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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

山下俊一福島県立医大副学長と福島県の県民健康管理調査の闇 秘密会議ですり合わせ 県民はモルモット

2012年10月03日 | 福島原発事故

(秘密会のため福島県庁を訪れた検討委員会のメンバーら=2012年9月11日午後1時過ぎ、毎日新聞 武本光政撮影)

 

 

 福島県では、「東日本大震災やその後の東京電力福島第1原子力発電所事故により、多くの県民が健康に不安を抱えている状況を踏まえ、長期にわたり県民のみなさまの健康を見守り、将来にわたる健康増進につなぐことを目的」として、「県民健康管理調査」を実施しています。

 こ「県民健康管理調査」の検討委員会(座長・山下俊一福島県立医大副学長)が2012年9月11日開かれ、事故発生当時18歳以下を対象とした甲状腺検査について、1人が甲状腺がんと報告されました。なお、甲状腺検査の対象は約36万人で、これまで結果が判明したのは約8万人ということです。

 ところが、この検討委員会が開催される事前に、冒頭の画像のように、県が委員らを集め秘密裏に「準備会」を開いていたことが発覚しました。

 しかも、この準備会と言う名の秘密会議は県民調査が始まったときから行われており、もう1年半になるというのです!

 そもそも、検討委は2011年5月に設置され、山下俊一・福島県立医大副学長を座長に、広島大などの放射線医学の専門家や県立医大の教授、国の担当者らオブザーバーも含め、現在は計19人で構成され、県からの委託で県立医大が実施している健康管理調査について、専門的見地から助言するとされています。これまで計8回開催されており、当初を除いて公開し、議事録も開示されています。

 ところが、事務局を務める県保健福祉部の担当者の呼びかけで、検討委の約1週間前か当日の直前に委員が集まり非公開の準備会を開催し、会場は検討委とは別で配布した資料を回収し議事録も残さず、存在自体を隠していたというのです。

 しかも、福島県の8万人の子どもの甲状腺検査で初めて1人が甲状腺がんと診断されたことが2012年9月11日、検討委で報告され、同大で甲状腺担当の鈴木真一教授は福島原発事故との因果関係を否定したのですが、この秘密会で、調査結果に対する見解をすり合わせ、

「がん発生と原発事故に因果関係はない」

ことなどを共通認識とした上で、本会合の検討委でのやりとりを事前に打ち合わせていたというのです。それじゃあ、検討にならないでしょう!?

 そしてもちろん出席者には準備会の存在を外部に漏らさぬよう口止めもしていました。

(秘密会を終え、検討委員会の会場に向かう委員会メンバーら=福島市杉妻町で2012年9月11日午後1時55分ごろ、毎日新聞 武本光政撮影)



 もともと、100ミリシーベルト以下の被ばくでは健康被害は絶対に起こらない、と原発安全神話を吹聴し、「Mr.100mSv」の異名をとる山下俊一長崎大学大学院教授を福島県が県立医大副学長やこの検討委の座長に着いたとき、多くの市民が不安を抱きました。

 なぜなら、山下副学長は、2011年3月に福島県の「放射線リスク管理アドバイザー」に就任後、

「マスクをしたまま生活する事は、ストレスを強める事になるので、マスクをつけることはやめよう。」
「子どもも外で遊ばせないとストレスがたまる。一時間100μシーベルトまでは、外で積極的に遊ばせよう。」

と言ってきた人だったからです。

 私はこの福島健康管理調査が、「健康不安の解消」のためとされており、治療のためとはなっていないことから、アメリカ占領軍の作ったABCCが始め、放射能影響研究所に受け継がれた「12万人の被爆者寿命調査」の二の舞になるのではないかと危惧していました。

 つまり、福島の子供たちはモルモットにされるのではないかと。現に、山下副学長は県民健康管理調査の対象となった子どもたちを、ドイツでの講演で「被験者」と呼んでいます(怒)。

 そもそも、ICRPでさえ、100ミリシーベルト以下の被ばくによる発がんリスクがあるかないかわからないと言っているのであって、山下副学長のように「ない」と言い切るまともな研究者はいません(原発推進派評論家の池田信夫のような人は言い切ってしまいますが)。彼はれっきとした原子力ムラの一員なのです。

