昭和三丁目の真空管ラジオ カフェ

昭和30年代の真空管ラジオを紹介。
アンティークなラジオを中心とした、自由でお洒落な、なんちゃってワールド♪

東芝 マツダラジオ  かなりやB 5LB-49

2010-09-23 | 東芝 かなりやシリーズ
東芝かなりやシリーズの中にヤフオクに出品されることも稀な “レア物”はあるが、それを越えた、“幻の機種”が存在する。東芝かなりや のコレクションを開始して4年目にして、初めてヤフオクに出品されている“幻の かなりやB”を発見!! 1年半振りに入札を試みた。 
 かなりやシリーズは、昭和29年(1954年)以降、約10年間にわたり約30種類以上の機種が製造された訳だが、まず かなりやA~F の中波専用6機種を発売。
今回入手した かなりやB(5LB-49) は、初号機 かなりやA(5MB-42) に続く2番目の機種である。 
    
    ▲東芝かなりやシリーズの中でも超レアな、幻の かなりやB
 しかし当時のパンフレットに 『かなりやA』と『かなりやB』は記載されておらず、この2機種の発売期間は極めて短命に終わったものと思われる。
1号機の かなりやA は同シリーズの企画に急きょ間に合わせたためなのか、オートトランスと同調回路に糸掛け減速機構を採用していたが、反面、2号機の かなりやB(5LB-49) ではトランスと同調回路の減速機構を取り払い、大幅なコストダウンを図った「かなりやシリーズ」の原点と言うべき機種である。
    
    ▲埃や汚れは付着して汚いが、パーツの欠品はない
 実際、真空管ラジオのコレクションを始めて4年、ヤフオクへ出品される初期の かなりやシリーズは、“レア物”として数万円の落札金額になるのだが、『かなりやB』は出品されたのを見たことすらなかった。 
まさにコレクターにとっては、「幻の かなりや」と言われる所以だ。
ちなみに かなりやAとBの2機種の裏蓋には急拵えの「かなりやシール」が貼られ、「かなりや」の名称が印刷されたのは、かなりやC以降である・・・ ^^;
    
 過去、出品頻度の少ない機種ではコレクターの方と競合のため何度もとり逃がしていたトホホな店長だが、今回は出品タイトルがコレクターに発見されにくい「芝浦電気 SHIBAURA 昭和レトロ 真空管ラジオ」としか記されていない幸運にも恵まれ、極端な競合入札や価格高騰もなく、予算内(居酒屋1軒分♪ ^^;)で捕獲できた。

 かなりやシリーズの発売されるわずか2年前の昭和27年(1952年)、三洋電機が日本初の熱硬化性樹脂プラスチック製キャビネットのラジオSS-52を発売するまで、日本製ラジオは木製ケースを使った定型的なラジオしか出回っていなかった。
しかしプラスチック射出成形金型の導入により、真空管ラジオはメーカーや機種ごとに独自性を求めたデザインが模索され、50年以上経った今、そのオリジナリティが昭和を懐かしむ真空管ラジオフリークを魅了する。
    
 アメリカ製ラジオのベークライト・キャビネットを模倣したチャコール・ブラウンのキャビネットにゴールドを加えて豪華さを演出しようとしているが、似て非なる仕上がりは、ジャパネスクの独自な雰囲気を醸し出す。
かなりやシリーズを通じ、昭和高度経済成長期のマーケティングのカオスを垣間見つつ、その時代を生きてきた人々の情景に思いをめぐらせる楽しみは格別である。

  メーカー: 東京芝浦電気(TOSHIBA)

  型 式 : かなりやB 5YB-49

  サイズ : 高さ(約15cm)×幅(約28.5cm)×奥行き(約13.5cm)

  受信周波数 : 中波 530KC~1605KC

  使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)
           12AV6(検波&低周波増幅)、35C5(電力増幅)、25MK15(整流)

    
    ▲パーツの欠品も無く、外観はかなり程度の良い部類
 宅急便で届いた かなりやBは、旧家の蔵にでも保管されていたのだろうか、プラスチック製キャビネットは、50年の間に付着した埃と汚れ、軽い擦り傷があるものの、パーツの欠品も無く、外観はかなり程度の良い部類である。
裏蓋を開けると、キャビネット内、シャーシやバリコンには50年間の埃が堆積している。真空管はすべてマツダ製、この時期に発売された真空管ラジオは現在では手に入りにくく流通価格の高い整流管25MK15が抜き取られているため、状態が心配だ。
    
    ▲かなりやAのシャーシを流用、右端の整流管25MK15が抜き取られている

東芝 マツダラジオ  かなりやVS 5LP-426

2009-03-21 | 東芝 かなりやシリーズ
昭和32年(1957年)、東芝は かなりやシリーズに、当時の新技術であったプリント基板を採用した中波専用ラジオ かなりやKと かなりやX、Y、Zの3機種を送り出した。この流れを汲み発売された、短波にも対応したmT管トランスレスラジオ かなりやVSをご紹介する。 
        
 プリント基板タイプの かなりやシリーズは、当初AM中波のみの機種だったが、ユーザーのニーズに応え中波/短波2バンドに対応した機種も発売された。かなりやシリーズの機種名は、発売された順番に中波専用機には『かなりやA』 『かなりやB』・・・といった1文字のアルファベット順による通し名を、また中波/短波2バンド機は『かなりやAS』 『かなりやBS』・・・というようにアルファベット+S(Shortwave:短波)の2文字を冠し機種名としていた。
        
 この原則からすると、今回ご紹介する かなりやVSは、中波/短波2バンドに対応した後期の機種となるはずだが、かなりやX~Zと同時期の発売と思われる。このように かなりやシリーズの機種名は、必ずしもA~Zの順番でなく、また欠番があったりもする「いい加減な適当さ」も、『昭和のゆとり』と考えれば微笑ましくもある。
        
 かなりやX~Z 3機種がオークションに出品されることは極めて稀であり、今回入手した かなりやVSの出品に出会ったのは3年間で僅か2回ほどしかない、超ウルトラスーパー貴重品だ!

