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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

定住外国人の地方参政権

2009年05月22日 | 人権保障と平和
 
 在日特権を許さない市民の会という団体があって、来る6月13日(土)に『外国人参政権反対!関西デモ』を京都にて挙行するそうです。

 
 弱い立場の日本人労働者がさらに弱い外国人労働者をたたく構造を感じます。


 「帰化したら日本人として認めてやる」

 しかし、自分の国籍を自分のアイデンティティーの最も重要な部分だと認識している外国人の方は数多いのです。日本人だって、アメリカ人になったらいいことあるよ、といわれても、そんな決断できないでしょう。

 民族派団体「一水会」顧問の鈴木邦男さんは、一九三二(昭和七)年の五・一五事件を例に挙げ、「戦前の右翼運動の背景にも、世界恐慌に端を発した貧困や格差社会があった」と、現在との共通点を指摘する。ただ、現在の状況は、外国人を排斥する排外主義の広がりであり、自分と主張や立場の違う、嫌いな人も含めて認める愛国心とは違うとおっしゃっています。


 今や、憲法学では今や単純な国民主権原理を超え、定住外国人の参政権を認めるのが多数派といえるでしょう。
 ネットで調べられたらいいですが、定住(永住)外国人の地方参政権付与を違憲とされている憲法学者は、せいぜい、あの百地章先生、大原康男先生くらいです。

 定住外国人は他の日本人の住民と同様、法を遵守し(しなければ同じように刑事事件になる)、憲法上の「国民の義務」とされる納税の義務が具体化した、所得税や住民税、消費税なども支払っています(払わなければ日本人の住民と同じ制裁を受ける)。

 なのに、地方選挙で選挙権も行使できないという今の地方自治法に合理性は見出しがたいでしょう。

 さらに、突っ込むと、「国民」と「住民」について
1 日本国憲法は「国民」と「住民」を区分し、憲法93条2項には地方選挙について「住民が直接これを選挙する」と規定し、憲法15条の「国民固有の権利」である国政選挙と明らかに区別しています。
2 また、地方自治法第10条1項は「住民」を、「市町村の区域内に住所を有するものは、当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とする」と定義し、住民に国籍要件を設けておりません。
3 また同条2項には「住民」の権利と義務を規定し、「住民は法律の定めるところにより、その属する普通公共団体の役務の提供を等しく受ける権利を有し、その負担を分任する義務を負う」とし、地方自治の本旨に基づき、住民としての権利・義務の平等を明らかにしています。
4 従って私たちに対する地方自治体参政権の付与は、「国民主権」の原理に抵触するものではないのです。

 また、定住外国人のほとんどは、日本の「住民」であるために、本国の国政選挙権、地方自治体の選挙権・被選挙権も事実上行使しえていないのです(韓国で2009年に法改正がありましたが)。

 日本に暮らす外国人の地方参政権をめぐっては1993年、大阪府岸和田市議会が初めてその付与を国に求める決議を採択。同様の動きが全国の自治体に広がりました。

 最高裁は1995年、「法律で永住者に地方参政権を付与することは憲法上、禁止されていない」との判断を示し、国会では1998年以降、法案が数度にわたって提案されました。しかし、反対も根強く結論は出ておらず、て。

 2002年、滋賀県米原町(現米原市)の市町村合併をめぐる住民投票で、全国初の外国人住民の投票が認められ、注目を集めた。2004年には京丹後市が国の構造改革特区制度に永住外国人の地方参政権付与を提案した。

 日本で最も老い定住外国人は韓国人の人々。その韓国では2005年、永住外国人に地方参政権を与える法改正を行い、翌年の統一地方選で投票が実現しています。

 日本に暮らす外国人の地方参政権をめぐっては1993年、大阪府岸和田市議会が初めてその付与を国に求める決議を採択。同様の動きが全国の自治体に広がっています。

 2002年、滋賀県米原町(現米原市)の市町村合併をめぐる住民投票で、全国初の外国人住民の投票が認められ、注目を集めた。2004年には京丹後市が国の構造改革特区制度に永住外国人の地方参政権付与を提案した。


