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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

財界が消費税増税押しをした理由 消費税の輸出還付制度=戻し税を使った犯罪発覚

2012年10月30日 | 消費税増税反対!

 

 中古カメラ部品などの輸出入会社「ハナヤカ」(東京・板橋)などのグループ約10社が東京国税局の税務調査を受け、消費税の還付制度=「戻し税」を悪用して約4億円を不正に還付させたと指摘されたことが2012年10月30日、分かりました。同局は重加算税を含め約5億円を追徴課税したということです。

 消費税は国内で仕入れた商品を海外に輸出する場合、税関に申告すれば仕入れ時に支払った分が還付されます。関係者によると、同社などは税関に仕入れ額を過大に申告して還付される税額を水増ししたほか、輸出した商品を国内に送り返し、不正な還付申告を繰り返していたというのです。

 これまで不正還付として多かったのは、国内で販売したのに輸出を装う手口でした。しかし今回は、外見では値段がわかりにくいレンズを実際に輸出して税関 の通関証明を入手し、正当な取引に見せかけていたとみられます。この手口では書類などが整い、不正が見つかりにくくなるため、国税と関税当局は新手の不正還付の手口とみ て警戒を強めているということです。

 さて、実は、今回の不正に使われた、下の図のこの消費税の還付制度=輸出戻し税こそ、野田政権が消費税増税法案を強行成立させた理由の一つです。

財界が野ダメ内閣の消費税増税を歓迎する理由 輸出戻し税のおかげで消費税を増税するほど大企業は儲かる

 図

 

 輸出戻し税とは、企業の売り上げの内、外国への輸出では消費税は取れないので、その分の仕入れ原価に掛かる消費税分が国から還付される仕組みのことです。外国人に日本の消費税を負担させるわけにはいかないという理屈で、国内の部品仕入れ段階などで発生した消費税を国が後で戻す仕組みだと言えます。消費税を「輸出品に課税しない」ことが国際的なルールなのです。輸出品に課税しないのは、海外の消費者から日本の消費税をとることはできないからです。

 さて、輸出に消費税を課さない場合、輸出業者は仕入れの際に払った消費税分が「損」になってしまいます。その分を税務署が輸出業者に還付する仕組みを、 俗に「輸出戻し税」と呼んでいます。ですから、「輸出戻し税」の還付は、大企業に限らず、輸出を行うすべての業者が受けることができます。

 たとえば、上の図のように、ある企業が80億円で原材料や部品などを仕入れて製品に加工し、その製品を100億円で販売した場合を想定します。消費税率が5%であ れば、その企業は仕入れの際、代金の80億円に消費税分を加えて84億円を取引先に払ったということです。一方、販売する際には、代金の100億円に消費税分を加えた105億円を受け取ります。この企業は「売り上げにかかった消費税」=5億円と「仕入れにかかった消費税」=4億円の差額、1億円を税務署に納めます。

(全国商工会連合会 税金のページより)

 

 

 ところが、多くの輸出大企業は取引の実態として、中小企業や下請けに対して納品の際に「消費税分を安くしろ」などと単価を買いたたいています。その上で、「払わなかった」消費税まで、税務署から「還付」されています。

 実際に、輸出大企業は血税からお金を労せずして儲けられる「輸出戻し税」制度によって多額の収入を得ており、しかも、消費税が増税されればされるほどその額が膨らむのです。

 こうした還付金は約3兆円(2010年度)あり、消費税の総額(約12兆5000億円)の約3割に上ります。仮に10%に引き上げられれば還付金は単純計算で6兆円にも達するのです。

 こうした輸出企業の本社を抱えた税務署は徴収する消費税よりも還付金の方が多く、「赤字」になっています。たとえば、トヨタ本社がある愛知の豊田税務署は毎年1000億円程度の赤字です。税務署はトヨタに毎月、200億円近くを振り込まなければならず、遅れると巨額の利息が付くので大変なんだそうです!

