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Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

Conjure One / "EXILARCH"

2010-11-14 11:05:48 | delerium
Exilarch



□ Conjure One / "Exilarch"

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>I Dream In Colour
Zephyr

Release Date; 09/Nov./2010
Label; Nettwerk
Cat.No.; 30907-2
Format: 1xCD

>> http://www.conjureone.com/

>> tracklisting.

01. LIKE ICE  (ft. Jaren Cerf)
02. PLACES THAT DON'T EXIST
03. ZEPHYR  (ft. Jaren Cerf)
04. NARGIS  (ft. Azam Ali)
05. NOMADIC CODE
06. THE DISTANCE  (ft. Jaren Cerf)
07. I DREAM IN COLOUR  (ft. Leah Randi)
08. EXISTENTIAL EXILE  (ft. Leah Randi)
09. RUN FOR COVER  (ft. Free Dominguez)
10. OLIGARCH

"Nomadic Code" contains elements of "Chuma Che Nledi Nkwigaila"
from the recording Tanzania Instrumentals.



Produced, mixed and programmed by Rhys Fulber
Multitrack mastering, additional engineering, and mixing on track 1 by Greg Reely
Master assembled by Craig Waddell


Bass guitar and backing vocals by Leah Randi
Additional keyboards by Jamie Muhoberac
Guitars by Emerson Swinford
Strings arranged by Chris Elliott and Performed by Wiredstrings
Cello on track 1 by Mark Jowett
Additional drum loop on track 10 by Daniel Myer
Technical support by Frank Verschuuren, Glen Reely, Rick Smith and Jaroslaw Baron
Recorded at Surplus Sound, Los Angels, and British Grove Studios, London


Art and design by Michal Karcz
Conjure One logo by John Rummen




"This isn't a place, this isn't a hunger
this is a state of mind, a state of wonder."

         -from the lyrcis of "The Distance"



FLAやDeleriumの中核でもあったRhys Fulberの、Conjure One名義による5年ぶりのリリースとなる3rd Album。New Age / Electronicaというジャンルに一つの金字塔を築き上げた、『エスノ』と『テクノロジー』が交錯する近未来のシャーマニズムとポップネスを、今作でも追求している。


ここ数年はBill Leebからも離れがちで、C1としてのライブやプロデュース業に専念することも多くなったRhys Fulber。北米・アメリカだけでなく、ヨーロッパ・ロシア圏においてもチケットを完売し、その人気は本家FLAも凌ぐほどのものとなっている。(今もFLAとの合同ライブが行われている)


中東~アジアの民族楽器や宗教歌を使用した汎地球的サウンドを演出する、気宇壮大なオーケストラやシンセサイザー。そこに時間軸を刻むように敷き詰められた先鋭的なエレクトロビートによって、フューチャリスティックなパノラマを拓いていく。


C1のサウンドが世界中で支持されている理由は、ポップネスを希求するDeleriumでは満たされない、そしてDelerium自身が且つて持ち合わせていた、ダークなエレクトロニクサウンドから得られる、呪術的・瞑想的なトリップ感覚を未だ進化させ続けている処にあるのかもしれない。



とはいえ、C1自体が2nd "Extraordinary Ways"で打ち出した、生ドラム主体のシューゲイズ風エレクトロ・ポップ路線は、そのエスノ・サウンドをしっかりと念頭には置きながらも、ロック・ミュージックにルーツを辿るようなバンド・サウンドへの回帰によって、2000年代中期のテクノ界隈における時流に乗った、極めて当世的作風と言えた。

今回、2ndのロック・テイストを払拭しながらも、1st "Conjure One"のワールドビート/トリップ・ホップ路線に戻ったかといえば、単にそうではないという印象も受けざるを得ない。




"Exilarch"・・・『流浪民の長』や『捕囚民を導く者』という、バビロニア史において用いられることの多い専門用語ではあるが、このアルバムにおいてはもっと抽象的な意味合いで使われているようである。以下に"The Distance"の歌詞を引用する。

そこは何処にもない場所、しがみついてはいられない。
 これは心の映し出すもの、不可思議の地。


対して、アルバムを締めくくるトラックには、"Oligarch (独裁支配)"という語が当てられている他、"Nomadic Code(流浪の戒律)"、"Existential Exile"や"Run For Cover"といったタイトルから連想されるように、楽曲や歌詞のテーマには一連したコンセプトが存在するようである。




90年代のニューエイジ・スピリチュアル音楽のジャンル確立以降、EnigmaやDeleriumといったアンビエント・ポップの表現傾向において、『Ethereal』という語が多く用いられるようになった。それらの音楽に共通するものとして、民族音楽や聖歌といった「伝統音楽」と「ポップネス」という、一見対極にあるもの同士の融合が第一に挙げられるが、それは逆から捉えると、現代において民族音楽や宗教歌の要素だけではリーチできない感覚を、エレクトロな音色と構成によって補完し、リスナーに訴求していると言っていいのかもしれない。