 キャビネット左にスピーカー、右側に周波数同調用大型ダイヤル、その右下に電源スイッチ兼音量調整ボリュームをレイアウトしたデザインコンセプトは同年に発売されている かなりやX~Zとほぼ同じ。
V字をモチーフにしたシックで華やかさのあるバーガンディー(クレムゾン・レッド)/ホワイトを基調としたツートーンカラーの引き締まったボリューム感あるキャビネットと、透明プラスチックを使った周波数同調用大型ダイヤルの織りなす造形美が、魅力的だ。
        
 この大型ダイヤル、実はバリコンのシャフトが写真のように2軸構造となっており、外側は目盛ダイヤルに直結、突出部が中央の白い微調ダイヤルと連結している。中波/短波2バンド対応のかなりやシリーズは多数あるが、このようなチューニング微調整機構の付いた かなりやは、本機のみである。
        
" モノづくり "とは正直なもので、デザインや機能・構造といった当時のメーカー側の気合が製品に如実に顕れ、50年以上の歳月を経た今でも初期型かなりやシリーズはコレクターの心を捉えて離さない。

  メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)かなりやVS 5LP-178

  サイズ  : 高さ(約15cm)×幅(約27cm)×奥行き(約11.5cm)

  受信周波数 : 中波 530KC~1605KC/短波 3.9MC~12MC

  使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)
           12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 従来、真空管ラジオは、シャーシと呼ばれるアルミ製やスチール製のボックス形状の躯体に、真空管をはじめとする主要パーツを配置し、コンデンサー、抵抗等はラグ板を介して空中配線する方法が一般的であった。ところがトランジスタの開発・実用化にともない、配線作業効率が高く、品質も安定する「プリント基板」の量産技術が実用化され、従来のシャーシを使った実装方式に代えて、プリント基板を採用した真空管ラジオが各社から登場した。
        
 かなりやシリーズでも本機をはじめとする昭和30年代前半の数機種でプリント基板を採用したが、熱によるプリントパターンの剥離が生じやすく、後に発売された東芝かなりやシリーズをはじめ各社の真空管ラジオの実装方式はシャーシタイプへと戻っている。 
        
 中波専用ラジオである かなりやX~Zのプリントパターンを流用したためか、かなりやVSでは基板上に短波受信関連のパーツを強引に追加した部品配置に無理があり、12BA6など抜き挿し不可能なレイアウトだ。
        
 電子回路のプリントパターン設計などという難しい世界とは無縁な店長だが・・・インダストリアル・デザインの立場でこのプリント基板を見る限り、当時は人の物理的な形状や動作、生理的な反応、心理的な感情変化などを研究し、道具や機械などを人間に適したデザインにする人間工学的な設計手法は、まだ認知されていないか、発展途上段階だったと思われる。
        

 この赤いキャビネットのかなりやVSを眺めていると、まだ学生だった頃、店長が在籍していた研究室(国際関係近代史)にやってきたロシアからの留学生を思い出す。 
その日、教授に連れられ教室に現れた彼女は
  「ハジメマシテ! ワタシ サンクトペテルブルク カラキマシタ ターニャ デス♪」 
とたどたどしい日本語で挨拶したが、あまりの突然の出来事に研究室のメンバーはただただ呆然・・・・。   
たまたま空いていたボクの隣に座り、ロシア語で「ヨロシク~」らしき言葉を交わしてきたのだが、焦った店長は、
  " Ca・・・ Can you speak Japanese or English ? "
ロシア人相手に思いっきり英語で尋ねてしまいました。
  "Извините.Я не говорю по-русски." 
 「ターニャは、"ごめんなさい、ワタシ日本語は分っかりませーん"と言ってるぞ!
  彼女、英語は少し分かるはずなのに、君の英語の発音は全然通じてないみたいだなぁ」
老教授のコメントと店長の間抜けな応対に、研究室のメンバーは苦笑・・・・ それがターニャとの初めての出会いだった。 
        
        ▲(-_-;)/(+_+;)\(-_-;) オイオイ 昔の写真見て、ナニ黄昏てんだよぉ~
 翌日校内を歩いていると、
" Доброе утро. Как дела? " (おはよう!元気?)
外国語で呼び止められ、振り返ると身の丈170cmはありそうな彼女が笑顔で立っていた。
" グ... Good morning. 違った...Таня,Доброе утро." (ターニャ、おはよう)
" Очень! Вы говорите по-русски? " (すごい!ロシア語喋れるの?)
" No ! ・・・Нет.Я не могу говорить по-русски. " 
 (No!・・・ニエット。俺はロシア語が話せません)
        
        ▲モスクワ放送から送られてきたベリカードとペナント

東京芝浦電気(TOSHIBA)  かなりやGS 5YC-426

2008-06-13 | 東芝 かなりやシリーズ
かなりやシリーズの中でも俗に言う「レア物」の機種がある。今回ご紹介するかなりやGSは、発売された昭和35年当時の消費者から見ると先進的すぎる?デザインだったのか、ヤフオクに出品されることも稀な、まさにレア物の機種である。 
        
        ▲東芝かなりやシリーズの中でも超レアな、かなりやGS
 写真のように2段重ねキャビネット上段にスピーカー、下段に電源スイッチ付音量調整ツマミ、選局ツマミを左右対称に配置したシンメトリックな意匠は、’5~60年代のアメリカ車のダッシュボードとカーラジオや現代建築を連想する。もしかするとエリミネーター時代の受信機を意識したデザインなのかもしれません。(誰だ~?墓石を連想する・・・って言ってる口の悪い人は!? 笑) 
 真空管ラジオ、とりわけ 東芝かなりやシリーズのコレクションを始めて3年目になるが、この かなりやGSが出品されているのを見たのは3回目。過去2回は自主規制予算の4~5倍以上という高値がつき、やむなく撤退した。
今回もどれだけ高騰するのか心配だったが、何と!予算内で無事に落札できた。オークションでラジオを落札する際は、決して “熱く”ならず、予算を超過したら、次回の出品を待つ余裕が必要だろう。このところ以前に捕り逃がした かなりやを予算内で相次ぎ数台捕獲している。
        

  メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)かなりやGS 5YC-426

  サイズ : 高さ(約15cm)×幅(約27cm)×奥行き(約11.5cm)

  受信周波数 : 中波 530KC~1605KC/短波 3.9MC~12MC

  使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)
           12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 宅急便で届いた かなりやGSは、旧家の蔵にでも保管されていたのだろうか、プラスチック製キャビネットは、50年近くの間に付着した埃と汚れ、黄ばみ、軽い擦り傷があるものの、パーツの欠品も無く、外観はかなり程度の良い部類である。
        
        ▲埃や汚れは付着して汚いが、パーツの欠品はない
 以前ヤフオクで見たかなりやGSはブルーグレー系の塗装だったが、今回出品されているモノは、ライトベージュ系のカラーだ。
下段キャビネット上部の左右には、オレンジと緑色の凸状の部品が配置されているが、何だろう・・・? 今までの かなりやシリーズには無いパーツだ。
        
        ▲バンド切替表示用凸状パーツとバンド切替/選局用同軸二重ツマミ
 周波数表示インジケータをよく見ると、中波/赤、短波/緑で色分けされている。たぶん中波/短波を切替えると、左右のランプが点灯する仕組みになっているようだ。またシンメトリックに配置された左右のツマミのうち、右側のツマミは同軸二重となっており、外側はバンド切替スイッチ、内側が選局ツマミの機能になっている。
        
 この50年近く放置されていた かなりやGSのやつれた姿に「アメリカンドリームを夢見て破れた女」の姿が重なり、高校生から大学1年まで付き合っていた同級生の彼女のことを思い出す。ボクは県外の大学へ、彼女は県庁所在地の短大へ進学し、お互いに連絡も途絶えがちになっていた。(今のように携帯電話もありませんでしたし・・・)
ジーンズとTシャツの似合う彼女が岩国駐留の海兵隊員と恋に落ち、青い目の彼氏とアメリカに渡ったが数年後離婚したことを風の便りに聞いた。
        