 この問題を解決する最善の方法は、消費税自体を廃止することです。消費税率が上がれば上がるほど、大企業の「益税」は増え、中小下請け企業の負担は増えていくのです。輸出戻し税の実態は、中小企業から大企業への所得移転なのですから、こんな馬鹿げた税制は即刻中止すべきなのです。

田民主党政権とマスメディアが「大企業が望む消費税増税」に突き進む姿は原子力ムラそっくりだ

野田首相と消費税増税に賛成するすべての国会議員、財界、財務省、マスコミを心から心から心から軽蔑する


 財界が消費税増税に必死になり、野田首相が財務省の操り人形となって消費税増税に政治生命をかけたのは、上の図のように、消費税増税を法人税減税の財源にするためでした。しかし、さらに、この輸入還付税で労せずして輸出大企業が儲けることができる制度も、政財界が一体となって消費税増税を推し進めた理由なのです。

 福祉目的だと言いながら大企業だけが儲かり、対照的に中小企業は苦しくなる一方です。消費税の滞納率は5割にも上ります。これは事業者がわざと滞納しているのではなく、経営が厳しくて納めたくても納められない中小企業、自営業者が多いのが実態です。ズルズルと税率が引き上げられれば、滞納額も大変な額になるでしょう。

 福祉は充実していないのに、欧州並みに失業率が高くなり、国家は疲弊します。還付金制度だけで3兆円も無駄遣いになる制度を温存したまま増税などとんでもない話で、消費税自体を廃止するべきですが、少なくとも、増税だけは絶対阻止しなければなりません。 

 今回は脱税と言うことで中小の貿易会社が立件されました。しかし、本件は輸出戻し税の、ひいては消費税の多くの問題の末端の問題です。本当にこの制度を悪用しているのは輸出大企業なのです。

 財政赤字を解消するには、内需拡大が根本治療です。そのためには、所得税の累進課税率を上げ、富裕税も導入にし、大企業の内部留保にも課税して、そこから得た財源を福祉に投入し、富裕層・大企業に滞留した資金が国内で回るようにして、内需の拡大を目指すべきです。格差縮小は社会政策であるばかりでなく、経済対策でもあるのです。

 今回の消費税増税法案は成立しましたが、実施までにはまだ数年あります。これからの選挙で消費税増税に反対する諸党を選挙で勝たせ続け、消費税増税を阻止すべきです。そのチャンスはまだ十分あるはずです。

消費税増税法案成立 次の解散総選挙で賛成派を落とし、増税の阻止を!

 

 

この経済状況で消費税増税なんてしたら日本経済は即死です。

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同じ商品を何度も輸出入、消費税4億円近く不正還付

写真・図版

望遠レンズを使った不正還付の手口例

 【村上潤治】カメラの望遠レンズなどを輸出していた商社約10社が東京国税局の税務調査を受け、昨年までの1~3年間で4億円近くの消費税の還付を不正 に申告したと指摘されていたことがわかった。70億円超が不正還付を目的にした偽装取引と判断され、重加算税を含めて約5億円を追徴課税されたとみられ る。

 指摘を受けたのは「ハナヤカ」(東京都板橋区)など都内の商社約10社。ハナヤカは2006年、ほかの多くは10~11年に設立された。一部の会社は指摘を受けて修正申告したが、税務調査後に連絡がとれなくなった会社もあるという。

 消費税の場合、売り上げにかかった消費税額から仕入れ段階で負担した消費税額を差し引いて納める。輸出品は消費税を免除され、輸出会社は税務署に申告すれば、国内での仕入れ時に負担した消費税分の還付を受けられる。

 関係者によると、これらの商社は、1回の取引につき日本製の中古レンズ数十から数百本を、1本あたり十数万円で成田空港から香港に輸出。レンズは都内の 別の会社が香港から100円前後で輸入したものを、新品同様の値段につり上げて仕入れるなどしていた。一部では国内の中国人留学生を介してレンズを仕入れ たとするケースもあった。その際に支払った消費税分の還付を税務署に申告し、受け取ったまま、返さない商社もあるという。

 国税局は昨年、設立直後から毎月、レンズの取引で消費税還付を求める商社が相次いだため、調査した。すると、一つの会社が同じレンズを何度も繰り返し輸出していたケースが確認できたという。国内の仕入れ先には休眠会社や既に倒産した会社もあった。

