3 月 27〜29 日は「ソーシャルメディア研究ワークショップ2012」に参加した。昨年は鳥取大学で行ったが,今年は鳥取駅から約1時間の場所にある兵庫県北部の湯村温泉で行った。夢千代日記の舞台になった歴史のある温泉地である。以下は初日の風景・・・まだ全員は揃っていない。

マーケティング,社会学,社会心理学,情報工学,物理学といった異分野の研究者と実務家が集まり,ソーシャルメディア研究の交流をしようという趣旨だが,果たしてそこから有意義な対話が生まれただろうか・・・以下ではぼくなりのいささか偏ったまとめを試みる(以下敬称略)。
昨年のワークショップの宿題の1つは,ソーシャルメディアにおける情報伝播と影響の区別であった。最初に登壇した水野(明大)は,ワッツが火付け役となったインフルエンサー論争をレビューし,論点を整理しつつ今後の研究構想について語った。具体的成果を伴っていないのが彼らしい。
逆に非常に具体的な情報伝播の事例を報告したのが安田(関大)である。東日本大震災直後に起きたコスモ石油に関するデマツイートの拡散と収束のプロセスが分析される。本人のフォロワー数やフォロワーのフォロワー数の多い少数の人物が多大な影響を及ばしたことが可視化されている。
だが,こうした「インフルエンサー」は必ずしも高い専門知識を持つわけではなく,オピニオンリーダーとしての条件を満たしていない。では,彼らはどういう人々なのか。データをつぶさに分析していくことで,ソーシャルメディア上の情報と影響の伝播の実態が見えてくると期待される。
ソーシャルメディア上の情報伝播は,受け手に選択(受容)されることで起きる。では,受け手はウェブ上で発信された他者の情報をどのような場合に信頼するのだろうか。澁谷(東北大)はこれをある種の推論とみなし,肯定-否定情報の混合という要因を加えた統制実験を行っている。
一方,池田(東大)は社会心理学の立場から,山岸俊男の信頼,安心,互酬といった概念に基づきソーシャルメディアの情報に対する態度を研究している。さらには SNS 上のソーシャルアドの効果分析も紹介されたが,そこでは具体的な人間関係に基づく信頼が重要な役割を演じている。
ソーシャルメディア上の情報への信頼形成は,武田(NII)が報告した Wikipedia 上の「議論の質」を予測する問題とも通底する。こうした「集合知」の研究に政治学における討論型世論調査の研究が役立ちそうだという助言が得られるあたりに,学際的なワークショップの価値がある。
心理的な要素が重要なのは,戸谷(同志社)が報告した寄付マーケティングもそうだろう。もしそれがソーシャルメディアを利用する方向に進むのなら,寄付行為を社会性のなかで捉える必要がある。まさに『ドラゴンフライ・エフェクト』で取り扱われているテーマである。
以上の発表はソーシャルメディアに対する個々のユーザの心理や意思決定プロセスに関連しているが,そこはブラックボックス化して,集計量としてのクチコミを分析するアプローチもあり得る。石井,新垣(いずれも鳥取大)の「ヒットの数理モデル」関連の研究がまさにそうだ。
映画の観客動員数とブログ投稿量の関係は比較的安定している。また,ポジティブな内容とネガティブな内容の比率は平均的に一定だという。こうしたことが多くの財についていえるなら,ブログ投稿量というマクロな変数に分析を集中させることで,かなりのことがわかるはずだ。
吉田(デジハリ)はブランドに対するネット上のクチコミが 3.11 を契機にいかに変容したかを指摘する。浅野(ホットリンク)はソーシャルメディアからの「傾聴」を本格的に始めているビジネスの最前線の様子を,福田(鳥取県)は地方自治体での取り組みを紹介する。
今後ソーシャルメディアのデータが購買データ紐づけられると,ネット・クチコミが消費行動に及ぼす影響をミクロレベルで分析できるようになる。だが現状では問題が多く,藤居(東急エージェンシー)のように,パネルが自己申告したネットワーク特性に依拠して分析するのが現実的だ。
ミクロからマクロ,またその逆の相互作用について,データや実験から解明できる範囲は限られる。松本(鳥取大)の報告のように,マルチエージェント・シミュレーションは今後もっと利用されていいはずである。いうまでもなく実証性をどこでどう担保するかが難問として残っている。
・・・ということで,今回のワークショップでもソーシャルメディアに関する様々な研究の現状を概観できて有意義であった。それらは簡単に交わることはないが,研究者どうしが交流を深めことがまず先決で,そこから今後何かが生まれてくるのではないかと期待したい。次回が楽しみだ。

