David E. Martin (原著), Peter N. Coe (原著), 征矢 英昭 (翻訳), 尾県 貢 (翻訳) 

中長距離ランナーの科学的トレーニング


走りすぎでスランプに陥ってるランナーには以下の2冊を勧めます。

長距離ランナーには、真面目な人が多いと思います。なぜなら、長距離走は他のスポーツと比べ、努力(練習での走行距離)が結果に結びつきやすい種目なので、真面目な努力家が多いのです。そして、そんな人ほど「努力(練習での苦しみ)=成果」という錯覚を見てしまいがちです。そこに落とし穴があります。

ランナーのメンタルトレーニング [単行本]

ジョー ヘンダーソン (著), Joe Henderson (原著), 渡植 理保 (翻訳), 山地 啓司 (翻訳) 

ランナーのメンタルトレーニング


スポーツのオーバートレーニング [単行本]

リチャード・B. クレイダー (著), メアリー・L. オトゥール (著), アンドリュー・C. フライ (著), Richard B. Kreider (原著), Mary L. O’Toole (原著), Andrew C. Fry (原著), 川原 貴 (翻訳), 辻 秀一 (翻訳), 河野 一郎 (翻訳) 

スポーツのオーバートレーニング


自己ベスト!?

2011-12-01 23:13:45 | 日誌(練習日誌)

自己ベスト・・・と言っても、陸上の記録ではありません。

英語の試験TOEICの記録です。

 

10月に受けた試験の結果、845点でした。

教員採用試験一次試験免除の900点まであと55点。でもここから900点までが難しいとよく聞きます。

初受験の点数が265点。よくここまできたもんだ~と自分で思います(笑)

初受験は今から7年も前の大学1年生の時。その時は英語に全く興味がなく、大学に無理やり受けさせられました。

学部時代は陸上に没頭し、英語なんてほとんど勉強しませんでした。

大学院入試のために中学レベルの英語から勉強開始。

それで、今英語の教員を目指そうなんて、高校時代、大学学部生時代は夢にも思いませんでした。

TOEIC の記録

2004年12月 265点

2008年5月  330点

2008年12月 440点

2009年3月  560点

2010年3月  630点

2010年7月  695点

2011年1月  760点

2011年10月 845点

 

言語の学習はスポーツと本当に良く似ています。もちろん最初は学校で習うような文法、つまり理屈を学ぶわけですが、そこからはトレーニングなんです。理屈ではなく、何度も同じ作業を反復するんです。具体的には、何度も同じ文章を、黙読する、音読する、書く、聞く、なんですね。これは学習と表現するより、トレーニングと表現した方がふさわしいと思います。

だから長距離走をやっている自分には合っているんだと思います。

今回、TOEICの対策をした際も、問題集にのっているTOEICのパート3、パート4(リスニングパート)のスクリプト100題くらいを全て30回ずつ音読しました。それが功を奏してリスニングパートの点数が跳ね上がり、460点を獲得しました。

最近は、インターネットで見れるゲブルセラシエやベケレのインタビューが理解できるようになったりして面白いです。

 

5000m14分台は達成できませんでしたが(これから達成したいけど・・・)、TOEIC900点、教員採用試験合格に向かって猛進中です!!