 そして、ICRPの放射線「安全」基準に多くの問題があることは、日本の原爆症集団認定訴訟で何度も指摘されてきたところです。

年間100ミリシーベルト以下の放射線の発がんリスクが高いことは原爆症認定訴訟の判決で決着がついている

(田中龍一ジャーナル 【福島県健康調査】 山下副学長のおふれ 「カルテ見せず」「再検査2年後」 より)

 

 

 福島県の調査について、調査を受けた人自身が自分のデータを取得しようとしても、なんと個人情報開示請求が必要であるという手続きにされています。

 さらに、恐ろしいことに、山下副学長からはから甲状腺学会の全医師あてに、二次検査=セカンドオピニオンを出さないようにさせる上の画像のような要請書が回っています。そこには

「保護者からの問い合わせがあっても次回検査まで追加検査の必要はないことを充分に説明するよう」

と書いてあります。福島県民の診察を受ける権利が侵害されているのです。

 しかも、検討委員会の背後には秘密会があるのです。どんだけ秘密主義なんですか。

 かつて、チェルノブイリの原発事故について、原発推進機関であるIAEAが情報を独占し、放射線被爆でなくなったのは数十人だとか、ストレスの方が体に悪いとか、とんでもない情報を流しまくってきました。福島原発事故以降もしょっちゅうその情報がマスメディアから流され、それが、今に至るまで放射線被害の矮小化につながっているのです。

 山下副学長自身、

「10年間チェルノブイリ事故の被災地にいて、たくさんの人たちをみたが、小児甲状腺がんが増加した以外の健康被害はなく、小児甲状腺がんは発見できれば治療が困難ではない病気だ。
放射線の害は、ニコニコ笑っている人のところには来ない。クヨクヨしている人のところに来る。それは動物実験で証明されている。
放射性物質の害は、ストレスの害よりもずっと小さい。」
 
などと、チェルノブイリ安全放言を続けてきたのです。

 福島県県民健康管理調査で、18歳以下の子供を対象に行われた甲状腺検査では、38,114人の段階で386人の子供に結節(しこり)が認められたが、5ミリを超 えない場合は、すぐには次の検査を受けることができず、次の検査は2年後。20ミリ以下の嚢胞(のうほう)も同様の扱いです。また、いわき市などはそもそも調査してもらっていません。これでは、福島県民が健康になることにちっとも役立たないではないですか。

 福島での痛ましい経験が、また次の放射線矮小化に使われ、かたや、福島県民はモルモット扱いという事態だけは、断じて許されません。

 この際、山下座長は健康管理調査の座長から解任し、調査の目的は福島県民の治療とし、あらゆる情報を公開するように徹底したメスを入れるべきです。

福島原発 内部被曝の恐怖21 学校の子ども 放射線年間20ミリシーベルト 「安全」と安心は違う

 

 

山下氏を県立医大の副学長に招へいする福島県が信じられません。

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毎日新聞 2012年10月03日 02時30分(最終更新 10月03日 05時14分)

秘密会のため福島県庁を訪れた検討委員会のメンバーら=2012年9月11日午後1時過ぎ、武本光政撮影
秘密会のため福島県庁を訪れた検討委員会のメンバーら=2012年9月11日午後1時過ぎ、武本光政撮影

 東京電力福島第1原発事故を受けた福島県の県民健康管理調査について専門家が意見を交わす検討委員会 で、事前に見解をすり合わせる「秘密会」の存在が明らかになった。昨年5月の検討委発足に伴い約1年半にわたり開かれた秘密会は、別会場で開いて配布資料 は回収し、出席者に県が口止めするほど「保秘」を徹底。県の担当者は調査結果が事前にマスコミに漏れるのを防ぐことも目的の一つだと認めた。信頼を得るた めの情報公開とほど遠い姿勢に識者から批判の声が上がった。【日野行介、武本光政】