浜田省吾のアルバムに、「いつかもうすぐ」というナンバーがある。
原曲「Someday Soon」は、カナダのカントリー・フォークデュオであるイアン&シルビアの1965年に発表され、多くのシンガーがカバーしている。
        

       いつかもうすぐ 作詞 浜田省吾  作曲 Ian Tyson

    ♪あの娘は米軍キャンプのそばにある 小さな店で働いてた
     僕らは約束した この街出ようねと いつか いつかもうすぐ

     あの頃僕はまだ18で 望めば全てが叶うと信じてた
     どうして僕を待ってくれなかったの こうして今 迎えに来たのに

     あの娘は青い目の若い兵隊と 5月に行っちまった California
     今でもこの街で独り呟いてる いつか いつかもうすぐ

 ラジオから流れるこの歌を初めて聴いたとき、当時のボク自身の体験とシンクロし、身震いした。この作品に描かれた、将来を誓ったはずの彼女を米兵に横取りされ、アメリカの圧倒的な強さ・魅力の誘惑に負けてしまう彼女を通して、自分が無力だと分かっていても、それを認めたくない、という少年の心が切ない。また失恋した痛手に凹みながらも、自分たちのちっぽけな世界から飛び出していった彼女の行動力を心のどこかで羨ましく思っている少年の複雑な心情にもググッときてしまう。
        
 あれからずいぶん経ち、時が流れ 彼女の居場所ももう知らない。風の便りも途切れてしまったけれど、あの頃の日々を胸の中に、このラジオを修復することを決意した。(←店長、また自分の思い出回想&妄想モードになってるし・・・)
        
        ▲裏蓋左下にバリコン止用ビス穴が・・・設計の不具合対策だろう(笑)
 裏蓋をよく見ると、左下に丸い穴が開けられ、バリコン止具(ビスとスペーサ)が飛び出している。生産ラインに乗った時点で、裏蓋が閉まらないことが判明し、こんな対策を施したのだろう。
裏蓋を取外すと、清掃された様子はなく、キャビネット底部やシャーシ上の真空管、IFT、バリコンには多くの埃が堆積しているが、こんなラジオの方が、意外と簡単に修理できたりする。
長年放置され、シャーシの一部に錆が浮いた かなりやGSに、つい感情移入してしまう。
        
        ▲真空管は一部NEC製に交換され、ケミコンも暴発寸前の危険な状態

東芝(マツダラジオ) かなりやK 5LP-108

2008-04-27 | 東芝 かなりやシリーズ
昭和32年(1957年)、東芝はmT管トランスレスラジオ かなりやシリーズに、当時の新技術であったプリント基板を採用した かなりやKを発売。続いて、かなりやX、Y、Zの3機種を相次いで世に送り出した。 
 昭和30年代、トランジスタの開発・実用化に伴い、配線作業効率が高く、品質も安定する「プリント基板」の量産技術も実用化され、 真空管ラジオにいち早くプリント基板による実装方式を採用した機種が、今回ご紹介する かなりやKである。
        
        ▲今回入手した東芝(マツダラジオ) かなりやK 5LP-108
 キャビネット左にスピーカー、右側に周波数同調用大型ダイヤル、その下に電源スイッチ兼音量調整ボリュームをレイアウトしたデザインコンセプトは同年に発売されている かなりやGと似ているが、かなりやGの実装方式は鉄板型シャーシを使い、回路設計も電力増幅管に35C5を使うなどまったく異なっている。
またキャビネットの色も写真では同色に見えるが、かなりやGはダークブラウン/ホワイト、かなりやKはヤニの黄ばみでコーティングされダークブラウンに見えるが、実はブラック/ホワイトのツートンカラーなのだ(笑)
        
        ▲デザイン・コンセプトがそっくりの かなりやG(左)とかなりやK(左)
 従来、真空管ラジオの回路を構成する実装は、シャーシと呼ばれるアルミ製やスチール製のボックス形状または鉄板状(コストダウンのため?)の躯体に、真空管をはじめとする主要パーツを配置し、コンデンサー、抵抗等はラグ板を介して空中配線する方法が基本とされていた。
        
        ▲スチール製シャーシのかなりやG(左)とプリント基板のかなりやK(右)
 ところがトランジスタの開発・実用化と同時期、配線作業効率が高く、品質も安定する「プリント基板」の量産技術が実用化され、従来のシャーシを使った実装方式に代えて、プリント基板を採用した真空管ラジオが各社から登場した。この東芝の「かなりやK」もその1台であり、かなりやX、Y、Zを含め、中身は同じでもキャビネットデザインの異なる4種類の機種を同時期に発売している。
        
        ▲左上から かなりやX、Y、左下から かなりやZ、かなりやG
当時の東芝ラジオの宣伝広告には次のように記されている。
[ 東芝技術員の誇る五大特長 ] 
1.完全プリント配線でほとんど故障がありません。又全部品とも高性能で当たり外れがありません。
2.経済的なトランスレス回路で僅少な電気代ですみます。
3.スマートな大型つまみ付で選局が正確にしかも迅速に行えます。
4.特許による新スピーカーとキャビネットの前面が大きなバッフル効果を持つように設計されていますので素晴らしい音のラジオが楽しめます。
5.近代的な新鮮でお部屋をぐっと明るくするニュースタイルです。
 
 このように謳われているが、プリント基板製造技術も未熟で熱に弱く、部品交換時にプリントパターンの剥離が生じやすかったため、後に発売された東芝かなりやシリーズをはじめとする各社の真空管ラジオの実装方式は、プリント基板からシャーシタイプへと戻ってしまう。
        

  メーカー:東京芝浦電気(マツダ)『かなりやK 5LP-108』

  サイズ : 高さ(約13cm)×幅(約23cm)×奥行き(約11cm)

  受信周波数 : 中波 530KC~1650KC

  使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12AV6(検波&低周波増幅)
           30A5(電力増幅)、35W4(整流)
 
 「同じようなラジオを何台も集めて、何が楽しいのか?」と怪訝そうな眼差しを向けられても、欲しくなってしまうのがコレクターの悲しい性・・・ 真空管ラジオのコレクション&レストアに手を染めて以来、捜し求めていた かなりやKをヤフオクで初めて発見! だがこの かなりやKは、「どこに放置されていたんだ?」と叫びたくなるほど汚れた姿を晒していた・・・
ボクの確固たるポリシーでもある居酒屋1軒 or キャバクラ1セット!を多少オーバーしても手に入れたいと思っていたが、何と通常の入札よりやや安めの価格で難なく落札できた♪
        
        ▲酷い汚れの かなりやGだが・・・
 宅配便で届いた かなりやKの一体形成型プラスチック製キャビネットは、50年の間に付着した酷い汚れ、黄ばみに加え側面に一部亀裂も入っている。パーツの欠品は無いものの、外観は決して程度の良い部類ではない。電源コードはカチカチに硬化しており、危険極まりない状態だ。
        
 裏蓋を取外すと、清掃された様子はなく、キャビネット底部や真空管には埃が堆積している。すべてマツダ・ブランドの東芝純正品が使われており、目視点検する限りではブロックコンデンサほかプリント基板、パーツ類の劣化は見受けられない。
        
