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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

エネルギー戦略「原発ゼロ」は政府方針なのに閣議決定見送りとはこれいかに?!馬脚を現した野田政権

2012年09月20日 | 原発ゼロ社会を目指して

 

 政府は2012年9月14日のエネルギー・環境会議で「革新的エネルギー・環境戦略」として、「2030年代に原発ゼロを可能とする」との目標を政府方針に初めて盛り込み、原発の新増設をしないことや、運転期間を40年とすることも明記しました。

 これを受け、17日に始まった国際原子力機関(IAEA)の年次総会で、日本代表団の山根隆治外務副大臣はこの新たなエネルギー政策を説明し、原発ゼロ方針は国民の広範な支持を得ていると訴え、国際社会に2030年代の原発ゼロを約束しました。

 ところが、わずか2日後の9月19日、政府はこのエネルギー戦略について、「柔軟性を持って不断の検証と見直しを行いながら遂行する」とする文書を閣議決定し、新戦略自体は参考文書にとどめ、閣議決定は見送ったのです!

 つまり、文書には「原発ゼロ」の文言は盛り込まれず、逆に「(原発などが立地する)関係自治体や国際社会と責任ある議論を行い、国民の理解」を得ることも盛り込まれ、戦略の見直しの余地のみが強調され、「原発ゼロ」の方針は見直しも含めて大きく後退することとなりました。

 ここまで大騒ぎしてきて、なんやねん、それ!? いったい、全国での意見聴取会や全国民にお願いしたパブリックコメントはなんだったのか。こんな民意を反映しない民主主義なんて民主主義の名に値しません。

 ここに至る経過では、経団連の米倉弘昌会長はこれまで「経済界の声を全く受け止めてもらえなかった」と「原発ゼロ」方針を決めた政府を批判し、「国家戦略会議」の民間議員の辞任を検討する考えを示すなど強く反発してみせました。ところが閣議決定が見送られた19日には原発ゼロは回避されたと歓迎しました。

 こんな人、辞任したいならさせればよかったんですよ。

 さらに、電力会社の労組を抱える民主党の支持母体である連合の古賀伸明会長からも原発ゼロに異論が出たことが、民主党を大きく揺さぶったようです。

 つまり、野田民主党政権は財界と連合に押し切られ、2030年代の原発ゼロでさえ言えなくなったというわけです。

2030年「代」の原発ゼロという野田民主党政権と、脱原発を言いもしない自民党総裁選5候補の呆れた戦い

国家戦略会議の民間議員を辞任すると脅迫した米倉経団連会長(真ん中)ら

 

 

 もともと、9月14日のエネルギー・環境会議でさえ、使用済み燃料の再処理工場がある青森県に配慮し、原発ゼロなら不要になるはずの核燃サイクルの当面維持を打ち出しています。また、建設中のJパワー(電源開発)大間原発と中国電力島根原発3号機の2基の事業継続を容認する方針を示し、2基が完成すれば50年代まで稼働できる計算になるため、「30年代の原発ゼロ」の目標と矛盾が生じています。

原発新設・増設中止原則にもかかわらず、着工済みの大間原発・島根原発完成を藤村官房長官が明言する不合理

 

 この核燃サイクル維持は「原発ゼロ」方針に懸念を示している米国にも、配慮したものだそうです。

 また、原子力の研究者や関連企業の技術者らが参加する「日本原子力学会」の秋の定期大会が19日、広島大で始まり、野村茂雄会長はあいさつで政府の閣議決定から「原発ゼロ」の文言が消えたことについて 「実現性が低い目標を定めて将来の選択肢を狭めるべきではない」と、その骨抜きぶりを歓迎しました。

 これぞ原発利権。国民無視で政官財学マスコミ一体となった米国盲従原子力ムラは健在です。

 しかし、むしろ、そういうことがはっきりしてかえってよかったと思います。どうせ民主党政権の命運もあとわずかですし、政治は何も変わっていないとわかって、いっそすっきりするじゃないですか。

 こうなったら、官邸前デモをはじめ、もう一回脱原発世論側が仕切りなおして、民主党政権も次の政権も原発ゼロを言わざるを得ないように押し込めばいいだけの話です。

野田首相が脱原発デモ主催者と面会 パブリックコメントの9割が原発0%支持! もう脱原発しかない!!

