Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

Excel Solver で選択モデルを!

2009-05-16 15:34:25 | Weblog
だいぶ前のことだが,Peter Fader が実務家向けに教えるセミナーに出たことがある。そこでは,あまり実務では普及していない負の二項分布等々の確率過程モデルを,Excel に内蔵された Solver というツールを使ってパラメター推定する方法を教えていた。Solver とは,Excel に付いてくる最適化のツールだ。だから,実務家や学生は Excel を使う作業の延長線上で,容易に最適化計算を行なうことができる。

最適化=数理計画法はさまざまな経営工学的問題の解決に使われてきたが,同時に統計学でも用いられている。尤度関数を最大化するというのは,ほとんどの統計手法が立脚する原理である。だから, Solver を使えるようになれば,ほとんどの統計分析を手元の PC で実行できる(Office を持っているという前提で)。だが,日本でこのことを見据えたセミナーなり文献なりは,これまでさほどなかったように思える。

だからこそ,この本を本屋で見かけたとき,大変ありがたく感じた。本書は回帰分析で始まり,ロジスティック回帰,判別分析等々を経て,最後はコンジョイント分析で終わる。ここは実は,多項ロジット選択モデルを Excel で実行する章,といってもよい。つまり,Excel さえあれば(アドインやマクロなしに),この本を手引きに誰もがマーケティング・サイエンスの主要な手法を実行できる。その意義は大変大きいと思う。

Excelソルバー多変量解析―因果関係分析・予測手法編
中山 厚穂, 長沢 伸也
日科技連出版社

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もちろん,実際にデータを解析する立場からいうと,何もかも Excel で行うのは面倒な場合もある。だから,それを仕事とする人々は,やはり何らかの統計ソフトを使った方が便利だろう。しかしながら,Excel で計算することで,その手法のよってたつアルゴリズムが,おおまかではあるが理解できるようになる。つまり,その教育的効果に注目すべきではないかと思う。だから,授業での活用が大いに期待される。

この本には続編があって,ポジショニングやセグメンテーションのための手法がカバーされるとのこと。つまり,因子分析やクラスタリング,潜在クラス分析といった手法も(おそらく) Excel で追加費用なく実行できるようになるのだろう。ありがたいことばかりだが,唯一残念なのが,この本の価格が 4400 円とちょっと高めであることだ。もうすこし安ければ,意欲のありそうな学生にどんどん推奨するのだが・・・。
 

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