ロゴス古書

 年年歳歳 花相似たり
 歳歳年年 人同じからず 

賢治訪問の駒込林町について

2016年04月26日 | 地図

        

   

 宮澤賢治全集の「校本」「新校本」両全集に『十二月十八日(土)または二十日(月)本郷区駒込千駄木林町一五五番地に高村光太郎を訪う。』とあります。(校本601p)但し新校本327Pこちらは訪問したと推定としてある)
 堀尾さんにお会いした時に「この住所は勘違いでしょう」とお話をしたことがある(お病気であった晩年「賢治研究会」の会場でである)。その時には詳細は堀尾さんにお話しませんでしたが、上図地図にあるように『駒込千駄木町』か『駒込林町』とであって、「校本全集」にあるような『本郷区駒込千駄木林町』ではないのです。(本郷地区には当時「駒込」が頭につく地区が11あり) 
 千駄木小学校は駒込林町二十八番地ですが、明治四十八年四月に創設、大正八年校地を拡張、同九年一月増築。汐見小学校は駒込千駄木町二三二番地、こちらは大正十五年十二月に創設して、昭和二年四月から開校であった。地図の近くにある第八中学校は駒込林町一五三番地。本校は創設当初汐見小学校内に設置された。昭和24年現在地に当時に校地1367坪を買収、さらに263坪を拡張とある。
 地図は大変不鮮明で申し訳ありませんが、浜垣さんの「アトリエ 駒込(千駄木)林町二五番地」は「光太郎8歳からの駒込(千駄木)林町155番地」とは右隣り合わせの地内です。
 

賢治の「現象」と「無機化学」

2016年04月10日 | 自然科学

 

 

 

 恩田逸夫氏は「現象と本体との関係は、賢治の思想の基底となるもの」と角川の「日本近代文学大系(36)『春と修羅』補注で述べられていた。この「現象」について賢治との関連で多くの研究者の発言記述があります。哲学・なかでも現象学そして心理学等々,かぞいきれぬほどであり、なかにはメルロ・ポンティまで述べられてもいる本もあります。むろん恩田氏も「宮澤賢治における現象把握の構造」という,とてもだいじな論考があります。

 まえにもふれたことがあるのですが栗原敦氏が「池田がライプチヒ大学で師事したウィルヘルム・オストワルドの著書から賢治が得たものは決して少なくなかったらしいと言ったなら以外だろうか。盛岡高等農林学校の農芸化学科に学んだ賢治だから、化学は専門分野のひとつ・・・・・・」「夏目漱石ー浩々洞、オストワルド、ジェイムズなど」と記されてる(国文学第三十七巻10号・4年9月号)。ここで栗原氏がいわれている池田菊苗とはまえの写真でしめした「近世無機化学」の訳注者のことであるが、栗原氏は「開成館発行」のこの本にはふれられていなかったので、ここで表題だけでも紹介をしたい。この本は、明治三十七年に発行され、盛岡高等農林学校にも所蔵されていた著書であると思います。

 本論は、第一章から第四十四章 補訂 付録一・二 索引(1~40)です。第一章総論 化学的現象・経験・概念及び自然の定律・時間と空間・物体と物質・性質・均様なる物質及び混合物・性質律の精確の度・純粋なる物質と溶体・一種の物質を鑑識するに必要なる性質の数・帰納・物質の鑑識・色・態形・適用 以上が第一章です。

 現象を自然学諸部門の関連性や化学的現象の関連性などの要点を示されていて、後の章にも燃焼の現象なども記されている。現象・現像・抽象等にも注意深いこの著述は、賢治の「現象」思想形成の原鉱をみるおもいである。

 

 追記 写真 佐藤傳蔵著 地質学提要 (初版昭和三年一月十日訂正版) 発行所 中興館書店 


賢治の「書簡」を読んで

2016年04月02日 | 随想・日記

  

  

                 

 上記の写真は、明治の終わりころから大正時代の「高専」で使用されていた教科書の一部である。「改訂 肥料教科書」の持ち主氏は「肥料試験執行日・・何日」と表紙裏面に書き込みがあり、猛勉強の跡がみられる「教科書」である。「鉱物」の本には百頁少しの中に写真画像が120図も掲載されていて楽しく学べる教科書になっている。賢治がこれらの教科書で学んだとはいわないが、そのとうじのことがみえてくる感じである。

 これらの本をみながら、賢治の大正七年父にだされた「書簡」の一部(科学・化学関連)はどのような事情で書かれたのかを勘案するひつようがあるとわたくしは思う。「書簡」{68[6月9日]}にある「書籍」の内容を「賢治伝」に使用されることや、科学における賢治の世界観形成のことばに、書簡「67」「72」の記載語句をそのままつかわれるのはわたくしにはあまり賛成できない。(「書簡」{72}と{54}とをお読み願いたい)

 

 ★ 改訂土壌教科書佐々木祐太郎著(明治四十五年二月十日改訂四版)

 ★  宮澤賢治の地的世界  加藤碵一著  (2006年11月20日第1版)