 


野田政権が本気で原発ゼロなんて言うわけないもんな。

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原発ゼロ 空手形に終わらせるな 09月18日(火)

 信濃毎日新聞社説

 政府が原発の将来の姿などを示した新エネルギー戦略を決定した。「2030年代に原発稼働ゼロを可能とする」との目標を盛り込んでいる。

 「原発ゼロ」を掲げた点は評価できるが、はっきりしない表現や矛盾した内容が目につく。経済界などが反発しており、努力目標に終わる恐れがある。実現には、法律に裏付けられた目標と具体的な工程表が欠かせない。

 次期総選挙の争点でもある。各党が曖昧さを排した明確な理念と政策を打ち出し、さらに論議を深める必要がある。

   <法律の裏付けが要る>

 新戦略の特徴の一つは、原発ゼロ目標を打ち出したことだ。

 (1)40年運転制限を厳格に適用(2)原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ再稼働(3)原発の新設・増設はしない―の3原則を掲げ、「30年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」と宣言した。

 政府は、30年の総発電量に占める原発の比率について、「0%」「15%」「20~25%」の三つの選択肢を掲げ、全国11都市で意見聴取会を開いたり、意見公募をしたり、かつてない規模の「国民的な議論」を試みた。

 新エネルギー戦略は、脱原発を望む強い世論に後押しされ、ようやくまとまったといえる。

 だが、「30年代」「可能とするよう」の表現は玉虫色だ。脱原発に向けた具体策も先送りされた。22年末までに全原発を閉鎖する法律を成立させたドイツのメルケル政権と比べ、野田佳彦政権の方針の危うさは一目瞭然だろう。

   <核サイクルを棚上げ>

 このままだと、政権が代われば方針が反故になりかねない。まして民主党には「公約破り」の前例がある。本気で原発ゼロを目指すというのであれば、首相は 根拠となる法律の成立に「政治生命を懸ける」べきだ。脱原発を掲げる他の政党とともに、国会で成立にこぎつけてもらいたい。

 新エネルギー戦略の特徴の二つ目は、核燃料サイクルの維持を盛り込んだことだ。

 青森県六ケ所村の使用済み核燃料の再処理工場を継続し、同県を廃棄物の最終処分地にしないとの約束を明記している。一方、福井県の高速増殖炉「もんじゅ」は、廃棄物を減らす研究施設にするとした。存廃について不透明となった印象は拭えない。

 原発で使用されたウランやプルトニウムを再処理し、利用するのが、核燃料サイクルである。このサイクルを担う主な施設が、青森県の再処理工場だ。「もんじゅ」は使った以上のプルトニウムを生産する「夢の原子炉」と位置付けられてきた。

 だが、再処理工場は高レベルの放射性廃液をガラス固化体にする過程に問題が生じ、本格操業に入れないままだ。「もんじゅ」も、ナトリウム漏れ事故をはじめトラブルが絶えず、再稼働にめどが立っていない。

 再処理工場は着工から19年、「もんじゅ」は27年である。巨額の投資を続けても、技術的な壁を越えられない現状に、核燃料サイクルは破綻しているとの声が高まり、見直しが求められていた。

 青森県は核燃料サイクル路線からの撤退によって、使用済み核燃料や高レベルの放射性廃棄物の最終処分地になることに強い警戒感を抱いている。再処理事業の継続には、国策に協力してきた同県への配慮がある。

 核燃料の再処理など原発の技術は、米、英やフランスとの連携で進められてきた。関係国とのこれまでの経緯も、サイクル路線維持の背景とみていいだろう。

 だが、「30年代にゼロ」というのであれば、その時点で核燃料は不要になる。燃料確保の観点からは、核燃料サイクルにこだわる理由はなくなる。

   <曖昧さ排した論議を>

 原発ゼロを宣言しておきながら再処理を続ければ、核兵器の原材料となるプルトニウムの生産と受け取られる懸念がある。原子力の平和利用という点でも、国際社会に対して説得力を欠く。

 中途半端な姿勢をあらため、政府・民主党は路線転換に向けた姿勢を示すときである。踏みこんだ決断を求めたい。

 福島第1原発の事故から1年半。大事故を起こしながら、原因や責任の所在も明確になっていない。再稼働や核燃料サイクルの是非、将来のエネルギー計画などをめぐる国会の議論も、国民の目から見て不十分だ。

 「曖昧な日本」という言葉が思い浮かぶ。作家の大江健三郎さんがノーベル文学賞を受賞した際の講演「あいまいな日本の私」からの連想である。あれだけの事故を起こしながら、多くのことが曖昧なまま時が過ぎてきた。

 野党の責任も大きい。原発停止を求めて、かつてない規模のデモが起きている。国会は、国民の声を正面から受け止めているのだろうか。事故を踏まえた新たな制度の構築は、国会の責務である。

 

