Everyone says I love you !

弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

三木谷浩史楽天会長の超ブラック発言「ベンチャー企業では残業代ゼロどころか労働時間を制限するな」

2015年04月10日 | IT・経済

古い。古いわあ。にしても残業代は払え。

 

 

よろしかったら大変お手数とは存じますが、上下ともクリックしてくださると大変うれしいです!

人気ブログランキングへ人気ブログランキング

ブログランキング・にほんブログ村へほんブログ村



 世にブラックな発想の経営者は多いんですねえ。

 安倍内閣は2015年4月3日、残業代も払わず24時間働かせることができる「残業代ゼロ」制度(ホワイト・エグゼンプション制度)を導入する労働基準法「改正」案を閣議決定し、国会に提出しました。

 もしこのまま労働基準法が改悪されると、何時間働こうが事前に決めた時間分しか賃金が払われない「裁量労働制」も大幅に拡大し、「残業代ゼロ」制度とセットで、長時間労働とただ働きを野放しにする過労死大国日本がますます深化します。

残業代ゼロの労働基準法「改正」法案 先ほど閣議決定 地獄の窯の蓋がいま開く

1 まず前半のホワイト・エグゼンプション=「高度プロフェッショナル制度」と名づける「残業代ゼロ」制度は、「1日8時間、週40時間」の規制や残業・休日・深夜の割増賃金の支払いを免除。休憩や休日付与もなくし、24時間働かせることを可能にします。

 「働いた時間ではなく、成果で賃金を払う」(安倍首相)といいながら、成果に応じて報酬を支払わなければいけないという義務の規定は一切なく、労働時間規制の撤廃と残業代の支払い免除だけが明記されました。

 対象者には「年間休日」などを定めるものの、土日以外は無制限に働かせることが可能で、過労死基準を超える長時間労働にお墨付きを与える内容です。

 年収要件は「平均給与の3倍を上回る」として省令で1075万円以上とする方針ですが、経団連は「400万円以上」を求めており、引き下げられるのは必至です。

ブラック企業被害対策弁護団の「ブラック法案によろしく」に完敗した!←残業代ゼロ法案のこと。

教祖降臨 日経BP社

三木谷氏の生い立ちから、孫正義、ホリエモンなどとの交流、楽天社長として大成するまでの軌跡を書いた唯一の本。これだけの立志伝中の人物の割に彼のことを書いた本が少なすぎる。


 

2 後半の裁量労働制は、企画・専門業務に加えて新たに営業や管理業務にも拡大されます。こちらには年収要件はなく、「残業代ゼロ」制度より幅広い労働者が対象者となります。

 しかも、出勤・退勤時間を自由に設定できるフレックスタイム制も、労働時間の清算期間を1カ月から3カ月に延長し、長時間労働と残業代なしの労働時間を増やす内容です。

 もちろん、こちらにも成果に応じた賃金を支払うべき義務を課する規定はなく、労働者はまさに働き損です。

「残業代ゼロ」法案 成果に応じて報酬が支払われるとの誤報と誤解→成果を上げても報酬は支払われない!

 さて、それでもこの労働基準法「改正」案では、1のホワイト・エグゼンプション制度の方だけは働き過ぎを防ぐため、継続した休息時間の確保や、労働時間に上限を設けることなどを企業に義務づけています (2の裁量労働制拡大にはそんな規定さえないことに注意です)。

 ところが、今回の改正案に対して、経団連に対抗して作った「新経済連盟」の代表理事である楽天の三木谷浩史会長兼社長がコメントを出しています。 

知識社会での地球時間の働き方を目指して(改正労働基準法案閣議決定に当たってのコメント)

 この中で、三木谷氏はベンチャー企業においては「時間という評価軸が馴染まない」とした上で、労働時間管理制度を適用除外することを引き続き検討していくべきと述べています。

『ベンチャー企業の場合、多くの従業員が企画型の業務を行い、ストックオプションをもらっていることも多く将来的リターンも大きいことにも留意が必要です。

 また、知識と情報を源泉とした高付加価値型サービスを提供することを中心的な活動とする企業等では、従来の時間という評価軸がなじまないことにも留意が必要です。

 このような企業に対しては、健康管理の枠組みを担保しつつ労働時間制度を適用除外することを引き続き検討していくべきと考えます。』

 いやはや、労働時間制度の適用除外にするということは、1日8時間労働だとか週40時間労働だとかいう制限を全部取っ払って!そもそも残業だの、休日出勤だのと言う概念をすべてなくす!!ということですから、物凄いですよね。

 まさに、1日24時間、年365日働けってことです。凄いよ。産業革命の時のイギリスかよ。いや中世?いや奴隷制?

かなり中世入ってる。いや奴隷の親方?