もちろん、70-80年代から以前にもそういった音楽はあっただろうが、マイナーカテゴリとはいえ、今ほど多くの、そして世界各地の人々に希求されるジャンルに成長するには、90年代のマーケット成熟期と、2000年以降のネット拡大期を経由しなければならなかっただろう。



"Ethereal pop"というカテゴリにおいて、その世界観や作曲センスと並んで最たる評価の基準となるのが『音の最先端さ』である。シンセサイザーやエンジニアリングのアップデートが重要視されるのは然ることながら、表面的にはビート・プログラミングの目新しさ・差異に簡約されることが多い。

もっとも、その大部分が手作りというよりも、最新のソフトシンセを用いたものであることも珍しくはなく、この"Exilarch"においても、パーケッジされたビートや効果音のサンプリング傾向が強く聴かれる。



要するに『神秘性』と『テクノロジー』の融合した音楽が、人を惹き付けてやまないシャーマニズムの源流から現代に至る、ストーリーテリングの一つの究極の表現方法であることは間違いない。この観点には、音楽史の系譜以上に『映画』という映像文化を含めて考える必要があるかもしれない。事実、Conjure Oneにとって『シネマティックなストリングス』は必要不可欠な語り口の要素である。




随分勿体ぶって書いたが、"Exilarch"は2010年に至って最先端のアップデートを施された、"Ethereal Music"のArch(第一級)的作品であることは間違いない。同ジャンルにおいて、他に類を見ないほど壮大なスケールで描かれたアルバムであり、90年代末期のテクノを彷彿とさせるダークなサウンドに一巡して、更に輪をかけて叙述性を磨き上げた音楽世界が、そこに展開されている。



Groove ArmadaやOrbital、808 Stateなどに代表される90年代のテクノシーンに共通するメソッドは、当時のFLAが使い分けていた数名義でも聴かれていて、特にアンビエント傾向の強いIntermixやSynaesthesiaでは顕著であった。

"Exilarch"のビート・コンストラクションは極めてドープかつミニマリスティックなもので、2ndの路線を踏襲し、生ドラムを主体に据えたのは"Run For Cover"の一曲のみ。キックが弱い分、ウワモノやサンプリングを豊富に散りばめ、多彩な音色と浮遊感を演出している。


Rhysの妻、Leah Randiの沈降するベースワークが主張して、全体的に深く重みのあるサウンドに響いているのも、その配剤の活きた結果であろう。今作のハイライト・トラックであり、(同様に90年代後期のMassive Attackに近い)"I Dream In Colour"が、彼女の低音の歌声がリードする魅惑のコンテンポラリーになっているのも、アルバム・コンセプトの中心的な狙いかもしれない。


また、今作の扱うテーマの軸となる"Like Ice"、"I Dream In Colour"の歌詞は、前作に引き続きNettwerkの契約ライター、Peter Wrightが共同作詞を手掛けたが、その内容も、どちらかというと内省的だった今までの歌詞と比べ、ダークかつ力強いメッセージを投げかけるものとなっている。


"Like Ice"の歌詞では、"her"で表現される『女性的存在』に魂を奪われ「虚仮」の囚われとなる心情を、"I Dream In Colour"は「実在を感受する」ことの意味を問う内容で、そのテーマは、心の拠りどころを精神の内に希う"The Distance"や、劇的な変化を受け入れろと呼びかける"Run For Cover"でも歌われている。



それぞれの物語を歌で綴るヴォーカリストについては、現在クラブ系シンガーとして数々のトラックにフィーチャーされているJaren Cerf、ベーシストのLeah Randi、インダストリアルシーンとは縁も長いFree Dominguezが参加。そしてイラン出身のエスニックシンガー、Azam Aliが、Conjure Oneのシンボル的素材といえる中東の祈祷音楽風唱歌をアピールしている。

"Places That Don't Exist"や"Existential Exile"のように、ノンクレジットでサンプリングされている民族音楽も数多いが、"Nomadic Code"にはタンザニアの土着音楽演奏を取材したライセンス音源がフィーチャーされている。


今回、前2作を通して起用されていたPoe(Jane)やChemdaの姿は無いものの、Poeの作品にギタリストとして参加していたEmerson Swinfordが採用されている。



1st "Conjure One"における、Chris Elliotの重厚ながら定型的なオーケストラ・アレンジと比べて、"Exilarch"のストリングスワークはもっと儚く、悲壮に満ちた音色を奏でている。やはり映画的、特にEric Serraのそれに類似していると言っても良い。