毎日新聞 2012年09月19日 20時45分(最終更新 09月19日 21時16分)

 原子力の研究者や関連企業の技術者らが参加する「日本原子力学会」の秋の定期大会が19日、広島大で始 まり、野村茂雄会長はあいさつで「原発は重要な基幹電源。再生可能エネルギーとバランスよく利用すべきだ」と原子力推進の立場を強調した。また、政府の閣 議決定から「原発ゼロ」の文言が消えたことについて「実現性が低い目標を定めて将来の選択肢を狭めるべきではない」と、その骨抜きぶりを歓迎した。

 野村氏は19日の会議終了後、政府が14日に公表した革新的エネルギー・環境戦略について「核燃料サイ クルの継続や、将来の原発比率を不断に見直すことをうたっている点は評価できる」と述べる一方、「原発ゼロ」目標に対しては「再生可能エネルギーを過大評 価しており、達成可能か疑問だ」と批判した。

 

閣議決定見送りを歓迎=原発ゼロ、撤回余地とも-経済界

 政府が2030年代の原発稼働ゼロを柱とする「革新的エネルギー・環境戦略」の閣議決定を見送ったことについて、経済同友会の長谷川閑史代表幹事は19日の記者会見で「原発ゼロ撤回の余地を残したことは不幸中の幸いだ」と述べた。
 日本商工会議所の岡村正会頭は同日の会見で、閣議決定本文に「不断の検証と見直し」が明記されたことを「歓迎すべきだ」と評価した。経団連の米倉弘昌会長も記者団に対し「原発ゼロを回避できたのではないか」との見解を示した。

(時事通信 2012/09/19-18:56)

 

 閣議に臨む野田首相=19日午前、首相官邸
 政府は19日、原発ゼロ目標を盛り込んだ「革新的エネルギー・環境戦略」に関して、国際社会との議論を続けるといった今後の対応方針を 閣議決定した。関係自治体などに配慮し、新戦略自体は参考文書にとどめ、閣議決定は事実上見送るあいまいな 決着となった。

 対応方針では、新戦略を踏まえて関係自治体や国際社会と議論し、内容を不断に検証するなどの大まかな考え方を表明。

 政府は重要政策について文書全体を閣議決定するのが通例だが、今回のように文書を参考扱いにした場合、決定の拘束力は弱まり、政策の実効性も低下しそうだ。

 政府は14日のエネルギー・環境会議で新戦略を決定。「2030年代に原発稼働ゼロを可能とする」との目標を政府方針に初めて盛り込んだ。原発縮小に向け、新増設はせず、運転期間を40年に限る規制を厳格に適用することも明記した。

 一方、使用済み核燃料の再処理事業を続ける方針も示すなど、原発ゼロ目標と矛盾しているとの指摘が出ている。脱原発方針に対し、日本と原子力協定 を結ぶ米国は懸念を示し、原子力関連施設のある自治体も反発。経済界は見直しを強く求めており、戦略の中身だけでなく、政府の決定方法も不透明な形になっ た。

 (共同通信)

 

 

 政府が新たなエネルギー・環境戦略自体の閣議決定を見送らざるを得なかったのは、戦略の矛盾点に予想以上の批判が集 中したからだ。政府は使用済み核燃料や国民負担など「原発ゼロ」がはらむ問題点をあいまいにしたまま乗り切ろうとしたが、“身内”であるはずの連合会長か らも批判され、あいまいな決着を図らざるを得なかった。原発稼働ゼロなど戦略の抜本的な見直しを迫られることは必至だ。

 「別に何ら決定内容を変えたというものではない」(古川元久国家戦略担当相)「内容的にはエネルギー・環境戦略を閣議決定したと理解している」(枝野幸男経済産業相)

 今回の決定に対し、関係閣僚は19日の会見でこう強弁した。だが、閣議決定した内容は「不断の見直し」を前提としており、戦略が「未完成」であることを政府として認めたも同然だ。

 政府にとって大きな誤算だったのは「民主党の支持母体である連合の古賀伸明会長から異論が出た」(政府関係者)ことだった。さらに、経団連の米倉弘昌会長が国家戦略会議の民間議員の辞任を検討するなど、原発稼働ゼロに突き進もうとする政府を揺さぶった。

 今回の決定に対して、米倉会長は19日の会見で「閣議のなかで30年代とか、ゼロとかを論議されたふうには見えないので、(原発稼働ゼロの閣議決定は)一応回避できた」と評価。経済同友会の長谷川閑史代表幹事も「閣議決定されていないと理解している」との認識を示した。

