http://ised-glocom.g.hatena.ne.jp/ised/06010409
VHS vs. ベータマックス*24の場合は、技術的にどちらが良いのか、アライアンスの話であるとか、アダルトビデオがキラーコンテンツだったなど諸説乱立しており、結局ネットワーク効果が決め手なのかは定かではないのですが、こういった場合に教科書で必ず引き合いに出されるのがキーボードのQWERTY配列です*25。
もともとQWERTY配列というのは、昔のタイプライターのときに鍵盤が絡まりやすかったため、それを絡まないようにわざと打ちにくくなっている配列なんですね。タイプライターはその後の技術革新で鍵盤が絡みにくくなりましたし、キーボードの場合は電気的なスイッチでソフトウェア的にはどれも等価なので、わざと打ちにくくする必要は全くありません。実際、より分かりやすくてタイプ速度の速いDVORAK配列というのが発明されたのですが、全く普及しませんでした。なぜなら人々がみんなQWERTY配列に慣れてしまったからです。嘆かわしいことに、わが国ではこのQWERTY配列でもってローマ字入力というさらに非効率な入力を行うことが非常に一般的です。わたしは小学校の終わりから高校まで富士通のOASISというワープロを使っておりまして、これは親指シフトという非常に優れた入力方式を持っておりました。だいたいローマ字入力よりも倍近い速度で入力できますので、自宅のデスクトップではいまも親指シフトキーボードを使っているんですけれども、ノートPCは仕方なくQWERTYでローマ字入力しています。この非効率な入力による経済損失は、それはもう大変なものではないでしょうか。
日本語のキー配列は当初JIS配列という、明治時代の外交官であった山下芳太郎氏が、1922年に米国のアンダーウッド社に発注した配列を元に改良が加えられたものです*26。その後、親指シフトやナラコード、トロンキーボードのような独自方式の他、新JIS配列という親指シフトの影響を受けたタイプ数の少ない配列も提案されたのですが、いずれも普及することなく、JIS配列のキーボードでローマ字入力という、ぱっと分かりにくいし効率的ともいえない方式が一般的となってしまっている訳です。こうして、あくまで偶然の初期条件の下で普及してしまったものが、後世まで支配的になり、他の標準や規格などが出現しにくくなることを「経路依存性」*27といいます。
クレイトン・クリステンセンは『イノベーションのジレンマ』(翔泳社、増補改訂版 2001年 asin:4798100234)のなかで「破壊的イノベーション」*28という概念
どちらかというと魅力のない全く別のエコシステムで育っていき、技術が成熟する過程で利益率の高い市場にも進出してくる
経路依存性の守護者
rocking OR rocked in qwerty dvorak economy layout
locking OR locked in qwerty dvorak economy layout