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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

二重ローン対策 被災ローン減免制度(個人版私的整理ガイドライン)を利用しましょう!今がチャンス!!

2012年08月13日 | 東日本大震災の真の復興

 

 ローンで建てた住宅などが、東日本大震災の津波や地震で失われ、その再建のためにさらにローンをすると二重ローンになってしまうという問題があります。こういう方々は、職場も被害を受けて給料が減ってしまうことも多く、仮設住宅から引っ越して家を借りると家賃がかかってローンが返せなくなってしまいます。

 そこで、この被災者の「二重ローン問題」をめぐり、住宅ローンなど債務を減免する制度「個人版私的整理ガイドライン」(日本弁護士連合会は通称「被災ローン減免制度」と呼んでいます)が作られました。

 この被災ローン減免制度は、金融機関と被災者の話し合いで債務を減免・免除する自主的なルールで、阪神大震災で二重ローン問題を救済できなかった反省を踏まえ、全国銀行協会や日本弁護士連合会などが策定しました。

 救済対象者は、震災の影響で既存債務を返済できない、または近い将来に返済できないことが確実と見込まれる個人です。具体的には、

①勤務先が被災し解雇・減給になった人

②取引先が被災し売り上げが減った個人事業者

などが典型例となります。

 また、今回の私的整理制度の利点は この制度の最大のメリットは、破産など法的な手続きと違い、手元に最大500万円まで生活資金を残せたり、新たなローンも組めたりするという点です。つまり、

1 債務整理に通常の返済繰り延べなどのほか、

2 債務の減額・免除が含まれる

3 自己破産などと違い、新規融資が申し込めないなど信用力が低下しない

4 財産を全部吐き出さなくてよい

ということがあげられるでしょう。

 自己破産ですと、ブラックリストに乗ってしまい、5年以上はローンが組めなくなりますし、もちろん自分の財産は全部吐き出すのが原則になります。裁判所を使わない任意整理でもブラックリストには乗りますし、自己資金を手元に残すような返済案はなかなか難しいのです。

 今回の制度はそれらのデメリットを回避できる点で画期的です。

個人版私的整理ガイドライン条件緩和で500万円まで手元に残ります! 二重ローン問題相談窓口情報付き

 

 

 

 ところがこの制度の利用実績が、受け付け開始から約1年たっても50件(2012年8月3日現在)にとどまっているそうです!

 もったいない!!

 多くの被災者はこの制度の利用ではなく、返済額や返済期間を見直すにとどまっているとみられます。なかには、被災者生活再建支援金や義援金からローンを返済しているケースもあるのだそうです。それでは、たとえば仮設住宅を出てからの生活再建が成り立ちません。

 もともと、この被災ローン減免制度は2011年8月22日から申請受け付けが始まりました。当初は年間1万件以上の利用が見込まれていたのですが、その0・5%しか利用がない理由は、

1 被災者に制度がよく知られていない

2 金融機関の説明不足

と見られています。そこで、金融庁は金融機関に対し、

「金融機関は、債務者の状況を一層きめ細かく把握し、当該債務者に対してガイドライン利用のメリットや効果等を丁寧に説明し、当該債務者の状況に応じて、ガイドラインの利用を積極的に勧めること。」

として、被災者に積極的に利用を勧めるよう通知を出しました。また、日弁連は会長声明を出し、金融庁に金融機関に対してさらなる指導を促しています。

 金融機関はこの制度を利用している実績を上げなければいけなくなるでしょう。ですから、被災者の方々が金融機関に申し込むのは今がチャンスです!

 もう一度言いますが、阪神大震災の教訓を生かしたこの制度の利用が進まない最も大きな原因は、被災者やその周囲の人たちの間でこの制度がまだ十分に知られていないことにあります。災害対策弁護士メーリングリストでも、さらなる広報活動が始まろうとしてます。

 この制度の運営委員会は東京都に本部が、青森、岩手、宮城、福島、茨城の5県に支部があり、銀行からの出向者らが相談を受け付けています。相談費用はかかりません。

「個人版私的整理ガイドライン」運営委員会本支部の相談窓口電話番号

東京本部 03・3212・0531

青森支部 017・721・1015

岩手支部 019・606・3622

宮城支部 022・212・3025

福島支部 024・526・0281

茨城支部 029・222・3521

 こちらの記事に、さらに詳しく、弁護士会や金融機関、行政機関などの窓口の連絡先などをまとめていますので、お取引先の金融機関がこの制度の利用を渋った場合になど、是非ご覧ください。