 通常は周波数同調用大型ダイヤルと電源スイッチ兼音量調整ツマミを抜き取り、プリント基板、イヤホンジャック、スピーカーを順次取外すのだが、この かなりやKはキャビネットの溝に大型ダイヤルが埋め込まれた構造のため、プリント基板を取外すと同時に大型ダイヤルからバリコン軸を抜き取る必要がある。
        
 プリント基板を取外すために取付ネジを回すと、パキッという鈍い音が2度発した。どうやら基板を支えるキャビネット一体形成部分が割れたようだ・・・
案の定、写真のようにプリント基板を取付けるブーム部とスピーカ取付け部のプラスチックが4個、割れて転がり出てきた。
        
 キャビネットから取外したプリント基板上のパーツ、イヤホンジャック、スピーカーには、50年分の埃が堆積している。刷毛と工業用アルコールを使い、丹念に清掃した。朝夕は寒いが、太陽の照っている時間帯は暖かく、ラジオの修復作業には最適な季節になってきた。
        
 とりあえず硬化した電源コードと電源回りのコンデンサを交換し、真空管のヒータに断線のないことを確認。テストのために電源を入れてみた。パイロットランプと5本の真空管のヒーターがやさしい光を放ち、点灯。はたしてこれだけの部品交換だけで鳴るだろうか・・・しばらくするとスピーカーから空電ノイズが聞こえ、選局ダイヤルをゆっくり回すと、地元の民放中継局(1KW)が聞こえてきた。
        
 パイロットランプ取付用ゴムブッシュが熱で消失?しており、取付けようにも在庫の待ち合わせも無い。このことを親切なお師匠様にメールでボヤいたら、何とゴムブッシュやゴム足等をお送りいただき、ジャスト・フィットで感謝、感激♪
        
 キャビネットから欠落した取付ネジ凹部(一体形成部品)を接着剤で補修した。一度破損したプラスチック部品の強度は弱くなる。取付け時に再度欠落しないか不安が残る。
        
 いよいよ掃除屋店長の出番だ。(笑) 中性洗剤とハンドタオルで大まかな汚れを落とし、希釈したマジックリンで塗装が溶け落ちないように拭いてヤニと汚れを除去する。しかし今回の汚れはキャビネットの塗装の中に染込み、そう簡単には落ちない。コンパウンドを使って薄皮を剥ぐように、丁寧に汚れを除去する。
キャビネットと選局ダイヤルの擦れを防ぐフェルトは硬化し朽ちていたため、百円ショップで習字下敷用フェルトを購入。裁断し、代替品とした。
        

東京芝浦電気(マツダラジオ) かなりやF 5LC-74

2008-01-24 | 東芝 かなりやシリーズ
  某日、何気にYahooオークションを見ていると、黒いエッジの効いた直方体のプラスチック・キャビネット正面に走る金色のライン、右側には透明円盤状の周波数表示を兼ねた選局ダイヤル・・・「これ、かなりやFじゃん!」 思わず叫んでしまった。
 かなりやシリーズのコレクションを始め約2年、コレクターに人気の高い同シリーズ初期のモデルは相場が高く、入札価格も居酒屋1軒 or キャバクラ1セットを上限と自己規制してオークションに参加している。ところが2万円前後に落札価格が高騰したために何度も悔し涙を流した (T_T) かなりやFを自主規制予算内にて入手した。
        
 かなりやFは、直方体のボクシーなキャビネット側面を楔形に加工、ブラックボディーにゴールドのラインと装飾を施した透明円盤状の大型選局ダイヤルをレイアウトしたシンプルで精悍なフォルムが魅力的である。かなりや初期モデルに付く「マツダ」エンブレム、カナリヤをイメージしたシンボルが、小粋なアクセントだ。
        
 今回は、熱心なコレクターの方はすでにこの機種を所有されているのか、オークションのタイトル・説明文に「かなりや」の記述がなかったためなのか、熾烈な入札競争も無く、従来からの自主規制予算内で落札できた。気づくと中波専用機である かなりやA~Hの8機種中、かなりやB、Cの2機種以外はすべて手に入れたことになる。我ながら、もうこれは『病気』としか言いようがありません。
        
 シリーズの中で唯一トランス式の かなりやA以外の中波専用機 かなりやB~Eの真空管は、12BE6(周波数変換)・12BD6(中間周波数増幅)・12AV6(検波&低周波増幅)・35C5(電力増幅)・25M-K15(整流)を使われているが、今回ご紹介する かなりやFでは、シャーシも従来のボックス・スタイルから鉄板を垂直に立てたスタイルに変更。また整流管を25MK15から35W4に変更したが、出力管は従来の35C5のままであった。

メーカー:東京芝浦電気(マツダ)『かなりやF 5LC-74』

 サイズ : 高さ(約16.5cm)×幅(約30cm)×奥行き(約12cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1605KC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BD6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、35C5(電力増幅)、35W4(整流)

しかし12BE6-12BA6-12AV6-35C5-35W4の真空管構成だとヒーター電圧の合計は108V近くになるため、日本の100V電源規格では都合が悪かったのだろうか、翌年発売された かなりやHからは出力管を電力増幅用5極管30A5に変更し、以後のトランスレス真空管ラジオでは 12BE6-12BA6-12AV6-30A5-35W4の構成が標準的なスタイルとして確立した。
        
 宅配便で届いた かなりやFの一体形成型プラスチック製キャビネットは、ブラック・ボディのため分りにくいが、50年の間に付着した汚れがあるものの、パーツ類の欠品は無く、程度はかなりよい。裏蓋には当時流行したパッシブ・タイプの短波受信用コンバーター(エヂソン無線研究所製)が取り付けられている。短波受信用コンバーターも今となっては、大変な貴重品である。
        
 裏蓋を取外すと、清掃された様子はなく、キャビネット底部や真空管には数十年分の埃が堆積している。
        
 イヤホンジャック、パイロットランプ、スピーカー、板状のシャーシを順次取外し、目視点検したところ修理された痕跡はなく、真空管はマツダ製のオリジナルだ。(初期の かなりやシリーズは、イヤホンジャックまで、ドライバー1本で簡単に分解できる)またシャーシの錆び、バリコンの汚れも少なく、電気部品や配線の状態も至って程度はよい。

東芝(マツダラジオ) かなりやZ 5LP-158

2007-11-24 | 東芝 かなりやシリーズ
 昭和30年代、トランジスタの開発・実用化に伴い、配線作業効率が高く、品質も安定する「プリント基板」の量産技術も実用化され、 真空管ラジオにいち早くプリント基板による実装方式を採用した機種が、昭和32年に発売されたかなりやKと かなりやX~Zの3兄弟である。
        
 今回入手した かなりやZは、昭和32年('57年)に発売された、中波専用真空管ラジオ、かなりやX~Zの3兄弟の末っ子。
キャビネット左にスピーカー、右側に周波数同調用大型ダイヤル、その下に電源スイッチ兼音量調整ボリュームをレイアウトした極めてシンプルな回路と、キャビネット内部の使用部品はすべて共通しており、この3機種は外観のデザインを変えただけの代物だ。
        