朝日新聞 2008年9月21日より抜粋
・・・欧州では、EU加盟国間で地方参政権を相互付与するなど欧州出身者の政治参加は進んだ。むしろ近年の課題は、非欧州出身者の声をどう政治や行政に反映させるか。出身地域を問わず定住外国人に参政権を与える国も増えているが、多くの国の自治体が「外国人議会」の充実を図る。

 イスラム圏からの移民など異なる文化や習慣を持つ新住民が都市部を中心に増えている現状が背景にある。新旧住民の衝突も後を絶たない。47カ国が加盟する欧州評議会は「政治的権利を拒絶される限り、外国人が社会に溶け込むのは困難」と、地域社会の一員としての意識を外国人に持ってもらう方策に政治参加を位置づけ、推進する。・・・

 

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18 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
黒い悪魔です。 (黒い悪魔)
2009-05-24 20:19:25
お久しぶりです。
NK駅で,朝方まで飲んで以来でしょうか。

すったもんだがあり,東京の民弁教官の事務所に移籍しました。先生の,「君は,東京向きやで』との発言も,大変励みになりました。

精神的にキツい時期があり,まだ克服できていませんが,先生のブログが復活していて安心しました。
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Unknown (宮武嶺)
2009-05-24 22:54:53
きみの「すったもんだ」はすごそうですねえ。説明しなくていいです。

うん、東京はおもろいで。

で、君にはもひとつ、ニューヨークを体験してきてほしいな。
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Unknown (溜め息)
2009-05-24 23:27:09
何故外国人に日本人と同じ権利を与えなければならないのですか?

アメリカ等、元々そういう国是の国なら分かりますが。
言うなれば、「マンション」と「一家族の住む家」の違いのようなものです。

さらに、在日朝鮮人達がどの様な経緯で日本に住むようになったか知っていますか?
強制連行?違います。
戦後、帰朝を希望する人達はみな引き上げ船で帰りました。

李承晩にまだ軍事力を持たない日本が無理矢理要求をのまされた為です。
更に様々な特権を…

と言ってもあなたの様な人は信じないでしょうね。
まあ、あなたが 本 当 に 日 本 人 な ら 何時か気付く事を祈ります。
返信する
人権とは人が生まれながらにして有する権利 (宮武嶺)
2009-05-25 00:28:27
溜め息さん、はじめまして。

いろいろ勉強されているようですね。ものにするコツは、裏読みすることだと思います。

曰く
戦後、帰朝を希望する人達はみな引き上げ船で帰りました

日本に強制連行された朝鮮半島の方々がどれくらいいしゃっしゃって、そのうち、帰朝を希望しなかった方々はどれくらいいらしたのでしょうか。帰朝が至難であった人々が多数いたのではないですか。そういうことはあらかじ目調査なさってからコメントなさるタイプでしょうか。良かったら教えてください。

今後ともよろしくおねがいします。
返信する
 (もと)
2009-05-25 07:03:01
 宮武先生、こんにちは。
 外国人参政権に反対する人が、外国人に権利を認めることを、なぜ「特権」というのかがわかりません。
 権利を制限され、偏見を持たれている外国人を少しでも日本人と同じ立場に近づけることがなぜ「特権」を与えることになるのでしょうか?
 宮武先生のような良識のある方がいらっしゃってほっとしています。
返信する
そのとおり (宮武嶺)
2009-05-25 13:10:31
 もとさん。

 おっしゃるとおり、「特権」とは、中世の世の中なら、王族・貴族・宗教関係者などがむさぼった、大多数の国民の生活と無縁の代物です。

 それに比して、立憲主義における人権は、「人は生まれながらにして個人の尊厳を有し、基本的人権を享受する」という発想の権利です。

 今の日本で外国の方に『特権』などとありませんし、言葉の誤用もはなはだしい。

 日本に今現在いらっしゃる外国籍の方にも、海外旅行中の方もいらっしゃいます。そういう人に地方参政権を与えよとは誰も言わない。

 私は個人的には、定住外国人であればいいと思っています。特に、日本が植民地支配をした台湾・朝鮮半島の方々についてはなおさらです。

 最近は外国人に参政権を与えるなと、デモ行進する人がいるそうです。
 不景気のせい、というより、日本人の感性が立憲主義以前の、中世に逆戻りしつつあるのかもしれません。