被災者の皆さん!個人の二重ローンの減額免除!債務の私的整理対策窓口が相談開始!書式追加

大災害と法 (岩波新書) [新書]  津久井 進 

東日本大震災を経たいま、災害に関する複雑な法制度をわかり易く解説した上で、その限界を明らかにし、改善策を探る。被災者のために、法は何をなし得るのかをわかりやすく解説。



 

東日本大震災からの真の復興を目指して。

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毎日新聞 2012年08月12日 東京朝刊

 東日本大震災の発生から11日で1年5カ月。被災者が住宅ローンなど債務の減免を受ける「個人版私的整理ガイドライン」は、「二重ローン問題」の解決策として活用が期待されながら、被災者にほとんど利用されていない。被災市町村では今後、土地の買い取りを伴う集団移転事業が本格化するが、抵当権が残ったままの土地は障害になるため、被災者の生活再建や復興の遅れが懸念される。【宮崎隆】

 ◇「義援金で返済」要求

 ガイドラインの利用を支援する第三者機関の運営委員会によると、宮城県の男性は自宅が大きく壊れ、自治体が借り上げた民間の賃貸住宅(みなし仮設)に入居した。約2700万円の住宅ローンが残ったが、震災で収入は減少。将来、みなし仮設を出た後は家賃もかかることから返済が不安になり、昨年9月にガイドラインの利用を申し込んだ。

 運営委員会が、申請書類の準備や弁済計画の作成を支援する弁護士を紹介。ローンを組んでいた銀行との協議を経て、土地の売却代金約700万円を一括返済し、さらに約100万円を自己負担すれば残り約1900万円を免除する−−という条件で、今年2月に債務整理が成立した。

 しかし、こうしたケースはまれだ。

岩手県大船渡市の40代女性は、仮設住宅で家族4人で暮らす。2000万円近くの住宅ローンが残り、震災後も毎月8万円ずつ返済していた。夫の収入と自身のパート代を合わせると手取りは月約30万円。仮設を出た後は市が建設する戸建ての災害公営住宅(復興住宅)への入居を考えていたが、市の試算によると家賃は月約8万円。ローン返済と合わせると負担が大きいため今年3月、市役所で開かれたガイドラインの説明会に参加した。

 ところが、運営委員会岩手支部の担当者からは、夫婦が震災後も仕事を失っていないことを理由に「ガイドラインは本当に困っている人の制度」と利用に難色を示された。「被災者がローンを減免されても(返済額が減る)銀行は国からお金をもらえるわけではない」「返済を続けた方が新規のローンを組みやすい」と言われ、手元にある生活再建支援金や義援金でローンの一部を繰り上げ返済し、月々の返済額を見直すよう勧められたという。

 4月には長男と長女がそれぞれ小学校と中学校に入学。復興住宅に入居しても、新たに家を再建するにしても既存のローンは重くのしかかる。女性は「仮設を出たら、どうやって暮らしていけばいいのか」と頭を抱える。

 ◇「5年返済」ネックに

「いったい誰のための制度なのか」。被災した自宅をリフォームした男性は、ガイドラインのパンフレットを手にため息をついた=岩手県宮古市内で、宮崎隆撮影
「いったい誰のための制度なのか」。被災した自宅をリフォームした男性は、ガイドラインのパンフレットを手にため息をついた=岩手県宮古市内で、宮崎隆撮影

 ガイドラインもメリットばかりではない。減免後の債務返済期間が原則5年に限られているため、利用をためらう被災者もいる。

岩手県宮古市の40代男性は、浸水した家を約350万円かけてリフォームした。運営委員会に相談したところ、ガイドラインを利用すれば既存のローンを約2300万円から半額以下の約1100万円に減額できることがわかった。

 しかし、期限内に完済するには、支払いが、今の倍以上の月約20万円に膨らむ。勤め先が被災し解雇されたため、時給750円のパートで家族3人の生活を支えており「今の条件では利用は難しい。こんなに大きな震災が起きたのに、被災者への支援が不十分ではないか」と話す。

 ◇集団移転に支障も 土地抵当権消えず 返済見直し件数は増

 「個人版私的整理ガイドライン」は、二重ローンが大きな問題となった阪神大震災の教訓を踏まえ国が昨年6月に公表した「二重債務問題への対応方針」に基づいて策定された。ただ、過去の震災との整合性などを考慮し、全国銀行協会が求めた国による債権買い取りや、日本弁護士連合会が求めた金融機関への公的資金の投入は見送られた。