 9月11日午後1時過ぎ。福島県庁西庁舎7階の一室に、検討委のメンバーが相次いで入った。「本番(の検討委)は2時からです。今日の議題は甲状腺です」。司会役が切り出した。委員らの手元には、検討委で傍聴者らにも配布されることになる資料が配られた。

約30分の秘密会が終わると、県職員は「資料は置いて三々五々(検討委の)会場に向かってください」と要請。事前の「調整」が発覚するのを懸念する 様子をうかがわせた。次々と部屋を後にする委員たち。「バラバラの方がいいかな」。談笑しながら1階に向かうエレベーターに乗り込み、検討委の会場である 福島市内の公共施設に歩いて向かった。

 県や委員らはこうした秘密会を「準備会」と呼ぶ。関係者によると、昨年7月24日の第3回検討委までは 約1週間前に、その後は検討委当日の直前に開かれ、約2時間に及ぶことも。第3回検討委に伴う秘密会(昨年7月17日)は会場を直前に変更し、JR福島駅 前のホテルで開催。県側は委員らに「他言なさらないように」と口止めしていた。

 ◇「今後はやめる」

 秘密会の日程調整などを取り仕切っていた福島県保健福祉部の担当者との主なやり取りは次の通り。

 −−検討委の会合ごとに秘密の準備会を開いていなかったか。

 記憶にない。

 −−昨年7月、秘密会の会場を急きょ変更し、口止めを図ったことはないか。

 ……覚えていない。

−−検討委の約1週間前に委員を呼び出したり、検討委と別に会場を設けたりしていなかったか。

 ……確認のため時間をください。

 <約1時間中断>

 −−確認できたか。

 指摘の通りの事実があった。毎回準備会を開催していた。

 −−調査結果や進行についてあらかじめ話し合っていたのか。

 事前に調査結果を説明し、委員に理解してもらったうえで臨んでほしかった。事前に調査結果を配りたいが、それができない。

 −−マスコミに漏れるからか?

 それもある。

 −−なぜ隠していたのか。

 隠していたつもりはないが、積極的に知らせるのは避けた。ナーバスになっていた。

 −−県民に不安を与えないように検討委を進めたかったのか。

 それはあった。秘密会合と言われても否定できず、反省している。こうした準備会は(今後)開催しない。

 

毎日新聞 2012年10月03日 02時31分(最終更新 10月03日 05時12分)

秘密会を終え、検討委員会の会場に向かう委員会メンバーら=福島市杉妻町で2012年9月11日午後1時55分ごろ、武本光政撮影
秘密会を終え、検討委員会の会場に向かう委員会メンバーら=福島市杉妻町で2012年9月11日午後1時55分ごろ、武本光政撮影

 東京電力福島第1原発事故を受けて福島県が実施中の県民健康管理調査について専門家が議論する検討委員 会を巡り、県が委員らを事前に集め秘密裏に「準備会」を開いていたことが分かった。準備会では調査結果に対する見解をすり合わせ「がん発生と原発事故に因 果関係はない」ことなどを共通認識とした上で、本会合の検討委でのやりとりを事前に打ち合わせていた。出席者には準備会の存在を外部に漏らさぬよう口止め もしていた。

 県は、検討委での混乱を避け県民に不安を与えないためだったとしているが、毎日新聞の取材に不適切さを認め、今後開催しない方針を示した。

 検討委は昨年5月に設置。山下俊一・福島県立医大副学長を座長に、広島大などの放射線医学の専門家や県 立医大の教授、国の担当者らオブザーバーも含め、現在は計19人で構成されている。県からの委託で県立医大が実施している健康管理調査について、専門的見 地から助言する。これまで計8回あり、当初を除いて公開し、議事録も開示されている。

 しかし、関係者によると、事務局を務める県保健福祉部の担当者の呼びかけで、検討委の約1週間前か当日の直前に委員が集まり非公開の準備会を開催。会場は検討委とは別で配布した資料を回収し議事録も残さず、存在自体を隠していた。