 

 

 もう、この奴隷労働法制には突っ込みどころ満載なのですが。

1 ベンチャー企業って何?

 ベンチャー企業とは、ベンチャービジネスの略であり、新技術や高度な知識を軸に、大企業では実施しにくい創造的・革新的な経営を展開する中小企業を指すとされています。

 主にIT産業に使われることが多く、楽天傘下の様々な子会社などはその典型だと思うのですが、もちろんITには限りませんし、なにしろベンチャー企業の定義はあいまいで、奴隷制にされる企業がどれだけ拡大するか全く予測不可能です。

 とにかく、三木谷氏が楽天でこれをやりたいのだけはよくわかります。

2 ストック・オプションで将来的にリターンが多いから、残業代・休日出勤代・超過手当は要らない?

 ストック・オプションと言うのは、従業員に対する報酬の一部としてその勤務する会社の株式を与えておく制度です。

 こうしておくと、もし一生懸命働いてその会社が上場でもしようものなら、従業員の株式の価値は飛躍的に上がるということで、従業員のモチベーションを上げる方法として知られています。また、この制度によって企業買収を防げたり、会社の資産が増えたりします。

 つまり、ストック・オプションと言うのは会社の利益にもなる制度で、従業員の残業代などだけ減らすのは不公平なんですね。もちろん、報酬を株式で支給した分、会社はその分の現金は助かっているわけですし。

 また、「将来的には」というところがくせ者で、従業員が残業代なしに頑張っても、株の価値が上がるか、まして会社が上場できるかなどは運任せ、というよりほとんどないことなんです。ですから、従業員はまさに働き損になる可能性が100%近いということになります。

 つまり、将来リターンがあるから残業代を今我慢しろと言うのは何重もの意味で不合理なんです。

どんな世界標準なんだか。まさか、グリニッジ天文台の世界標準時に合わせて仕事しろと?

 

 

3 知識がなんちゃらの高付加価値型の企業体では従来の時間という評価軸がうんちゃらなんちゃら?

 三木谷氏は、以上の斜文字の部分の前振りで、

「インターネットというグローバルネットワークにより、ビジネスは国境をまたぐ状況で、地球時間での対応、24時間のグローバルオペレーションが求められています。」

などと横文字言葉を多用しているのですが、要は海外と取引していると時差の関係でいつメールなどの連絡が来るかわからないから、24時間体制で働けということですね。

 しかし、そんなん、海外との取引のある会社なら昔からそうでしょ?海外とやり取りするから「時間軸」なしで働けと言いだしたら、物凄くたくさんの会社で24時間休みがなくなるでしょう?

 というか、三木谷氏はまさに1日24時間働けと言っているわけで、そんなことしたら、労働者は死に絶えます。

24時間仕事バカ!は1人でやってほしい。

 

 

4 健康の枠組みを維持しつつ、労働時間制度の適用を除外する?

 いやいやいや、まさに労働時間を制限することが、労働者の健康管理の枠組みの最たるもの。基本中の基本で、労働時間を長時間にしたり、不定期にしたりしたら、それを補う健康維持の方法なんてありえないのです。

 そもそも、労働者の労働時間制度は、イギリスで産業革命が起こり、1日15時間も20時間も労働者を働かせていたらどんどん病気になって死んでしまったので、これでは工場側も働き手がいなくなって元も子もない、ということで工場法などが制定されたのがその起源です。

 労働時間の制限はそんな数百年前からの国際的な標準であって、これなしに国民の健康を保つことはできません。

 そもそも、三木谷氏は、日本の労働者は労働時間が先進国の中でも長すぎて、過労死・過労自殺大国となっていることを全く認識していないのではないでしょうか。

 

 というわけで、新経済連盟なんていう経済団体をでっち上げて、しょっちゅう安倍首相に来てもらったりしていますが、三木谷楽天会長の経営センスは酷いですね。

 もうブラックもブラック、真っ黒クロすけです。

 こんな人が日本経済のリーダーだなんて、日本の将来も真っ暗暗闇です。

 

楽天流 講談社刊の最新自画自賛本。

 

 

関連記事

巨大企業の闇 ユニクロ 最高裁で確定 月300時間労働 サービス残業当たり前 年間売上高1兆円の秘密

究極の偽善者 ワタミの渡邊美樹社長 女性新入社員過労自殺の労災認定にも全く反省せず暴言ツイート

巨大企業の闇 Apple(2) 無休・長時間労働で居眠り。絶望工場から産み出されるアップルブランド

巨大企業の闇 セブンイレブン(1)フランチャイズ店の破産・自殺が相次ぐエゲツない集金マシーン



ユニクロ、iPhone、セブンイレブン、楽天カード。ワタミ以外全部使ってるんだけどどうしたらいいんだよ。

よろしかったら大変お手数とは存じますが、上下ともクリックしてくださると大変うれしいです!