 エネルギー基本計画のあり方を議論している総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)基本問題委員会の三村明夫委員長も新戦略に対し「矛盾だらけで決めようがない」と見直しを要求。政府のエネルギー政策は大きくつまずいた。

  今回の戦略策定にあたり、野田首相が脱原発を唱える市民団体と直接面会した。一方で、産業界の意向を「ワン・オブ・ゼム(全体の中の一つ)の意見にすぎな い」(枝野経産相)と軽視した。だが、エネルギー政策を構築するうえで、実際の資源確保や技術開発、設備投資を行う産業界や労働界との共同歩調は不可欠 だ。こうした現実を無視し、感情論に流されるまま戦略を打ち出した政府の見通しの甘さを露呈した。

 「政権が変われば、どうせ内容も変わってしまう」。決められない政治に振り回された官僚たちには徒労感も広がっている。

 

 

「原発ゼロ」世界に説明 IAEA総会開幕

 【ウィーン=宮本隆彦】国際原子力機関(IAEA)の年次総会が十七日、ウィーンの本部で始まった。日本代表団の山根隆治外務副大臣は「二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とする」ことを目標にした東京電力福島第一原発事故後の新たなエネルギー政策を説明した。

 山根氏は日本政府が事故後「国民が安心できるエネルギー構成を目指し、国民的議論の中で政策を見直してきた」と説明。原発ゼロ方針は国民の広範な支持を得ていると訴えた。一方で「情勢の変化に柔軟に対応する」と見直しの余地も残した。脱原発の過程でも、安全確保の人材育成や技術開発を約束した。

 日本の表明を受け、フランス政府代表は報道陣に「日本の決定を尊重する」と述べた。フランスは使用済み燃料の再処理で日本の核燃料サイクルに関わっており「率直な議論の必要がある」と述べた。韓国代表団は「日本の決定には驚いた。われわれには依然として原子力は重要だ」と述べた。

 原発ゼロ方針にはこれまでに、二二年までの脱原発を決めたドイツが「助言や支援が可能だ」(政府報道官)と歓迎。原子力分野の政策、産業の両面で日本と密接な関係がある米国はゼロ方針に懸念を表明している。

 IAEAの天野之弥事務局長は冒頭演説で、福島原発事故の包括的な報告書を一四年中に作成すると表明した。原発の安全確保には「昨年の総会で承認された原発の安全指針『行動計画』の実施が焦点となる」と指摘。事故を教訓に原子炉冷却のための代替電源の重要性が広く世界で認識されるなどの成果もあったと述べた。

 十七日の総会では、福島原発の現状を説明する特別会合も開かれた。総会は二十一日まで五日間の日程で開かれ、軽水炉建設が進む北朝鮮の核問題やイランの核開発疑惑なども協議する。


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4 コメント

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Unknown (K-T)
2012-09-20 01:34:44
この閣議決定の文言は首相自身が考えたとか。何色も混ざって汚い色に変わっています。規制委員会の人事に続いて得意の踏み倒し、イカレてます。
IAEAの年次総会(17日)で原発0を目指すと主張したばかりというのに、もはや国民だけでなく国際的にも相手にされません。
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Unknown (K)
2012-09-20 10:02:50
迷走してますね(^^;<政府。
あるいは建前廃止、本音継続でぶれない政策なんですかね?。
返信する
Unknown (通りすがり)
2012-09-20 11:00:21
政府が圧力を受けて方針展開したのは分かっているのだから、政府に文句を言っても無意味なのは分かりそうな事だと思いますがね。
それよりも圧力を加えた相手に文句を言わないといけないのに、なぜ誰もしないのでしょうかね?
相手が怖くて我が身可愛さに何も言えないのだったら、政府相手に言ってる文句なんて、白々しく見えてきますね。
まさか、政府に圧力を加えたのが誰か分からないとか、言い方が分からないでもないでしょうに。
素性を隠して文句を言うやり方なんて、いくらでもあるのですから、そうすれば良いのですよ。
まあ、文句を言ってる人達は、政府に甘え過ぎているのでしょうね。
返信する
↑ 政府に文句は言うべきです。 ( 浪速姫)
2012-09-20 14:14:41
 政府には国民の生活を守る責務があるからです。

 私企業は利潤追求が至上命題であり、経済活動の自由は「公共の福祉に反しない限り」認められています。
 しかし、その活動が、国民の生命・財産を著しく損なう、つまり「公共の福祉」に反する状況をもたらすなら、それを阻止する責任を、政府は国民から付託されています。 
 
 法に則った具体的な、実効性のある方策の遂行を政府に要求するのは国民の権利です。

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