どんこつの手帖

私の日記であり、エッセイです。

映画「花の生涯 梅蘭芳」を観る

2009-04-27 22:27:10 | Weblog
梅蘭芳(メイ・ランファン)の名はずいぶん前から知っていた。しかし、名前を知っているというだけでは、何も知らないというに等しい。今回この映画を見て、そのことを痛感した。
京劇の名優で、日本にも関わりのある人であった。中国人民に絶大な人気のある人であった。
その美しさはもちろん、印象的な場面は数々あった。西太后の誕生日に赤い服を着なかったために処刑された伯父梅雨田の姿。古い決まりに縛られず生身の人間を演じるべきだと主張する邱如白の生き方。彼は梅蘭芳の舞台に魅せられ、司法長官の地位も家も捨てて、梅蘭芳と義兄弟の契りを結んだ。
伝統を重んじる師十三燕との対決。十三燕の「負けることは恥ではない。恐れることが恥なのだ。」という言葉もいい。円熟期を迎えた梅蘭芳のアメリカ公演の成功、男形女優孟小冬との出会いと別れ。
とりわけ妻の福芝芳が孟小冬の家を訪ね、別れを迫り、訴えるところは圧巻であった。「彼はあなたのものでも私のものでもない。観客のものよ」という芝芳の言葉は、梅蘭芳の存在理由を言い当てて妙。
京劇をやめて上海に移った梅蘭芳を占領政策に利用しようとする日本軍と、あくまで抵抗する梅蘭芳の姿には粛然とさせられた。
この映画は、京劇の女形梅蘭芳の波乱の生涯を描いて、観る者を圧倒する。しかし、ドキュメンタリー風で、話の流れに飛躍を感じさせるところがあったり、字幕の消えるのが速かったりして、戸惑うところもあった。それにしても、もう少し京劇の場面を長く写して欲しかった。京劇に初めて出合ったような私には。