Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

新聞・TVは消滅する?

2009-08-20 16:55:22 | Weblog
物心ついてから,ほぼ途切れなく新聞を購読している。最近でもほぼ毎日,最低1時間はテレビを見ている。そういう立場からすると,新聞・TVが消滅する,といわれても実感はない。しかし,現在進行する技術や経済システムの変化がどのような環境を生み出すのか,そこでメディアはどうなる可能性があるかと問われると,そういうシナリオを考える価値はあると答えるしかない。

佐々木俊尚氏は新著で,今後確実に危機を迎えるのが新聞メディアだと述べている。米国では新聞社の経営危機が現実のものとなっているが,それは対岸の火事ではない。ニュースの配信において,新聞はもはやネットに代替されるしかない。しかし,だとしたらネットでの課金をうまくやれば,新聞社は生き残れるのではないか?ところが,そんな考えは甘いと佐々木氏は指摘する。

その点,TVのほうがまだ可能性があるという。映像コンテンツ制作への参入はそう簡単ではないし,さまざまな視聴形態に合わせた裾野の広いビジネス機会があるからだ。では,TV局が安泰かというと,「編成権」を視聴者に移行させる技術トレンドが存在する以上,そうはいかないと佐々木氏は見ている。映像コンテンツに大きな可能性がある以上,どんな競争が起きるかわからない。

2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書)
佐々木 俊尚
文藝春秋

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ひろゆき(西村博之)氏の本は,「テレビはもう死んでいる」というタイトルが検討されていただけあって,テレビ放送に関して多くのページが割かれている。インターネットの世界で成功した著者ではあるが,テレビメディアの価値をそれなりに高く評価している。ただし,現在はあまりに高コスト体質であり,縮小した広告需要に適合した,ダウンサイジングが必要だと示唆している。

本書の後半にある,日テレの土屋敏男氏との対談が面白い。土屋氏は「第2日本テレビ」の経験に基づき,映像コンテンツのネット配信は,少なくとも当面は地上波と一体化した形の広告モデルしかないと述べるのに対して,ひろゆき氏はそれには将来性がないとして,課金モデルを主張する。この対談を通して両者の言い分が全く歩み寄らないのが,この点である。

僕が2ちゃんねるを捨てた理由 (扶桑社新書 54)
ひろゆき
扶桑社

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マスメディアの危機という議論は,ぼくが広告業界に入った1980年代にもあった(当時の「論争」が佐々木氏の本に紹介されており,懐かしく感じられる)。景気が回復したら元に戻るのか,いよいよ本格的な変革期に入るのか。どれほど急激かは別にして,大きな変化が起きる可能性を否定できない。それに適合する研究の準備として,Complex09 などを位置づけてみたい。

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