マーケティング,社会学,社会心理学,情報工学,物理学といった異分野の研究者と実務家が集まり,ソーシャルメディア研究の交流をしようという趣旨だが,果たしてそこから有意義な対話が生まれただろうか・・・以下ではぼくなりのいささか偏ったまとめを試みる(以下敬称略)。
昨年のワークショップの宿題の1つは,ソーシャルメディアにおける情報伝播と影響の区別であった。最初に登壇した水野(明大)は,ワッツが火付け役となったインフルエンサー論争をレビューし,論点を整理しつつ今後の研究構想について語った。具体的成果を伴っていないのが彼らしい。
逆に非常に具体的な情報伝播の事例を報告したのが安田(関大)である。東日本大震災直後に起きたコスモ石油に関するデマツイートの拡散と収束のプロセスが分析される。本人のフォロワー数やフォロワーのフォロワー数の多い少数の人物が多大な影響を及ばしたことが可視化されている。
だが,こうした「インフルエンサー」は必ずしも高い専門知識を持つわけではなく,オピニオンリーダーとしての条件を満たしていない。では,彼らはどういう人々なのか。データをつぶさに分析していくことで,ソーシャルメディア上の情報と影響の伝播の実態が見えてくると期待される。
ソーシャルメディア上の情報伝播は,受け手に選択(受容)されることで起きる。では,受け手はウェブ上で発信された他者の情報をどのような場合に信頼するのだろうか。澁谷(東北大)はこれをある種の推論とみなし,肯定-否定情報の混合という要因を加えた統制実験を行っている。
一方,池田(東大)は社会心理学の立場から,山岸俊男の信頼,安心,互酬といった概念に基づきソーシャルメディアの情報に対する態度を研究している。さらには SNS 上のソーシャルアドの効果分析も紹介されたが,そこでは具体的な人間関係に基づく信頼が重要な役割を演じている。
ソーシャルメディア上の情報への信頼形成は,武田(NII)が報告した Wikipedia 上の「議論の質」を予測する問題とも通底する。こうした「集合知」の研究に政治学における討論型世論調査の研究が役立ちそうだという助言が得られるあたりに,学際的なワークショップの価値がある。
心理的な要素が重要なのは,戸谷(同志社)が報告した寄付マーケティングもそうだろう。もしそれがソーシャルメディアを利用する方向に進むのなら,寄付行為を社会性のなかで捉える必要がある。まさに『ドラゴンフライ・エフェクト』で取り扱われているテーマである。
以上の発表はソーシャルメディアに対する個々のユーザの心理や意思決定プロセスに関連しているが,そこはブラックボックス化して,集計量としてのクチコミを分析するアプローチもあり得る。石井,新垣(いずれも鳥取大)の「ヒットの数理モデル」関連の研究がまさにそうだ。
映画の観客動員数とブログ投稿量の関係は比較的安定している。また,ポジティブな内容とネガティブな内容の比率は平均的に一定だという。こうしたことが多くの財についていえるなら,ブログ投稿量というマクロな変数に分析を集中させることで,かなりのことがわかるはずだ。
吉田(デジハリ)はブランドに対するネット上のクチコミが 3.11 を契機にいかに変容したかを指摘する。浅野(ホットリンク)はソーシャルメディアからの「傾聴」を本格的に始めているビジネスの最前線の様子を,福田(鳥取県)は地方自治体での取り組みを紹介する。
今後ソーシャルメディアのデータが購買データ紐づけられると,ネット・クチコミが消費行動に及ぼす影響をミクロレベルで分析できるようになる。だが現状では問題が多く,藤居(東急エージェンシー)のように,パネルが自己申告したネットワーク特性に依拠して分析するのが現実的だ。
ミクロからマクロ,またその逆の相互作用について,データや実験から解明できる範囲は限られる。松本(鳥取大)の報告のように,マルチエージェント・シミュレーションは今後もっと利用されていいはずである。いうまでもなく実証性をどこでどう担保するかが難問として残っている。
・・・ということで,今回のワークショップでもソーシャルメディアに関する様々な研究の現状を概観できて有意義であった。それらは簡単に交わることはないが,研究者どうしが交流を深めことがまず先決で,そこから今後何かが生まれてくるのではないかと期待したい。次回が楽しみだ。
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