人気ブログランキングへ人気ブログランキング

ブログランキング・にほんブログ村へほんブログ村

 

 

 

知識社会での地球時間の働き方を目指して(改正労働基準法案閣議決定に当たってのコメント)

2015年4月3日

一般社団法人新経済連盟
代表理事 三木谷 浩史

本日、改正労働基準法案が閣議決定されたことを受けて、以下のとおりコメントいたします。 

1.今回、昨今の経済構造の変化や労働環境の変化を踏まえて、労働時間等の規定が適用除外となる「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設」が導入されたことは、多様で柔軟な働き方を認めていくうえで一歩前進したと理解します。 

2.一方で、経済構造は、知識集約型にシフトし、時間ではなく成果が求められるようにますますなってきています。
 また、インターネットというグローバルネットワークにより、ビジネスは国境をまたぐ状況で、地球時間での対応、24時間のグローバルオペレーションが求められています。
 この結果、時間や場所の制約を受けない柔軟なワークスタイルや成果に基づく業績評価などがますます進み、現行の硬直した労働法制になじまない職種、仕事、働き方は拡大していきます。
 したがって、上記1.の制度の創設だけでは対応しきれない部分があります。 

3.ベンチャー企業の場合、多くの従業員が企画型の業務を行い、ストックオプションをもらっていることも多く将来的リターンも大きいことにも留意が必要です。
 また、知識と情報を源泉とした高付加価値型サービスを提供することを中心的な活動とする企業等では、従来の時間という評価軸がなじまないことにも留意が必要です。
 このような企業に対しては、健康管理の枠組みを担保しつつ労働時間制度を適用除外することを引き続き検討していくべきと考えます。
 また、昨今の時代変化に合わせて、新たな企業やベンチャー企業などを代表する委員の追加など労働政策審議会の委員構成の見直しを図っていくべきと考えます。 

(参考) 新経済連盟では、「知識社会型新たな就労環境実現PT」を設置し、上記の問題意識のもとに議論を行っており、直近では下記の提案をしています。 

・2014年8月29日
国家戦略特区のヒアリングの際に、上記3.を提案 

・2015年2月12日
規制改革会議公開ディスカッションで、多様な働き方を実現する上で課題となっている事例(スタートアップ、クリエイティブワーク、グローバル対応、テレワーク)を提示
以 上

コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 最高裁が親の監督・賠償責任... | トップ | 「中身はポンコツばっかり『... »
最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
仕事のみで生きるに非ず (洲蛇亜林)
2015-04-10 20:53:42
>24時間仕事バカは1人でやってほしい

自分もそう思います。

「気合いと根性こそ成功の絶対条件」という三木谷氏個人の信念を社会に押し付けないで欲しいですね。
そもそも今日、成功よりかはささやかな安定した暮らしを望んでもなかなか叶うことが難しい時代。
個人の信条としては三木谷氏のような考えもアリだが、社会状況が求めているものはそんなことじゃないと思います。

三木谷氏は24時間仕事ができるような環境にたまたまあるのかも知れないが、大多数の人間には家族との団欒や近所付き合いや親の世話や友人との付き合いといったプライベートな時間や地域での活動といった公的活動に要する時間が絶対いるわけです。

仕事ばっかりしてるなんて他の誰かを犠牲しているに過ぎないこと、他の誰かの犠牲の上にしか成り立たないことだと思います。
返信する
名誉白人の言葉 (檜原転石)
2015-04-11 07:35:18
>もうブラックもブラック、真っ黒クロすけです。

「黒人の命は大切だ」(Black Lives Matter)運動が起きている米国では黒人が白人警官にあっさり射殺されている今、日本では弁護士連中がブラックにあらゆる悪を含意してのこの言葉使い、知的退廃の極みでしょう。まあ以下の自民党のトンデモ議員の梶山静六の人種差別発言と貴方の発言を比べてみてください。いかほどの違いでしょうか?

★1990年、自民党の梶山静六法務大臣。資格外就労の外国人女性の摘発をめぐって、
「たとえば、悪貨は良貨を駆逐するというが、アメリカにクロ(黒人)がはいって、シロ(白人)が追いだされているような混在地になっている」
と発言

そうトンデモ和製英語「ブラック」の使用者は梶山静六並なのです。ちなみに米国黒人の最も好ましい呼称はブラックのようです。「ブラック・イズ・ビューティフル(黒は美しい)」運動を経験していますから。そうブラックはそれ以前は差別語として機能していました。
返信する
Unknown (Unknown)
2015-05-25 00:31:51
企業で働かれたことがないのでしょうか?法の歪曲した捉え方と企業活動の実態、最低限の実状を無視した記事だと思います。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

IT・経済」カテゴリの最新記事