林間教育通信(「東大式個別ゼミ」改め「シリウス英語個別塾」)

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西きょうじの誤訳? または双子受胎の謎

2009年11月16日 | 英語学習
西きょうじは大変優れた英語の参考書を何冊も書いている。『英文速読のナビゲーター』(研究社)もその一つだ。だが、よくよくみると誤訳かもしれない!?ものを発見!したので、ちょっと書いておきます。

全3編のうちの第2編Chapter2 「双子をつくるには」です。40頁ないしは、別冊で6頁の所です。

"It could be argued against this that it is differences in climate rather than in racial factors that cause the cultural variations but the evidence is against this.”

これは仮主語itの構文と、強調構文(分裂文)とが埋め込まれている大変難しい文章なのです。西は次のように訳しています。

「文化的差異を生じさせるのは、人種的要員の差異よりはむしろ気候の差異であると論じることができるだろうが、これに反する証拠がある」(42頁、別冊では9および13頁)。

有名英語講師の西先生の本ですから、もちろん構文読解等のミスはありません。しかし、「文化的差異」すなわち"the cultural variations”については、うーん、ちょっと異議ありです。

"the cultural variations”というのは前の文章を読んでみると、欧州、アメリカ合州国、日本、アフリカ等における双子の出生率の差異のことを指しているようです。したがってこの文章では、双子の出生率の差異をもたらしたのは、気候ではなく人種の違いであるということが述べられているわけです。

さて、ここで問題です。双子の出生率の差異を文化の違いと表現している点です。「文化」とか"culture"というのは、そういった生物学的な領域まで射程に入れていないはずだからです。(大学でこういった分野を研究するならば、すくなくとも文化人類学や人口学(社会学)は絶対に勧めない。むしろ医学部あるいは理学部の人類学(人類生態学とか)であろう。なお東大付属中等教育学校は双子を優先的に受け入れる学校として知られていますが、双子の産み方はおそらく絶対に研究していません!)。

私もcultureを様々な辞書で調べてみました。というのは、Cultureのオランダ語(たしかKulturだったか。正確には覚えていない)には「栽培」という意味があることを知っていたからです。(旧オランダ領インドの「強制栽培制度」は英語では"culture system"という)。

英語のcultureには、やはり、植物の「栽培」という意味がありました。さらには、バクテリア等の「培養」という意味も! 受精卵の形成の状況において、それが双子へと成長していくのか否かというテーマならば、むしろ、この「培養」の語義を採るべきではないでしょうか? ああ、しかし、人間の出産がテーマなのにバクテリア?! (←どの辞書を引いてもバクテリアの事例しか載っていなかった)


結論的に"the cultural variations”の訳は、「双子培養(OR 受胎)率の差異」ということなのか? 正直に言って私はそれほど自信があるわけではありません。ただ、こちらのほうが理屈は通っています。暫定的にこの説を採ることにしましょう。

もし、ヨーロッパとアフリカとは双子の出生率が異なるよ、「クニが異なると双子の出生率も異なるんだよ」みたいな軽い感覚で書き手(≠西きょうじ)が書いたのだとしたら、気持ちは分かります。しかし、それならば、"the cultural variations"ではなく、"the geographical variations"「地理的差異」と表現すべきだったでしょう。またそのほうが、本文中の「双子・熱帯気候説」ともよく馴染むはずです。(←西も、そういう解説をすべきだったのだ)


残念ながら、この文章のオリジナルテキストはネットでは検索できませんでした。たぶん理系エッセイストだと思うのですが。。。真意は不明のままです。

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長々とあんまり面白くないテーマについて書いてしまいました。でも英文解釈をしていると、一つひとつの言葉の意味で躓いたり困ったりするのです。その記録まで。(誰か分かる人がいたら教えてください)

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4 コメント

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cultural (Oza)
2011-03-06 04:57:19
僕は、大学四年生で、半年ぐらい真剣に英語を独学しています。(文法用語はよくわかりません。)

それで、エントリーの中でカッコがついている部分は、

人種の違いというよりも、気候の違いが原因なんでしょ?っていうことが言いたい事です。それで、

「differences in racial factors that cause the cultural variations」 なぜここでracial factors にわざわざ that つけてるかっていったら、真意はわからないですけど、僕が思うに、書いた人は、「人種差別の意図は毛頭ないよ」って強調したかったんじゃないですかね。

ようは、「ここでいう人種とは、文化の違いを生むもののことです。」っていうようなことを言ってます。

ま、とにかく、この文のculturalは、普通に、「文化的」とかに訳せば十分です。
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re:culture (rinkaan)
2011-03-06 23:01:39
>「differences in racial factors that cause the cultural variations」 なぜここでracial factors にわざわざ that つけてるかっていったら、真意はわからないですけど、僕が思うに、書いた人は、「人種差別の意図は毛頭ないよ」って強調したかったんじゃないですかね。

申し訳ないですが、書いてあることの意味がよくわかりませんでした。

上のthatについていえば、ある意味では関係代名詞の主格のthatですし、もっと広い範囲でみてみると強調構文のit...thatのthatですよね。つまり、it is differencesのitとthatですね。

>「ここでいう人種とは、文化の違いを生むもののことです。」

全文を読んでいただけるとおわかりになると思うのですが、文化人類学的な意味での「文化の違い」はテーマではありません。あくまでも出生率です。だから「文化の違い」が論じられる必要はないのではないでしょうか。

また、人種による肉体的生理的差異を論じたとしても、人種差別主義になるとは思えないのです。人種による身長差、体重差などを論じることは容易だし、決して差別には当たらないでしょうからね。
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つづき (Oza)
2011-03-08 16:00:31
本文中で、「ここがメインテーマ」とマークされているところは、日本語にすれば、「人種的な背景が、双子の生まれる確率を決定ているようにも考えられる」ということです。

がしかし、これにたいしてこう反証する人もいるだろう、として紹介されているのが以下の文で、
"It could be argued against this that it is differences in climate rather than in racial factors that cause the cultural variations.”

以下の西先生の訳は100%誤訳です。
「文化的差異を生じさせるのは、人種的y要因の差異よりはむしろ気候の差異であると論じることができる」

この人は、"that cause the cultural variations"のthatが指しているものがit is differencesのitだと解釈しており、それが間違いです。thatはただ単にracial factorsを説明しているだけです。

で、itが本当に意味しているのは、直前に述べられた、"the thing which plays a part in determining how likely a mother is to have twin babies"です。
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新たに記事にしました (rinkaan)
2011-03-10 00:20:46
ozさん、ここではコメントせず、あらたに記事にしておきました。どうぞよろしく。
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