林間教育通信(「東大式個別ゼミ」改め「シリウス英語個別塾」)

私立中高一貫校生徒を対象とする英語個別指導塾。小田急線の東林間駅(相模大野と中央林間の隣駅)から徒歩3分。

ハックルベリー・フィンの冒険

2010年08月04日 | 教養英語
英語長文を教えていたら、マーク・トゥエインの『トム・ソーヤー』の話が出てきた。ざっと背景や内容を生徒に説明してはみせたのだが、実は私自身は全く読んだことがないのだ。

そこで3年ほど前に購入した『ハックルベリー・フィンの冒険』をちょっと読んでみようかなと思った。岩波文庫の上下と、英語の原書の両方をもっている。が、さすがに訛った英語の小説を読む気にはなれないので、西田実訳の上を本棚から抜き出した。

この本を、普通の中高生に勧められるかどうかは分からない。だが、案外面白いのである。それに、読みやすい!

時は1830~40年代、つまり南北戦争以前の時代。場所は、アメリカ南部のシシッピー川沿いの近くの田舎町。要するに、西欧近代の華やかなるときの辺境の物語です。(余談ですが、この本を読んでいると、『アフリカ農場物語』(岩波文庫)を思い出しました。これは19世紀末期くらいの南アフリカ=イギリス植民地の白人農場の物語なのですが、英語圏の辺境という意味でかなり似通った性格があるように思えるのです。たとえば、飲んだくれとか、ペテン師とか、外部の権威にだまされやすいお人好しだとかです)。

当時は、どうやら、アメリカで読み書き能力が普及し始めた時代のようです。ハックは学校に行ったので読み書きができる。だが、アル中のとうちゃんたちの世代は出来ないのです。

同時に、書物や聖書が、特別な輝きとオーラを持っていた時代だということが窺われます。驚いたことに田舎町の庶民の子供たちが『ドンキ・ホーテ』やら『アラビアンナイト』らしき作品を言及するのです。

しかし、ハックの選択はユニークでした。読み書きを重視する押しつけがましい近代文明からも、「とうちゃん」に代表される旧い世間からも、どちらからも逃げ出そうとするからです。(なお、近代アメリカであれ、前近代的アメリカであれ、どちらも奴隷制と共存していたことが非常に興味深いとえます)。

前近代も近代もともに相対化する視点がハックルベリーフィンんはあったんですね。ぜひとも、全部すぐ読まなくちゃいけないなと思った次第です。機会があればまた書くつもりです。

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