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Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

Amazonランキングの謎

2011-06-30 21:06:05 | Weblog
アマゾンでは「ロングテールビジネスは成立していない」ことが数理モデルによって証明されたと聞くと,このテーマを研究課題の1つにしているぼくとしては心穏やかではない。実はアンコナに行ったのもそのためだし,この週末さる学会でそのことを発表することになっている。これは大変なことだ。

確率論と数理物理学を専門とする本書の著者は,アマゾンのランキングがどうやって決まっているのかという素朴な疑問を抱く。本書でも例に出されるように,過去すべての累積なら聖書がトップになるはずだし,最近1週間の売上順位ならあまりに短期的だし,確かにどうやっているか不思議である。

そこで著者は,いくつかのサンプルについてランキングの時系列変動を見てみる。するとそこに一定の規則性があることに気づく。それを再現するシンプルな確率モデルを構築することで,アマゾンのランキングは驚くべき原理で「説明できる」ことが分かった(これ以上はネタバレなので秘密)。

Amazonランキングの謎を解く―確率的な順位付けが教える売上の構造 (DOJIN選書)
服部哲弥
化学同人

著者の分析はランキングの計算方法にとどまらず,ロングテール・ビジネスモデルへと及ぶ。まず,アマゾンのランキングを単純に売上部数の順位とみなした従来の研究が否定される。著者の方法で推定された売上分布のもとでは,テールのアイテムは,実質的にほとんど売上に貢献していない。

著者はそのことを歓迎しているわけではない。つまり,アマゾンのような巨大オンライン書店でさえ,利益の観点からは理数系の専門書を扱うインセンティブがなくなってしまうのだから。では,アマゾンは利他的な動機で,あるいは無知によりそのような儲からない事業をしているのだろうか?

ぼくの答えはノーである。そもそも,始祖の Anderson がアイテム別の売上分布と費用構造だけからロングテール・ビジネスモデルを提唱していることに,疑問を感じているからだ。ぼく自身は,顧客サイドをもっと深く眺めることでロングテール・ビジネスの成立要件を問えると考えている。

本好きは品揃えで本屋を選ぶので,売れ筋だけ並べた本屋には行かない(だが,彼らも売れ筋をたくさん買う)。つまり,優良顧客への CRM という視点が重要だと。詳細は,実証分析の結果を今週土曜のダイレクトマーケティング学会で発表するので関心ある方はぜひお越し下さい(^^)

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