"Like Ice"冒頭、Mark Jowettの演奏するチェロのフラジャイルなモチーフは、"Oligarch"の強烈で力強い主旋律として再び回帰する。このオーケストラ演奏は、UKで最も人気の高いストリングスグループ、Wired Stringsが手掛けた。




実在しない何処かへの旅、異国の幻影。平穏と安住の地を求め流浪する民を、このテクノロジー主導の時代、さまよえる現代人の心情に準えていることは想像に難くないが、そのようなテーマをこれほど克明に、そして当世的なサウンドに描き出したアルバムは稀であろう。未来的なサウンドとは、その楽曲自身に、未来を志向した天上的視野を付与するからである。

1st Album "Conjure One"が熱砂を這う人々の旅路を描いたものだとしたら、"Exilarch"が見上げているのは大いなる宙、縦の空間軸にあるのかもしれない。


真性と夢を結びつける「音楽」というものの役割において、人の歌声も器楽音も、そして太古よりの本能の呼び声も、それぞれが渾然一体となって「同じ何か」に向かって呼び交わそうとしている。それは遠い日の故郷なのかもしれないし、まだ見ぬ理想郷なのかもしれない。或は、同じ音楽と時間を共有しているあなた??????。



流浪の寂寥感と儚い美しさを見事に体現した、Michael Karczのアートワークも素晴しい。寒々しいが、儚く煌めいて心囚われずにはいられない光景。その刹那に誰もが理解するのだ。私たちの旅に帰るべきところはない、記憶に刻まれた光の一つ一つが途方もない道、私たちの魂の根源を辿る足跡であることを。


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"I Dream In Colour"
(R. Fulber, P. Wright, C. Elliot)

I look at the river but i'm thinking of the sea
the past overwritten by what I hope to be
I search for the essence it's my command
that is the centre it's what i demand
in my mind i'm standing in a glass house
looking below

don't wanna look without seeing
don't wanna touch without feeling

I dream in colour
yes I dream in colour
when the world's in black and sepia tone
or in sleepy monochrome
I dream in colour
yes I dream in colour
I see much further than this
I see much further than this
yeah

in a room with no windowsand pointed doors
what once was my ceiling now is the floor
my landscape is changing from out of the dust
it's some kind of healing like the sun's coming up
in my mind i'm standing in a glass house
looking below

don't wanna hear without listening
don't wanna talk without speaking

I dream in colour
yes I dream in colour
when the world's in black and sepia tone
or in sleepy monochrome
I dream in colour
yes I dream in colour
I see much further than this
I see much further than this

I can see through the clouds of grey
got a window on the world
I can sweep them all away
got a window on the world

don't wanna look without seeing
don't wanna touch without feeling

I dream in colour
yes I dream in colour
when the world's in black and sepia tone
or in sleepy monochrome
I dream in colour
yes I dream in colour
I see much further than this
there's go to be more than this, yeah
I dream in colour
I dream in colour
when the world's in black and sepia tone
or in sleepy monochrome
I dream in colour
I dream in colour yeah
I dream in colour
I dream in colour



白昼夢

たゆたう川に
大海を望んで
上書きされた過去
希いのままに
実体への渇き
それは私への戒め
本質が欲しい
それだけのこと
心を覘いて
ほら ガラス張りの家
佇む私が見える?

視えないのなら 何も目にしたくない
感じられないのなら 何も触れたくない

白昼夢
そう 夢を見ている
世界が暗くセピアに覆われて
モノクロームの眠りに沈もうと
白昼夢
そう 夢の中
もっと遥かな先が見える
もっと遠くの未来がわかる
yeah


窓のない部屋 
ドアがたった一つ
かつて塗り付けた天井が
今は床になった
塵を払うように
見慣れた光景が溶けていく
そうして浄化されていくのね
まるで日が昇るみたいに
心の中
ガラスの家に佇む私
覗き込んで

聴こえないのなら 何も耳にしたくない
話せないのなら 何も喋りたくない

白昼夢
そう 夢を見ている
世界が暗くセピアに覆われて
モノクロームの眠りに沈もうと
白昼夢
そう 夢の中
もっと遥かな先が見える
もっと遠くの未来がわかる

灰色の雲を透かして 何もかも見えるわ
世界中に窓を張り巡らして
そんなもの吹き払ってやるのよ
世界中に窓を張り巡らして

見るのなら視えるように
触れるのなら感じられるように

白昼夢
そう 夢を見ている
世界が暗くセピアに覆われて
モノクロームの眠りに沈もうと
白昼夢
そう 夢の中
もっと遥かな先が見える
そこにはもっと何かがあるはずだから
白昼夢
この夢の中
世界が暗くセピアに覆われて
モノクロームの眠りに沈もうとも
夢を見ている
そう これは夢
もう夢の中