 国税局は、一連の輸出入や売買が、当初から消費税の不正還付を目的とする悪質な仮装・隠蔽(いんぺい)行為を伴う取引と判断。還付申告額全額を重加算税の対象にしたとみられる。

 これまで不正還付として多かったのは、国内で販売したのに輸出を装う手口だった。しかし今回は、外見では値段がわかりにくいレンズを実際に輸出して税関 の通関証明を入手し、正当な取引に見せかけていたとみられる。書類などが整い、不正が見つかりにくくなるため、国税と関税当局は新手の不正還付の手口とみ て警戒を強めている。

 ハナヤカの社長は取材に「税務署に還付の申請が認められなかった。税務調査を受けて会社の経営をやめた。ほかは話せない」としている。 


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4 コメント

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質問 (ジェファーソン)
2012-10-31 12:12:56
いつも拝見させてもらってます。勉強になります。
私は、野田政権は人権侵害救済法を閣議決定した時点で、ゴミ以下だと考えています。

今回のブログに関して1つ質問があります。

>輸出戻し税こそ、野田政権が消費税増税法案を強行成立させた理由の一つです。
これが理由の1つである証拠はありますか?
証拠がないと確信がもてません。
返信する
理屈通りと言うか (H.KAWAI)
2012-10-31 18:04:47
○建前通りに考えれば、企業は生産者であって、消費者ではないので、消費税の負担は一切無い訳ですよね。
○とは言うものの内需に多くを依存する企業の場合は、売上の減少という形で影響を受けますよね。
○ところが、外需に多くを依存する企業の場合は、輸出に関しては消費税が課されないので、売上げの減少は僅かで、こうした企業が多く集まる経団連は消費税の増税に積極的な訳ですよね。
○かてて加えて、消費税の増税によって得られた税収は法人税の減税の財源となるという思惑があるので、消費税の増税はこれらの企業にとって、大変に魅力的な訳ですね。
○で、理屈通りだと輸出に係る消費税の戻し税は輸出企業の利益にはならないので、何かカラクリがあるんでしょうか。
○それから、その「ハナヤカ」の件は明らかな非違ですから、別の問題として考える方がいいのかなと思うんですけどね。
○又、「税関に仕入れ額を過大に申告して」は少し違いますね。税関に申告するのは「輸出価格」であって「仕入れ額」は申告しません。勿論、結果として「輸出価格」も過大に申告されていますが、輸出申告時に於ける審査はまずムリです。ですから税関も適正な輸出申告を確保する為に事後調査は行なっているハズです。
返信する
消費税増税には反対ですが (だめお)
2012-11-01 20:32:54
[多くの輸出大企業は取引の実態として、中小企業や下請けに対して納品の際に「消費税分を安くしろ」などと単価を買いたたいています。その上で、「払わなかった」消費税まで、税務署から「還付」されています。]

という表現は、上のチャートにある[仕入段階でちゃんと消費税が払われたのか] という表現と共に、間違いとは言い切れないですが、誤解を呼ぶ可能性がありますね。

H.KAWAIさんが上で述べられているように、「消費税」は、最後にモノを買って、そのモノを次の客に販売しない、「消費者」が100%負担するもので、モノを作ったり、流通させたり販売したりする立場の企業や個人は、国内販売であろうが、輸出であろうが、全く負担しません。 「消費者」が払うべき税金の支払い代行をしているだけ、と考えた方がいいです。(コピー用紙やガソリン代など、企業が「消費者」となる場合はその分の消費税は負担しています)

例えば僕が、壺を100万円で仕入れて200万円で国内販売すれば、仕入先に消費税を5万円払い、客からは10万円いただきます。 差し引き、手元に残った(10-5)万円は預かっているだけなので、後日税務署にもっていきます。   損も得もありません。 壺を作った仕入先は、僕からもらった(預かった)消費税5万円は税務署に持っていかねばならないので、(5-5=0) 損も得もなし。 税務署には合計10万円入り、それは客が払った10万円と一致します。  本当は、200万円の壺を買った客が、僕には200万円だけ払い(僕も仕入先に100万円だけ払い)、消費税10万円は直接、税務署に持っていけばわかりやすいのです。