 9月11日に福島市内の公共施設で開いた第8回検討委の直前にも県庁内で準備会を開いていた。同日は健 康管理調査の一環である子供の甲状腺検査で甲状腺がん患者が初めて確認されたことを受け、委員らは「原発事故とがん発生の因果関係があるとは思われない」 などの見解を確認。その上で、検討委で委員が事故との関係をあえて質問し、調査を担当した県立医大がそれに答えるという「シナリオ」も話し合った。

 実際、検討委では委員の一人が因果関係を質問。県立医大教授が旧ソ連チェルノブイリ原発事故で甲状腺がんの患者が増加したのは事故から4年後以降だったことを踏まえ因果関係を否定、委員からも異論は出なかった。

 また、昨年7月の第3回検討委に伴って開かれた準備会では、県側が委員らに「他言なさらないように」と口止めもしていた。

 毎日新聞の取材に、県保健福祉部の担当者は準備会の存在を認めた上で「あらかじめ意見を聞き本会合をスムーズに進めたかった。秘密会合と言われても否定できず、反省している。(今後は)開催しない」と述べた。

 福島県の県民健康管理調査は全県民を対象に原発事故後の健康状態を調べる。30年にわたり継続する方針で、費用は国と東電が出資した基金で賄う。【日野行介、武本光政】

 

2012年8月19日付けドイツ・シュピーゲル誌記事全訳

福島事故の余波 
「住民は放射能恐怖症にかかっている」 

山下俊一は放射線の影響を研究する分野において日本を代表する科学者の一人だ。山下は『シュピーゲル』紙とのインタビューで、福島第一原発周辺の住民に放射線被曝の潜在的危険性を伝える仕事について語った。多くの住民が重度の放射能恐怖症にかかっていると山下は話す。 

低線量放射線被曝は人体にどれくらい害を及ぼすのか。この問題については科学者のあいだで熱い議論が戦わされている。しかし、原発周辺の住民にその議論の詳細まで説明するには、今はいい時期とはいえない。住民は今まさに放射線の危険と背中合わせで暮らしているからだ。 

山下俊一は放射線防護の専門家で59歳。放射線の影響を解明するうえで多大な貢献をしてきた。長崎の被爆者や、1986年のチェルノブイリ原発事故の影響を研究し、チェルノブイリについては日本の科学調査団の一員として現地を100回近く訪問している。山下が今調べているのは福島における大事故の影響だ。ところが、山下の仕事は地元住民の強い反発を買っている。 

『シュピーゲル』は山下にインタビューし、福島で予想される被曝の影響や、過去最大級の科学研究をこの地域で行なう計画について話をきいた。この研究で山下は、約200万人の被験者を対象に原発事故の健康影響を調べる考えだ。 


シュピーゲル:あなたは福島県から招聘されて、被害地域の住民に放射線リスクを伝える仕事をしてきた。一番最初に「放射線の影響はにこにこ笑ってる人には来ない、くよくよしてる人に来る」とおっしゃったが、あれはどういう意味だったのか。 

山下:あれは3月20日の最初の集会でしたね。本当にショックを受けましたよ。皆さんあまりに真面目で、誰も笑わないんですから。 

シュ:自分たちの村や町が放射能で汚染されてしまい、目に見えない危険がどんなものかを誰も知らない。そういう反応も当然だと思うが。 

山下:皆さん非常に重苦しい雰囲気でした。ラットを使った動物実験からは、ストレスを感じやすいラットほど放射線の影響を受けやすいことが明確にわかっています。放射線の影響下にある人たちにとってストレスは百害あって一利なしです。しかも精神的なストレスは免疫系の働きを抑制するため、ある種のがんや、がん以外の疾患の発症につながるおそれがあります。だからリラックスも大事だと話したのです。 

シュ:住民がリラックスしやすいようにと、年間100ミリシーベルト被曝しても大丈夫だともおっしゃっている。通常それは原発労働者の緊急時の被曝上限だと思うが。 

山下:100mSvでも大丈夫だから心配いらない、などとは言っていません。ただ、100mSv未満ではがん発症率の上昇が証明できていない、と話しただけです。これは広島、長崎、チェルノブイリの調査から得られた事実です。 

シュ:だが、そうやって安心させようとすることが、住民の方々の怒りと恐怖をかえって高めることになるとは思わなかった? 