         ▲かなりやX(左) かなりやY(右) かなりやZ(左下)
  
 かなりやXは「比較的若いニュー・ファミリーのための中庸な」、Yは「大人のためのシックな」、そしてこのZは「若い世代のためのポップな」ラジオを指向し、デザインされたと思われる。
かなりやZは、昭和32年当時の真空管ラジオの中にあっては珍しく、クリーム色を基調としたキャビネットのフロントに大胆なシークグリーンの塗装を施し、明るく雰囲気を演出している。デザイン的な完成度はさておき、若者や女性を大いに意識した、新しい挑戦を試みた機種であることは間違いない。
        
 このように真空管ラジオのプロダクト・デザインから、当時の時代背景や、消費者のニーズ、3機種の外観をいかに差別化し消費者にアピールしようかと考えた製造メーカーのマーケティング(思惑?)に思いを巡らすことができる点も、東芝かなりやシリーズの大いなる魅力であり、各方面の方々から
「店長は、かなりやを何台捕獲すれば気が済むの?!」
と呆れられても、コレクションを止めることができない理由なのだろう。
そんな訳で東芝かなりやシリーズをご紹介するとき、技術的な内容より、つい意匠学的な考察(講釈?笑)が多くなってしまうのです。(笑)
        
 真空管ラジオのコレクション&レストアに手を染め、初めてかなりやZがオークションに出品されたのを発見! 写真で見る限り、程度も良さそうだ。
居酒屋1軒 or キャバクラ1セット)の価格での落札は無理っぽい予感がする・・・
結果は・・・自分の意思とは無関係に無意識のうちに入札ボタンを押してしまい、居酒屋でほろ酔い気分になりキャバクラに出撃した予算(落札手数料・送料込み)で落札。
        

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)『かなりやZ 5LP-158』

 サイズ : 高さ(約17.6cm)×幅(約30.6cm)×奥行き(約11.5cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1605KC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 宅急便で届いた かなりやZは、前オーナーが大切に保管していたのだろう、プラスチック製キャビネットは、50年の間に付着した汚れ、黄ばみ、軽い擦り傷があるものの、パーツの欠品も無く、外観はかなり程度の良い部類である。
喜んで裏蓋を外すと、裏蓋が真っ二つに割れていました。
        
 キャビネット内部は清掃された形跡がないにもかかわらず、埃の堆積も少なく、使用環境がよかったのか、大切に保管されていたものと推察される。真空管は、すべてマツダ・ブランドの東芝純正品が使われており、目視点検する限りではブロックコンデンサほかプリント基板、パーツ類の劣化は見受けられない。
        
 キャビネットからプリント基板とスピーカー、イヤホンジャックを取外し点検したところ、クリーム色のボディで分からなかったが、煙草のヤニなどが付着し、かなり汚れている。
掃除が楽しみだ~♪(笑)
        
マツダ純正の真空管が使われ、修理した痕跡もなく、真空管とキャビネット底に長年の埃が付着している程度の状態だ。こんなに簡単な構造だと、清掃とペーパコンデンサ交換だけでレストアは終了しそうな雰囲気だ。
        
 プリント基板のパターン剥離などの不具合も見られない。
 オークションの出品者の方も、「動作確認済み。電源、スイッチを入れしばらくすると動きます」とコメントされていたので、意を決して電源を入れてみた。パイロットランプが点灯しない・・・しばらくするとスピーカーから受信ノイズが聞こえはじめた。パイロットランプは、球が断線していただけのようだ。
        

東芝(マツダ)  かなりやQS 5LQ-269

2007-11-18 | 東芝 かなりやシリーズ
 東芝かなりやシリーズの魅力は、昭和30年代の10年間、時代の消費者ニーズを捉えようと、デザイン的な試行錯誤を重ねた『バラエティーあふれる豊富なデザイン性』にある。今回は、かなりやシリーズの中でもトップクラスに入る奇天烈(キテレツ:奇想天外)なデザインのかなりやQSを紹介します。

        
 昭和32年('57)、R-7ロケットで史上初の人工衛星スプートニック1号の打ち上げに成功したソビエト連邦に対抗したアメリカ合衆国は、昭和33年にジュピターロケットによりエクスプローラ1号の打ち上げに成功。 昭和30年代から40年代は、米・ソの2大国による宇宙開発競争に、世界中の人々が興奮し、固唾を飲んだ時代でもあった。
日本も昭和33年('57年)から始まった国際地球観測年(IGY)への参加を決め、数々の工夫と試行錯誤を重ねた結果、2段式ロケット、カッパ6型の開発に成功。翌年、上層大気の風速風圧と宇宙線観測に成功し、国際気象観測年(IGY)への参加を果たした。
        
         ▲ランチャーに設置されたkappa(カッパ)型ロケットと見学者

 そんな時代の中、キャビネットのデザインに工夫を加え、アバンギャルド(前衛的)な意匠をこらし、消費者にアピールした機種の一つがかなりやQSである。
かなりやQSのキテレツ振りは凄まじく、ロケットを連想させる円錐状の形成処理された白いラインがロイヤル・ブルーのキャビネット正面を横切る。
ロケットの噴射機部分に縦型ダイヤル、尾翼部分の上下に二つのツマミが配置され、人々の「宇宙への憧れ」を盛り上げようとしたデザイナーの意図がうかがえるデザインだ。
        
         ▲青空に飛翔するロケット・・・に見えます?

 かなりやシリーズが発売される以前からリリースされていたマツダ・ピアノラジオ や 地球儀ラジオ といった洒落っ気たっぷりのラジオには及ばないものの、
ロケットをモチーフにデザインされたかなりやQS の当時のメーカー担当者やデザイナーが大真面目に議論している姿を思うと、つい笑ってしまう。
ちなみにロケット噴射機部分の縦型ダイヤルは、選局ダイヤルではなく音量調整用ダイヤルだ。下側のツマミが選局用で、上側は電源ON/OFFを兼ねた中波/短波切替スイッチです。
工業デザインの視点から考えると、あり得ない配置だが、今のようにマーケティング理論やデザイン工学も発達していなかった当時って、大雑把でホントにいい時代じゃなかったのかな・・・と微笑ましくさえある。
        
 かなりやQSはオークションに出品されることも珍しく、過去2~3回遭遇したが、キャビネットに大きな欠けがあったり、落札価格が高騰し、捕獲できなかった機種でもある。
ところが最近、真空管ラジオ人気が下火になったのか、このかなりやQSのキテレツなデザインにアンティークラジオファンは引いてしまったのか、居酒屋1軒(キャバクラ1セット)に立ち寄る価格で落札できた。

 メーカー:東京芝浦電気(マツダ)『かなりやQS 5LQ-269』

 サイズ : 高さ(約16.5cm)×幅(約31cm)×奥行き(約12cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1650KC/短波 3.9MC~12MC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 宅急便で届いた かなりやQSは、何十年も放置されていたのだろう・・・プラスチックキャビネットの表面は脂質が抜けた状態になっており、全体の汚れも酷い。
幸いエンブレムやツマミ等の欠損や酷いダメージは見られない。
裏蓋にトグル・スイッチを取付けるなど、改造が施されている・・・回路図との付き合せが必要となるので、レストアするにも厄介だ。
        
