Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

リアルタイム・マーケティング

2013-02-26 08:56:28 | Weblog
『リアルタイム・マーケティング』は昨年発売された,ソーシャルメディア時代のマーケティング・コミュニケーションを論じた本。同じ著者による『マーケティングとPRの実践ネット戦略』,『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』はすでに邦訳されている。

リアルタイム・マーケティング
生き残る企業の即断・即決戦略
デイヴィッド・ミーアマン・スコット
日経BP社

本書の最初に,有名な United Breaks Guitar の話が出てくる。ユナイテッド航空を利用中にギターを壊されが,同社から誠意ある対応を受けられなかったミュージシャンが,その怒りを唄と映像にして YouTube に投稿した。2009年の話だが,いまだに閲覧可能である。

この本で初めて知ったのは,負のクチコミが急速に拡散しつつあるとき,ユナイテッドが何も効果的な手を打たなかったことではない。壊されたギターの製造元の経営者が YouTube でメッセージを発信したこと,壊れにくいギターケースを宣伝する企業が即座に現れたことだ。

著者は主要な企業へアンケートを送り,それにどう反応するかでリアルタイムの対応力を評価する。そもそもそのための窓口が見つかりにくい企業もあるし,メールに対して自動化された返信をしたあと,なしのつぶての企業もある。対応のいい企業ほど株価が高いという。

ソーシャルメディアの時代には,企業は顧客との対話で後手に回ると命取りになりかねない。つまり,即時に(リアルタイムに)手を打たなくてはならない。そのためには,基本的につねに社会との対話の窓口を開き,当意即妙の対応ができる人材を配置しておく必要がある。

口でいうのは簡単だが実践はきわめて難しい。組織が大きいほどリスクや権限委譲を避けたがる。しかし,組織を代表して即時に顧客と対話する能力が必要とされる時代になった。これからのマーケティング・コミュニケーションを語るには,組織論の見識が欠かせない。

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