 またよろしくおねがいします。
返信する
Unknown (溜め息)
2009-05-25 15:53:44
働きもせずに一人毎月十万円以上のお金が支給されていることが普通ですか?
ソフトバンクの朝鮮人割引の事を知っていますか?
そして李承晩の件については?ちなみに、この時、日本人の漁民44人が韓国に殺害されています。
在日朝鮮人・中国人の異常な犯罪率は?
もしかして、日本の植民地支配に対する罪に比べたら…とでも思っていますか?
敢えてここでは統治時代の是非についてはさけます。
しかし、いずれにせよ日韓で講和条約が締結された時に全ては解決しています。
個人補償については、その時韓国政府に全額まとめて渡していますが、韓国政府が勝手に全額使ってしまって、個人にまで行き渡っていません。


あなたは、「かわいそうな朝鮮の人たち」に謝罪して満足かもしれません。賠償も結局は国にやらせて、自分の懐は痛まない。
いいですよね?きちんと謝れていい気分ですよね?
そう、あなたは満足な事でしょう。
よくわからないけど、自分達は酷い目にあった、と泣き叫んでいる人達がいる。ああ可哀想だな。とりあえず謝っておこう。これで自分は人の気持ちの分かるいい人間だ。そうだ、賠償もしておこう。どうせ自分の金じゃないし。あれ?あっちに、かわいそうな人たちの言い分に文句を付けてる奴等がいる。あいつら最低だなあ。かわいそうな人たちが嘘つくはずがないだろう。だって、あんなに泣いているんだから。

あなたの行動原理はこれでしょう?

だけどね、あなたが勝手に謝ることが日本人全体の名誉を傷つけている事に気づいていますか?

もし有りもしない事に謝ったりしたら、日本人全体がその罪を認めたことになりますよね。

少なくとも、そのことを考慮して、そのような相手の主張は出来る限り詳しく調べ(証言だけで認めるのは言語道断、泣いていると言ってその言動が正しい訳ではない。例:オウム真理教の信者)、その上で行動する事が義務なはずです。

あなたは(多分)日本人ですよね?
地球市民?あなたがいくらそう主張しても、外国人には日本人にしか見えません。

あなたには、常に「日本人」という肩書きがついて回っていることを忘れないで頂きたい。

嫌なら日本人を辞めて下さい。
返信する
すみませんでした。 (とも)
2009-05-25 19:11:04
 宮武先生、私が書いたコメントに対するご返答によって火に油を注いだようでようで申し訳ないです。
 もうちょっと、相手の気持ちを慮り、名指しされた人々が読むとどういう気分になるのかを配慮した、読むと優しい気持ちになるようなさわやかな書き込みがされるとよいですね。
 
返信する
追伸 (もと)
2009-05-25 22:22:12
 名前を「もと」と書くつもりが「とも」になってました(笑)。
 「もうちょっと、相手の気持ちを慮り、名指しされた人々が読むとどういう気分になるのかを配慮した、読むと優しい気持ちになるようなさわやかな書き込みがされるとよいですね。」というのは、直前のコメントを投稿した方に対する感想でした。私も含めてインターネットを利用する人みんなにあてはまることですけど。。。
 お気に触りましたら、ごめんなさい。
返信する
追伸 (もと)
2009-05-25 22:30:52
 名前を「もと」と書いたつもりが「とも」になってました(笑)。
 「もうちょっと、相手の気持ちを慮り、名指しされた人々が読むとどういう気分になるのかを配慮した、読むと優しい気持ちになるようなさわやかな書き込みがされるとよいですね。」というのは、直前のコメントを投稿した方にたいする感想でした。私も含めてインターネットを利用する人が考えておきたいことですね。
 お気に障りましたら、ごめんなさい。
返信する

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