キャビネット内部は、いつもながら汚い! 堆積した大量の埃とかび臭さには毎度、閉口するが、まぁこれも誰の手もついていない初出し品の証拠・・・・ 掃除屋・店長の腕の見せどころだ♪
同時期に発売された かなりやPSと同様、バリコン・コイル・バンド切替スイッチで構成されたユニットと、真空管他主要部品を搭載したプリント基板ユニットに別れた設計になっている。
        

東京芝浦電気(TOSHIBA)  かなりやNS 5UL-499

2007-09-26 | 東芝 かなりやシリーズ
 昭和35年、東芝は真空管ラジオに使っていた「マツダ」ブランドを外し、「東芝」ブランドの かなりやシリーズ6機種(FS, HS, KS, LS, NS, RS)を発売した。東芝としては従来の個性的なデザインから、スマートなデザインへの変化を目指した1台が今回ご紹介する かなりやNSである。
        
 写真のように、かなりやFS、KS、LS、NSの4機種を並べてみると洗練されたデザインである反面、かってご紹介したマツダ・ブランド時代の かなりやシリーズに見られたアクの強さは消え、発売以来、かなりやシリーズで試みられてきた『新たな意匠への挑戦』というインダストリアル・デザインとしての魅力は、ここへ来て円熟期を迎え、ある意味半減したとも言える。
        
         【写真左上から かなりやFS、KS、左下 LS、NS】
 その裏を返せば、マーケットの関心は卓上型小型真空管ラジオからトランジスタ・ラジオへと加速度的に移行しつつあり、数年内に真空管ラジオのアドバンテージは“安い価格”だけになると判断したメーカー側も、生産効率の向上とコストダウンにシフトしたことが読取れる。
        
 かなりやNSは、オフホワイトに近いライトベージュのボクシーなフォルムのフロントグリルを上下に分割し、上2/3に透明パネルと白いバックパネル、下1/3は縦スリットを入れてやや絞り込んだキャビネットを基調としつつ、金モール付の黒いツマミ3つを配置、視覚的にも“上品な雰囲気”を強調したデザインを採用している。しかし、かって「マツダ」と書かれた七宝焼エンブレムに代わり、左上に貼られた「Toshiba」ロゴの安っぽいアルミ製エンブレムに、マーケットにおける真空管ラジオのポジション低下を垣間見てしまい寂しい気分になってくる。
        

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA) かなりやNS 5UL-499

 サイズ : 高さ(約14cm)×幅(約32cm)×奥行き(約12cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1605KC/短波 3.9MC~12MC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 かなりやシリーズの中でも その存在が希薄でキャビネットの天板に焼け焦げた傷跡のあるせいなのか、オークションでの入札価格は上がらず、居酒屋1回分の予算内で落札できた。
 宅急便で届いた かなりやNSは、何十年も放置されていたのだろう・・・キャビネット全体の汚れは酷く、フロントの透明パネルとキャビネットの間にはたくさんの埃が堆積し、残念ながらツマミも2個破損している。幸いエンブレム等の欠損や酷いダメージは見られない。
        
 裏蓋を取外すと、清掃された様子はなく、キャビネット底部やシャーシ上の真空管、IFT、バリコンには多くの埃が堆積しているが、こんなラジオの方が、意外と簡単に修理できたりする。
この50年近く放置されていた かなりやNSのやつれた姿に「かなわぬ恋に傷ついた旧家のお嬢様」の姿が重なり、つい感情移入してしまう。麻の白いワンピースが似合うお嬢様に、再び明るい笑顔をとり戻してもらうことを願い、このラジオを修復することを決意した。(←店長、また自分の思い出&妄想モードになってるし・・・)
        
 破損したツマミを抜き、イヤホン端子の止めネジ、シャーシ、スピーカーを順次取り外し、シャーシ内の点検を行なう準備に取りかかった。イヤホン端子の止めネジにはCRCを吹きつけ、専用ドライバを溝に差込み、押さえつけながらギュッと回さないと外れない。この作業にはコツを要すのだが、案の定、「ペキッ」という音とともにキャビネットのイヤホン端子部分のみが割れて取れてしまった・・・(´Д`)トホホ
毎度のことながら、この誇りの山と汚れは閉口してしまう。今回は、友人の職場にあるエアコンプレッサーとエアガンをお借りし、シュシューっと埃を吹き飛ばした。使ってみるとOAクリーナーと違いエア噴出圧も大きく、また噴出量をエアガンの引き金で調整できる大変便利な機械だ。
しかしまだまだ汚いなぁ~ ( ̄д ̄;)
        
  真空管を抜いてシャーシー上と内部の埃を平筆やアルコールを使って丹念に清掃しながら、目視点検を行なったところ、スピーカーへの配線を切り、再度繋ぎ合わせている。真空管も12BA6以外はナショナル製に交換されている。
清掃後のシャーシは錆もほとんどなく、ピカピカになって気持ちいい (^▽^)

        
ん?ブロック型ケミコン底部に何かの固着物が・・・!これがケミコンの液漏れ跡?
        
シャーシ内部にも若干の綿埃が堆積しているので、エア吹きと平筆で掃除をする。修理された形跡は見当たらないが、ケミコン底部の固着物が気になる。選局ツマミを引き抜くときに力を入れすぎたのか、シャフトが変形している。
        
 まずキャビネットの清掃に取りかかる。読者のかぼすIさんからご教授いただいた方法(裏から大きめのマイナスドライバーを当て 木槌で軽く順番に叩く)を用い、今回も見事にフロント透明パネルを取外すことができた。希釈したマジックリンで汚れを落とし、焼焦げ跡は#600のサンドペーパーで削り、固着した他の汚れもコンパウンドを3種類使い研磨して、キャビネットは新品のように蘇った。店長、「カリオストロの城」のクラリス嬢の笑顔を取り戻せるか?!
        