山下:日本政府が年間被曝上限を20mSvに設定したことが、混乱に拍車をかけたと思います。国際放射線防護委員会(ICRP)は、原子力非常事態が起きた際には年間被曝上限を20~100mSvのあいだに設定するよう提言しています。その範囲のどこで線引きをするかは政治的な判断で決まることです。リスクと利益をはかりにかけて考えなくてはいけません。避難するにしてもリスクを伴うからです。放射線防護の観点から見れば、日本政府は最も慎重な方針を選んだのですが、それが皆さんの混乱と不安を高めてしまいました。 

シュ:あなたはご自身の数々の発言のため世間で物議をかもしている。あなたを刑事告発したジャーナリストがいるし、反原発の活動家は…… 

山下:……そういう人たちは科学者ではありません。医師でもなければ放射線の専門家でもない。研究者が研究を積み重ねてきめた国際基準についても何も知りません。皆さんが噂や雑誌や、ツイッターの情報を信じているのを見ると悲しくなります。 

シュ:だが専門家は原発は100%安全だと何十年も言い続けてきた。そんな専門家を信じられるわけがない。 

山下:私は福島に来て、こういう事故に対する備えがまったくなされていなかったのを知って驚きました。私はかつて中国や旧ソ連諸国に放射線防護に関する助言をしました。今度は自分の国で恐ろしい事故が起きたのに、誰も備えをしていない。福島の人たちは、自分たちの地域に原子炉が11基あることも知らなかったんです。福島大学の医学部には放射線防護医学の専門家がただの一人もいませんでした。 

シュ:事故の被害に遭った人たちに対して、今だったら話し方を変えるか? 

山下:最初は住民が放射能について何の知識もなかったので、曖昧な表現を避けようと思いました。今では白黒をはっきり言うのではなく、灰色の部分も伝えるような話し方に変えています。 

シュ:住民ははっきりした答えを知りたがっている。どこまでが安全なのか。どこからが安全でないのか。 

山下:そういう答えはありません。「100mSvまでなら100パーセント安全なんですか?」と尋ねられたら、科学者としてこう答えるしかないのです。「わかりません」と。 

シュ:これまでの研究で、100人が100mSvの放射線を浴びたら1人がその放射線のせいでがんを発症することが統計的にわかっている。同程度のリスクが100mSv未満にも当てはまる可能性はあるのか。 

山下:可能性はあります。ただ問題は、低線量被曝の健康リスクを推測する際にいわゆる「しきい値なしの直線線量反応モデル」というのが使われることです。このモデルは、たとえわずかでも通常時より多い被曝を受けたら、その被曝した集団の中でがんの発症率がわずかに上昇するという前提に立っています。そうした上昇は理論的にはありえますが、被曝量が100mSv未満の場合には統計的に有意な上昇ではないので、リスクが高まることを支持しているとは言い切れません。それに、何が原因で腫瘍ができたかは区別できません。放射線由来の腫瘍であることが突き止められるような特有の特徴が残るわけではないのです。放射線生物学の研究からは、低線量被曝で人間のDNAが傷つくこともわかっています。ですが、人体はそうした傷を短時間でうまく修復する能力をもっています。生まれながらに人体に備わった防護メカニズムです。私はそういうことを伝えようとしているのです。 

シュ:では、そういう情報を住民はどう受けとめればいいのか。 

山下:低線量被曝の状況下では、残るか去るかは住民自身が判断しなくてはなりません。ほかに決めてくれる人はいません。自分でリスクと利益をはかりにかけて考えるのです。避難すれば仕事を失い、子供は転校を余儀なくされるかもしれません。それがストレスにつながります。反面、その一家は発がんのリスクを回避できるかもしれません。発がんリスクといってもごくわずかではありますが。 

シュ:原発事故の被害を受けたうえにそうした決断を自分たちでしなければいけないとういのは、家族にとってきわめて大きな負担だ。 

山下:その通りです。ですから東電も日本政府も、家族が決断しやすいように支援してあげる必要があります。留まろうと思う住民に対しても、1mSvを少しでも超えたら高すぎると考える住民に対しても。 

シュ:原発周辺の住民には放射線によるどのような健康リスクが考えられるのか。 

山下:周辺住民に放射線による直接的な影響が生じるとは思いません。線量が小さすぎます。 

シュ:では、がんもがん死もまったく起きないと? 