 成立件数が伸び悩む原因について、運営委員会本部は「被災地では住宅再建が進んでおらず、被災者が本格的な債務整理に手をつけていないため」と分析する。

一方、金融庁によると、ガイドラインの利用ではなく被災者と金融機関との協議により月々の返済額や返済期間を見直した件数は、被災3県で4841件(今年2月末現在)。昨年5月の984件から約5倍に増えているが、全体の返済額自体が減るわけではない。

 被災者支援を続けている宮古ひまわり基金法律事務所の小口幸人弁護士は「金融機関が利益を優先し、債務減免を嫌ったことが利用低迷の一因ではないか。義援金などを返済に回すと、仮設住宅を出た後に生活が再建できなくなる。国などが、被災した土地と債権を一緒に買い取るような仕組みも検討すべきだった」と指摘する。

 金融庁も7月24日付で全銀協などに対し、「ガイドライン利用のメリットや効果を丁寧に説明し、利用を積極的に勧めること」との通知を出した。

 住宅ローンの整理が遅れれば、集団移転事業にも支障をきたしかねない。被災市町村は事業に際して浸水した土地を買い取るが、ローン支払いなどが終わらず抵当権が付いている土地は買い取り対象外となるからだ。

 仙台市が買い取りに向けて移転促進区域に指定した土地を調査したところ、約4分の1に抵当権が設定されていたという。岩手県大船渡市でも、被災した土地の抵当権に関し複数の相談が寄せられている。市集団移転課の担当者は「既存ローンの整理が終わらないと、被災者は生活再建のスタートに立てない」と復興への影響を懸念する。


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5 コメント

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二重ローン廃絶へ (スクウォッター)
2012-08-14 16:25:34
先日の朝日新聞にも、津久井さんの記事が載ってましたね。
津久井ブログで紹介されていた、YouTubeも判り易いです。
http://www.youtube.com/watch?v=gRGSIKMboFc&feature=youtu.be&noredirect=1
阪神淡路の時に顕著になったと思うのですが、地震や津波で消失した家のローンを延々と払い続けなければならん事ほど、虚しいものは無い。少なくとも二重ローンになる分は免除されてよいと思います。
またぞろ、不公平じゃの焼け太りじゃのという輩が出てくるでしょうが(阪神淡路の時もそうでした)、明日は我が身です。
被災者に寄り添う、人間の国であれば、この制度でも、まだまだ足りませんよ。
返信する
お久しぶりです (ray)
2012-08-15 19:57:34
>この制度でも、まだまだ足りませんよ

はい、もう全然なんだなあと思います。特にこの制度は5年で分割弁済を終えるという条件付きです。ここは改正しないと絶対にいけません。

国が被災者の抵当権付不動産を買い上げるとか、国が被災者に対する債権を買い取るとかいう根本的な制度にできなかったです。

他方、今度書きますが、先に国から支援を受けておいて、被災者には貸し出ししない、まさに焼け太りの金融機関が出てきていると津久井さんから紹介がありました。

ほんま、どういうことやねん。
返信する
銀行だけが悪くないですよ (やま)
2012-10-16 19:04:14
震災で一年も経たずに家を流され、借金だけが残ったものです。
弁護士に相談したら、私的整理ガイドラインはいろいろ自分でやることがたくさんあるのでその手間を考えると、やらない方が良いと言われ、めんどくさいからやめた方が良いと言われ、ガッカリして帰ってきました。
子供の貯金、退職金、保険の解約金等も資産になると言われました。
返信する
申し訳ないです (ray)
2012-10-16 20:41:14
弁護士会の力が及ばなかったみたいで、本当にごめんなさい。

さぞがっかりなさったことでしょう。

ご事情が分からないので、必ず解決できるとは言えませんが、最近はさらにいい解決事例が出てきていますので、あきらめずに別の相談窓口に行ってごらんになるお気持ちはありませんか。

とにかくお疲れ様でした。
なんとか良い解決があることをお祈り申し上げています。
返信する
ガイドラインは誰のため? (takey)
2013-02-28 19:49:35
ここ最近ガイドラインの案内チラシとか色々情報が入ってきたのでガイドラインの相談をしてきました。住宅ローンは2000万です。先ほど担当者から連絡を受けましたが収入があり、返済できない金額ではないといわれました。
ガイドラインの冒頭、「自助努力」ってどういう意味ですか?
仕事を止め自己破産したほうがいいのかなぁ
ガイドラインの相談後に自己破産した人や、首くくった人の数が知りたいです('_')
返信する

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