 いよいよシャーシー内の修復開始である。電源を入れる前に、テスターで各種導通をチェックしたところ、とりあえずOKだが、液漏れをおこしているブロックコンデンサーは交換が必要であろう。ラグ板と電解コンデンサーを組合わせてチューブラ型を作るか、貴重品のブロックコンデンサを使うか悩みどころだ。
回路図では47μ+22μを使われているが、47μ+47μでも構わないとのこと・・・。
爆発したりしないのだろうか・・・・ (;^_^A
        
 今回は他の部品状態も良好なため、ブロックコンデンサを使用することにした。
        
 オリジナルの配線を確認後、いったん配線を外し、ブロックコンデンサを交換。ペーパーコンデンサもすべてフィルムコンデンサに交換した。
ところが作業中に何かの拍子でハンダ付けされている100Ωの抵抗が外れてしまい、再度取付けするアクシデントも発生・・・ラジオの修理をしていると、時々こうした40数年の経時変化によるオリジナルのハンダ付けが外れる現象に遭遇し、配線の再確認の重要性を実感する。
        

東芝ラジオ かなりやDS 5UL-389

2007-09-24 | 東芝 かなりやシリーズ
 東芝かなりやシリーズに興味を持たれた方は必ずと言っていいほど訪問される、ほぼすべての かなりやシリーズの修復を網羅されたホームページがある。今回は、このHPにも紹介されていない、またgoogleの検索でも引っかからない かなりやDSという型番の、大変珍しい機種を入手したのでご紹介する。
        
 東芝かなりやシリーズの機種名は、原則的にAから始まるアルファベット1文字の中波専用機、またはアルファベット+S(Short WaveのS)2文字の中波/短波2バンド機に区別して命名されたが、必ずしも時系列的にAから始まるアルファベット順ではない場合や、型番が重複しているケースや欠番もあることを、このブログですでに何度か述べた。
冒頭で述べた有名なホームページでも、かなりやAS、BS、CSと続き、DSは無く、ES、FSが紹介されているため、てっきりかなりやDSは欠番の機種だと思い込んでいた。
ところが先日、何気にオークションを眺めていると「古い真空管ラジオ/クリーム色」と紹介されている、昭和30年代の真空管ラジオに目が止まった。出品者のコメントには「かなりや」とか「東芝」と一言も書かれていないラジオだったが、妙に引き寄せられるデザインのそのラジオをよくよく見ると裏蓋にかなりやDSの文字が! 
しかしこんな かなりやシリーズは見たことないぞ?! 
        
 レアな かなりやシリーズだと、すぐに1万円を超える。入札金額は、居酒屋1軒またはキャバクラ1セットまでの値段と心に固く誓っているボクとしては、
 「誰の目にも止まるなよ・・・・」
と秘かにオークション終了間際に入札する作戦をとった。

 指名ナシで入ったキャバクラで横についてくれたキャバ嬢が、入店初日の素人、さらにストライクゾーン真ん中寄りの女の子だったとき、キャバクラの匠・お坊茶間氏なら、財布の中身にモノを言わせラストまでの囲い込み指名を行ない、あわよくばアフターに連れ出すこと間違いなし!
一方、ボクにはそんな財力や精力的な強引さは持ち合わせないため、お気に入りのそのキャバ嬢が他の人に指名され席を立たないことを願いつつ、限られた時間の中で、彼女が心を開いてくれるよう、知恵を搾り出し、オフの日にプライベート・デートができる状況を作ることしかできない。
 キャバクラ嬢に例えたが、オークションで手にする真空管ラジオは、女性との出会いに似ている。またラジオを修復する作業は、“出会った女性の閉ざされた心を開く”、あるいは“世間や男性に対して斜に構えた、その心の隙間を埋めて、彼女の幸せな笑顔と豊かな心を取り戻す”ための、『男と女の時間』に似ているのかもしれない。
【注記】 以上、ボクは実際にキャバクラへ足を運ぶことはないので、勝手な妄想です (^。^;)
         
         ▲キャスト(キャバクラ嬢)に囲まれて、ご満悦のお坊茶間氏

 初めて見る かなりやDSは、サイドが楔(くさび)形に絞り込まれたキャビネット、前面の周波数スケール用透明フロントパネルとやや間延びしたスピーカー・グリルのアンバランス感に加え、横スリットの入ったクリーム色のボディと、縦スリットの入ったつまみ周りのベージュのカラー・コンビネーション、キャビネット正面右端にある取って引っ付けたようなバンド切替スイッチなどのイマイチ感が特徴的だ。 ただキャビネット正面下の真ん中に、ゴールドに輝く金属製の「Toshiba」エンブレムが輝いている。
        
 この かなりやDSを見ていると、透けるような白い肌で、美人ではあるが垢抜けない東欧やロシアの女性たちを思い出す。実はかって旧ソ連・T共和国出身の女性と付き合っていた時期がある。
彼女の故郷、K市中心部にある尖塔に金色の星が輝く白いクレムリン(ロシア語では「城塞」を意味する)と街並みのコントラストが、かなりやDSと重なり合う。そんな過去の情景に思いをはせながら、このラジオを修復することを決意した。
        

  メーカー :東京芝浦電気(TOSHIBA) かなりやDS 5UL-389

  サイズ   : 高さ(約14cm)×幅(約30cm)×奥行き(約11.5cm)

  受信周波数 : 中波 530KC~1605KC/短波 3.9MC~12MC

  使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 オークションでは目立たなかったことが幸いしたのか?、入札価格はさほど上がらず、居酒屋1回分弱の金額で簡単に落札できた。
宅急便で届いた かなりやDSは、キャビネットの天板に焦げ後が数箇所あるものの、ツマミやエンブレム等の欠損や酷いダメージは見られない。ただ何十年も放置されていたのだろう・・・それなりに汚れも酷い。同調ダイヤルの糸掛けにも不具合があり、チューニングつまみは、周波数ゲージ半分の位置に来ると「すれ違いの愛」のように空回りする。
        
 裏蓋を取外すと、清掃された様子はなく、キャビネット底部やシャーシ上に配置された真空管やIFT、バリコンには埃が堆積し汚れている。長年放置され、垂直型シャーシの一部に錆が浮いた かなりやDSに、つい感情移入してしまう。
        
 まずはキャビネットから縦型シャーシーを取外そうとしたところ、同調ダイヤルの糸掛けがプーリーと干渉し、途中で引っかかって回らないため、周波数指針を取外す位置に移動できない。ならばシャーシを先に取外そうとしたのだが、シャーシ取付ネジの1つがPHONO端子とボリュームの狭い僅かな隙間にあるため、手持ち工具では回せない。
どうして東芝はこんな意地悪なレイアウト設計をするのだろう・・・(T_T)
苦労は多いほど成就したときの喜びが大きいのも、恋愛に似ている!とは分かっていても、つい慎重になってしまうのは歳を重ねたせいか、欧米化! いや、臆病化?

東京芝浦電気(マツダ)  5LA-28

2007-09-17 | 東芝 かなりやシリーズ
 東芝から かなりやシリーズとして かなりやCや かなりやEがリリースされる以前、これら機種の原型として昭和29年頃から発売されていた5LA-28を入手した。ボクシーなキャビネットの上面に電源スイッチ兼音声ボリュームと選局つまみをレイアウトした、ユニークなレイアウトが目を引くデザインだ。
        
 東芝は「かなりやシリーズ」「うぐいすシリーズ」を発売する以前から今回ご紹介する「5LA-28」のほか「マツダ タイマーラジオ 5EA-72」のほか、「マツダ ピアノラジオ 5BA-50」「マツダ 地球儀ラジオ 5LE-92」といった笑いを誘う、奇妙なネーミングの中波専用ラジオを発売していた。
5LA-28は、キャビネットの上面に電源スイッチ兼音声ボリュームと選局つまみをレイアウトした、通称「黒イモ」と言われているフィリコ社(PHILICO)の「46-420」のレイアウトと似ている?アメリカン・テイストと、格子状のスピーカーグリルやゴールドを多用したカラーリングに見られるジャパニーズ・テイストが混在し、シンプルと豪華さを演出しようとするが、チープさを隠せえない何ともいえぬ独特な雰囲気を醸し出している。
まだ導入されたばかりのプラスチックを使い、従来の木製キャビネットと異なるイメージをどのように演出しようかと、当時のデザイナーは腐心したのだろう。
        
 今まで何度かオークションに出品されたていたが、価格高騰のため涙を飲んで諦めた5LA-28だが、今回は下記のコメントのように「レストア済み」(?)として出品されていたものを発見!