山下:データに基づいて考えればそうなります。もちろん原発作業員の場合は別です。 

シュ:あなたはこれからの研究計画についてすでに話をしている。福島県民の健康状態を今後30年にわたって追跡調査すると。 

山下:現在の状況では、私たちは地元の方々になかなか受け入れてもらえません。考えられる最良の医療を住民の皆さんに提供することが最優先です。 

シュ:これまでにもっと思いやりのある話し方をしていれば住民に受け入れられたのではないか。 

山下:今回の事故のせいで、福島県民は東電と日本政府への信頼を完全になくしました。住民の皆さんは苦しんでいます。地震と津波の被害だけでなく、放射線対する大きな不安に苦しんでいます。まさに放射能恐怖症です。ですから、私たちはその不安を和らげて、住民の心の支えになってあげる必要があります。疫学研究の話はあとからでもできます。地元住民の支援なしには私たちは何もできません。今の状況では、私が長崎とチェルノブイリで研究した専門家であるという肩書きもいっさい役に立たないのです。だから私は福島に移ってきました。 

シュ:研究ではどういうことを調べるつもりなのか。 

山下:被験者を3つのグループに分けます。原発労働者、子供、それから一般住民です。労働者は高線量の放射線に被曝しています。がんをはじめとするいろいろな疾患について、放射線の影響を追跡調査することが絶対に必要です。一般住民はさらに2つのグループに分かれます。比較的低線量の被曝をした住民と、比較的高線量の被曝をした住民です。福島県の保健福祉部では、26,000人の住民を対象に先行調査を行なっており、まもなく問診票の回収を終える予定です。 

シュ:でも住民自身は自分の被曝量がわからない。 

山下:それは私たちが突き止めないといけません。3月11日には何時にどこにいたかをきき、以後も3月中の毎日について同じ質問をしています。それから、事故後最初の2週間に何を食べたかや、自宅やアパートが木造かどうかといったことも確認します。そうしたデータと、放射能の雲の分布状況を組み合わせて、それから被曝線量を計算するのです。 

シュ:どれくらいの人が被験者になるのか。 

山下:200万人の福島県民全員です。科学界に記録を打ち立てる大規模な研究になります。政府は原発事故の被害者に対する補償金について先ごろ決定を下しました。そうした補償プロセスを通じて、県外に避難している住民の方々にも連絡を取りたいと考えています。 

シュ:子供についてはどうか。 

山下:18歳未満の子供全員について甲状腺の超音波検査を実施したいと考えています。全部で360,000人です。被曝してから甲状腺がんを発症するまでには約5年かかります。それはチェルノブイリの経験で明らかになったことです。 

シュ:事故による精神的な影響についても調査しているのか。 

山下:もちろんです。チェルノブイリの経験から、心理的な影響が非常に大きいことがわかっています。チェルノブイリでは避難住民の寿命が65歳から58歳に低下しました。がんのせいではありません。鬱病やアルコール依存症、自殺などのためです。移住は容易ではありません。ストレスが非常に大きくなります。そうした問題を把握するとともに、その治療にも努める必要があります。さもないと住民の皆さんは自分が単なるモルモットだと感じてしまうでしょう。 

インタビュー:コーデュラ・マイヤー 

山下俊一について 
山下俊一、59歳。放射線の影響を研究する分野において日本を代表する専門家の一人。長崎大学大学院医歯薬学総合研究科教授。福島第一原発の事故後、福島県放射線健康リスク管理アドバイザーに就任。

 

 

18歳以下1人が甲状腺がん 福島健康調査で8万人分析

 東京電力福島第1原発事故による放射線の影響を調べている福島県の「県民健康管理調査」の検討委員会(座長・山下俊一やました・しゅんいち福島県立医大副学長)が11日開かれ、事故発生当時18歳以下を対象とした甲状腺検査について、1人が甲状腺がんと報告された。

