Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

なぜグレイトフル・デッドが?

2012-12-14 09:04:14 | Weblog
昨年のいま頃出版され評判になった本をいま頃読む。ロックバンドのグレイトフル・デッドがいかに優れたマーケティングを行ってきたかが綴られている。このバンドがコンサート中のファンによる録音を許していることは「フレーミアム」戦略の例としてこれまで度々言及されてきた。

だが,グレイトフル・デッドが実業界に先立って始めた優れた実践はこればかりではない。1960年代の後半にすでに「顧客データベース」を作り,ファンへダイレクトメールを送っていたという。他にもいろいろな例が紹介されているので,興味のある方はぜひ本書を読んでいただきたい。

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

D. M. スコット, B. ハリガン (著),
糸井重里 (監修), 渡辺由佳里 (訳)
日経BP社

なぜそこまでグレイトフル・デッドは,時代を先取りできたのか?彼らは別にMBA取得者ではないし,有名なコンサルタント会社と契約していたいう話も聞かない。本書が示唆しているのはその逆で,アンチビジネス的な志向が,ビジネスでの成功をもたらしたという逆説だと思われる。

いうまでもなくその源流は,60年代の対抗文化にある。その点ではアップルとも類似している(求道者的なアップルないしジョブズに比べ,グレイトフル・デッドはもっと大らかに見えるとしても)。アンチビジネスとビジネスの奇妙な関係は興味深く,いずれ探求してみたいテーマである。

本書は非常に読みやすく,かつ楽しい。マーケティングについては腑に落ちる話ばかりである。ただし,グレイトフル・デッドの音楽だけはピンとこなかった(YouTubeで視聴しただけだが)。そこに共感するには,本書がいうように実際にライブを体験する必要があるということか・・・。

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