  『ただ飾っているだけでは勿体ないので、知り合いの専門家に頼んで、
  画像のようにCDプレーヤーが接続出来るようにAUX端子を付けてもらいました。
  後ろにあるスイッチでラジオとCDの切り替えができるようになっています』
        
 開始価格はいつもの予算より若干オーバーしていたが、せっかくのチャンス。諦めるつもりで入札を試みたところ、入札者は誰もいなかったため、開始価格ですんなり落札できてしまった♪
キレイに細部までレストア済みの かなりやQなどは3~4万円前後まで高騰する反面、この5LA-28は、どのような修理・改造が施されたか不明で、AUX端子を付ける改造まで行われており、怪しすぎて誰も手を出さなかったということだろうか? (^_^;)アセアセ...

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)マツダ 5LA-28

 サイズ : 高さ(約14cm)×幅(約25cm)×奥行き(約15cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1650KC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BD6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、35C5(電力増幅)、25M-K15(整流)

 宅急便で届いた5LA-28は、想像していたよりかなりコンパクトな印象だ。
クリーム色の直方体のプラスチック・キャビネット上面に、ゴールド/ブラックに塗装された2個の円盤状つまみと、前面にゴールドの格子状スピーカーグリルが配置されただけの、極めてシンプルなフォルムである。
 スモールサイズとシンプルをコンセプトに、パーソナル・ユースを訴求したデザインに好感が持てる。その反面、プラスチック素材のメリットを活かしきれず、チープな印象は否めない。
キャビネットは一応清掃されているが、磨き技を駆使して新品同様の輝きを取り戻すと雰囲気もまた変わってくるかもしれません。。。
        
 一部を切り取られたキャビネット裏蓋から、RCA入力端子とラジオ/外部入力切替スイッチを取付けたアルミ板が露出している。
裏蓋の有無や状態の良し悪しも価値の一部と考えるか否かは、コレクターの主観によるが、裏蓋の切り口のサイズや処理をもう少し工夫してほしかったところである。
        
 どんなレストアが施されているのか、興味深々で裏蓋を開けてみると・・・
5LA-28をはじめ、かなりやC、かなりやEはフェライトバー・アンテナが採用されているはずなのに、アンテナコイルが、いきなり目に飛び込んできてビックリ!!
        
 2本の止めネジを外し、キャビネットからシャーシを抜き取ると、シャーシ上部の厚紙製天板に乗っているはずのフェライトバー・アンテナは取り外され、アンテナコイルに付替えられている。キャビネット内部やシャーシ上は軽く清掃しているだけで、埃や汚れは残ったままだ。付替えられたアンテナコイルや周りの配線の汚れ具合から見て、出品者の方がCDも聞けるように改造されるずっと以前に修理・取替えられたもののようだ。
        
 オリジナルにこだわる気持ちも無きにしも非ずだが、この5LA-28はすでにCDも聞けるよう改造されたことを承知で落札したラジオ。当時のラジオ商会の修理事例として貴重なサンプルでもある。
下の写真は、以前ボクがレストアしたオリジナル状態の かなりやE
        
 真空管は、すべてオリジナルのマツダ製が使われている。シャーシ上にはまだ多くの埃が残っているが、バリコンの絶縁ゴムブッシュは朽ちておらず、外観を目視点検する限りでは大きな問題は無さそうだ。ボリュームは昭和40年製のものに取替えられている。
        
 シャーシー裏側は、錆びもなく意外とキレイだが、キャビネットを小型化するためにブロックコンデンサーもシャーシ内部に取り付けられているため、部品点数の割には込みあっている。信頼性の低いペーパコンデンサーが使われており、一見状態は良さそうだが全品交換すべきだろう。
        
 よく見ると下写真のような空中配線が施されている。ただでさえリスクの高い真空管ラジオではタブー。
        
 ラグ板を立てて配線をやり直した。これだけの処置でも、何かの拍子に配線がショートするという事故は回避できる。
        
 シャーシ上部と内部の清掃を終え、配線も完了・・・テストのために電源を入れると、ネオン管がやさしく点灯する。しばらくすると空電ノイズが聞こえ始めた。チューニング・ツマミをゆっくり回すと、大都市圏の民放ラジオが数局聞こえてくる♪
        
 キャビネット内側に大きな綿埃は無いが、清掃された様子もなく、50年間の汚れは残ったまま。 やはりヴィンテージ・ラジオはこうでなくっちゃ!清掃や洗浄、研磨も含めて、50年前の状況に思いを馳せながら過ごす手間隙とその時間が、「なんちゃってレストア・ワールド」の醍醐味である♪
        

 とりあえずキャビネットとシャーシの清掃、研磨、配線のやり直し、コンデンサーの交換を済ませ、今回の修復?を完了とした。
CDプレーヤーが接続出来るようにAUX端子を付けた『改造』は承知して落札したのだが、やはりその昔、修理の際に取外されたフェライトバー・アンテナとその代わりに取付けられているアンテナコイルに釈然としない思いばかりが募る。
        
 キレイにはなったが、レストアをしたという実感がない。実際、掃除しただけだし・・・ f(^^;)
5LA-28のデザインを愛でるにしても、中身がオリジナルと異なると、妙に気分が萎えてしまう。
        
 かなりやEを修復したときは、本当に七転八倒、先が見えない状態で諸先輩方から励ましやアドバイスをいただきながら、不安定ながらもちゃんと受信できる状態まで独力で修復できた。あのときのように、スピーカーから空電ノイズが聞こえ、地元の民放局が入感したときの喜びが感じられない。これって単なる気の迷いなのか、ラジオ病の進行なのか、微妙なところ。
        
 アメリカン・テイストを求めてデザインされた5LA-28には、JAZZが似合う。
眠れぬ日曜日の深夜2時30分、福岡のRKBラジオ(1278kHz 出力50kW)の『JAZZ TRAIN』に、ダイヤルを合わせてみた。福山智美女史がナビゲータを勤める『JAZZ TRAIN』は、7月までは23時30分からの放送だったが、先月より深夜帯に時間変更となった。毎回、週替わりで一人のジャズアーティストにスポットをあて、生い立ちを語るとともに、そのアルバムの中からピックアップした曲を流す大人の番組だ。
         
 ところが何と、9月末でこの番組は終了するとのこと。
若いお笑いタレントが番組で騒ぎ立てる深夜放送が主流の今、このような『大人の男が一人でくつろげる』番組は貴重だっただけに残念だ。

「ラジオ深夜便に聞き入るほど、枯れてる年でもないしなぁ・・・」とダイヤルを回しているうちに、いつのまにか眠りについた初秋である。