 甲状腺検査の対象は約36万人で、これまで結果が判明したのは約8万人。

 調査主体の福島県立医大の鈴木真一すずき・しんいち教授は検討委で「チェルノブイリ原発事故でも甲状腺がんが見つかったのは最短4年。福島では広島、長崎のような外部被ばくや、チェルノブイリのような内部被ばくも起きていない」と述べ、放射線の影響を否定した。

 鈴木教授は終了後、記者会見。小児甲状腺がんは100万人に1人~2人の頻度といわれていたが、自覚症状が出てから診察する場合がほとんどで、今回のように全ての子どもを対象とした検査の前例がないため「比較できない」と述べた。

 年齢や性別、外部被ばく線量などについては「たった1人しかいないので、個人のプライバシーに関わる」として、一切明らかにしなかった。

 山下副学長は「いろいろなデータが出てきた。検診から次の医療行為に移っていく。プライバシーの配慮に努める」と話した。

 これまでの調査で425人が、5・1ミリ以上の結節(しこり)や、20・1ミリ以上の袋状の嚢胞のうほうが見つかり「2次検査が必要」とされた。60人が2次検査を受け、うち38人の結果が判明。この中の1人ががんと判断された(中國新聞 '12/9/11)

 

毎日新聞 2012年09月11日 20時33分(最終更新 09月11日 22時13分)

 福島県の子どもの甲状腺検査で初めて1人が甲状腺がんと診断されたことが11日、県民健康管理調査の検討委員会(座長=山下俊一・福島県立医大副学長)で報告された。同大で担当の鈴木真一教授は「チェルノブイリ事故後の発症増加は最短で4年」などとして、福島第1原発事故との因果関係を否定した。

 昨年度受診した原発周辺13市町村の3万8114人のうち、一定以上の大きさのしこりが見つかった2次 検査対象者186人の中の1人。性別や年齢は公表していない。細胞検査でがんと分かった。甲状腺検査は同管理調査の一環で、事故時18歳以下だった約36 万人全員が対象。これまでに約8万人が終えた。

 検討委では、40歳以上の特に男性で、肥満や肝機能異常のある人の割合が震災前より増えたことも報告された。避難生活のストレスなどが原因と考えられるという。【乾達、泉谷由梨子】

 

甲状腺の検査改善求め~市民が県立医大に要望

投稿者: ourplanet 投稿日時: 土, 09/15/2012 - 07:16
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東京電力福島第一原発事故を受けて実施されている福島県県民健康管理調査に関し、子どもの健康問題に取り組む市民らが13日、甲状腺検査などの改善を求めて申し入れを行った。
 
要請を行ったのは、8つの市民団体で構成されている「子どもと放射能対策の会」のメンバーら。放射線県民健康管理センターの松井史郎特命教授に対し、甲状 腺検査の結果データを本人に開示するよう求める要望書を手渡した。要望書を提出するのは7月23日に続いて2回目。健康管理調査の責任者である山下俊一副 学長の出席を求めていましたが実現しなかった。
 
検査結果の本人開示について
チェルノブイリ原発事故では、子どもたちの間で甲状腺がんが増えたことから、福島県内でも18歳以下の子どもを対象に、去年暮れから超音波による甲状腺検 査が実施されている。しかし、A~Dという独自の判定結果のみが通知され、のう胞や結節が発見されても、超音波画像データやしこりなどの大きさなどは、本 人がわざわざ個人情報の開示請求をしないと入手できない状況が続いている。これに対し、市民らは、通常の病院同様、超音波診断を受けたらすぐに画像を手渡 して欲しいと要望。松井教授は、簡易な情報開示の方法を県と協議中であると解答した。また、通知の内容を改善すると約束。今後、住民説明会を開催し、検査 結果についての説明を行っていくことを明らかにした。
 