これが輸出なら、客から10万円いただけないので(これは述べられているように、国際ルールです)、僕は、(0-5)万円預かった、つまり5万円立て替えていることになるので、後日税務署から(税関ではありません)「還付」してもらいます。

輸出大企業も「消費税は払っている、正確には、「本来払うハズだけど払わなくてよい客」の代行をして払っている」のです。 払った、という書類がないと、「還付」もあり得ません。 嘘の書類だと、帳簿と矛盾して、まず必ず挙げられるので、リスクが過大に過ぎます。 「消費税は」仕入先に払っています。

ある輸出大企業が500億円還付を受けているとすれば、同社は仕入(など)時、既に同額の500億を仕入業者に支払っている(少なくとも帳簿上は)はずです。  また、還付された「立て替えていた税金」は、その輸出企業にとって、損にも得にもなっていません。  貸したお金を返してもらうだけですから(経理上、資産の分類が変わるだけ)。  よって、還付される消費税は、輸出企業の「儲け」にはなりません。  従って、消費税が15%になろうと、30%になろうと、高くなるほど輸出大企業が「儲かる」、とは、ならないと思います。  輸出に対する「還付」自体は正当です。

ただし、問題とされるのは、「円高」「不景気」「競争力」「海外調達」「ギリシャ」「中国」などの理由(または口実)で、(あたかも消費税分払わないかのように)下請け単価を買いたたくことですが、その時に「消費税分くらいの値引き」「消費税込の単価」を要請するとしても、「消費税をまけろ(払わない)」とは、まともな企業なら言うことはないはずです。   大企業と下請け、孫請け、ひ孫請けと続く力関係を市場原理に任せておけば、「買いたたき」は消費税が何%であっても続きます。 なくしても続きます。 仕入先への「買いたたき」と非正規従業員の「買いたたき」は同根ですし、いわゆるグローバル化は、その大きな推進力になっています。  消費税の有無やその税率とは本質的に無関係ではないでしょうか。

財界が消費税アップにご執心なのは、法人所得税を減らして欲しい(その分株主への配当を増やす)のと共に、国の財源が増える(減らさない)ことによって「分け前」(大企業有利な公共事業とか、税金控除とか)が期待できるからでもあるでしょうし、やがて健康保険や年金など、国民の福祉の(消費)税による負担を増やし、現在半分もっている、企業負担分を軽減させたいからでもあるでしょう。

国の財源が増えること自体、悪いことではありません。 問題は、その使われ方。 来年から、「復興のため」として、個人ひとりひとりの所得税が上がります(同じ給与なら手取りが減ります)。 さ~て、それがどんな使われ方がされるのか。

一方、消費税や個人の所得税を払う方の「可視化」も強く望みます。 消費税の「可視化」とは、外税にして、例えば100円の豆腐一丁に、5円なり、10円なり、消費税の額が明示されること。 所得税なら、給与からの天引きをせず、一旦全額支給され、財布にお金を入れた後、自分で税務署にお金を払いにいくこと(コンビニででもいい)。  自分がどんな税金をいくら負担しているかを知る「可視化」をしないのは、いわば愚民政策だと考えます。  日本の国民は、おひとよしというか….^^;
(単純化したので一部不正確な箇所があるかもしれません)
返信する
自公政権 3分の2 参議院 関係ないのかなぁ (村石太ダー&コピーマン&ムリヤリダー)
2012-12-27 20:24:53
消費税増税 倒産 で プログ検索中です。
安部内閣 どんな国会に なるのでしょうか?
政治の大切さ。 選挙の大切さ。
政治研究会(名前検討中
国民は 社会保障で 消費税増税を 選んだのかなぁ?
社会保障とは どんな保障だったのだろうか?
消費税増税すると 倒産する会社などは どれくらいあるのだろうか
何人 失業者になるのだろうか?国防軍とは具体的になんだろうか?
税収(歳入)と倒産~。
有権者は どういう基準で 今回 選挙へ 行ったのだろうか?国民が選挙で選んだ 4点セットの結果。
思い返せば 3% 5% で 倒産 閉店したところがあるかなぁ?
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