甲状腺検査の内容や方法の見直しについて
現在、避難区域内の子どもと福島市の子ども、約8万人の検査が終了している。しかし、初期に大量のヨウ素が飛散したとみられるいわき市などが来年に先送り されており、県外の医療機関で個別に検診を受けている家庭も少なくない。市民からは、2年間ごとの検査では不満だとの声があがった。これに対し、松井教授 は「長期にわたってずっと見てゆくことが大事だと考えている。」と強調。郡山在住の黒田節子さんが「県外でお医者さんに見せると2ヶ月ごとに経過観察をし ましょうと言われる。山下教授は2年ごとで良いとしているが、この違いは何か。」と追及すると、松井教授は「健康被害がないということを前提にして調査し ているのわけでなない」としたうえで、「放射線に関係あるかないかにかかわらず、「早期発見早期治療」が我々がやるべき立場だ。」と明言。福島医大の担当 者として、初めて「早期発見早期治療」という言葉を口にした。
 
福島県民健康管理調査については、調査の目的が「健康不安の解消」とされているため、「健康被害がないことを前提にしている」との疑念を持つ県民も多く、 インターネット上では「人体実験だ」「福島県民がモルモットにされる」との声も強い。事故後子どもたちの健康問題に取り組んできた青木一政さん(福島老朽 原発を考える会)は初めて耳にする言葉に驚きの表情で「「早期発見早期治療」が健康管理調査の立場であるならそれをしっかり表明して確実にやってほし い。」と注文をつけた。
 
甲状腺がん以外の健康被害について
一方、放射能から子どもたちを守る福島ネットワークの代表佐藤幸子さんは、保護者の多くが、甲状腺がんだけでなく、免疫力の低下などその他の病気について 心配していると説明。超音波だけでなく、血液検査を含む多様な検診してほしいと求めた。しかし松井教授は、福島県からの委託事業なので対応は難しいと回 答。避難区域内の住民は「健康診査」という形で様々な検診を実施しているが、区域外については、県の健康管理課に要望すべき内容であるとした。
 
セカンドオピニオンについて
山下俊一副学長と甲状腺調査を担当している鈴木真一教授は、今年1月25日、甲状腺学会会員に対して、セカンドオピニオンや追加検診を見合わせるように求 める文書を送ってる。この通知について、松井教授は「この点は、保護者やメディアからも多数問い合わせが届いている」とした上で、「福島県立医科大学とし ては、一貫として、セカンドオピニオンを妨げるものではない。誤解を解くための文章を、近日ウエブサイトに掲載する」と回答そた。これに対し、市民から は、医療従事者にも浸透するよう、1月に通知を送った相手には、鈴木氏、山下氏の署名入りで郵送で通知してほしいと要請した。
 
甲状腺がんの子どもが見つかった件について
また、先日、甲状腺がんの子どもが見つかったことに関連して、被ばく線量など、個人情報が特定されない方法で、もう少し情報を開示して欲しいとの声があ がったが、松井教授は現時点で、情報の公開は難しいと返答。福島集団疎開裁判の原告団長をつとめる井上利夫さんが「チェルノブイリ事故後、翌年から甲状腺 がんが微増しており「放射能とは関係ない」と言い切れないのではないか」との指摘したことに対して、松井教授は、「鈴木医師は「現段階では、放射能が関係 するとはいいにくい」と言ったまでで、断定的に報道したマスコミの問題が大きい」と回答。市民側からは「これまでの積み重ねで、信頼関係を損ねている中、 回復は簡単ではない」との声があがった。また青木さんが、8月末に日本疫学会で発表した山下氏の論文を紹介。健康管理調査の目的として、「(1)長期にわ たり健康状態の監視、(2)将来の県民の幸福の推進、(3)長期にわたる低線量被ばくの健康への影響調査」となっているとして、山下教授がこの健康管理調 査を進めていることに対して不信感がぬぐえない背景を説明した。
 
同意書
郵送で事前に送付する同意書も不信を募らせる背景となっている。保護者の一人は、山下教授がドイツの講演で、県民のことを「被験者」と呼んでいるとして、 健康管理調査がデータをとるためのものなら、そのことを山下氏は県民の前で説明すべきたと指摘。「データをとるから「同意書」が必要になる。「同意書」は 止めてほしい。」と語気を強めた。


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