私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「ツリー・オブ・ライフ」

2011-08-23 20:13:45 | 映画(た行)

2011年度作品。アメリカ映画。
若い頃に弟に死なれたジャックは、仕事で成功し中年にさしかかった今も、子ども時代のトラウマに囚われていた。1950年代半ば、中央テキサスの田舎町で暮らしていた10代のジャック。夢のように美しい風景に包まれていながら、彼の生活は、強権的な父親に完全に支配されていた。「男が成功するためには、なによりも力が必要」と信じ、自分の信念を息子たちに叩き込もうとする父親。我が子に無償の愛を注ぎ続ける聖母のごとき母親。そんな相反する両親に挟まれ、翻弄されるうち、幼かった少年はやがて純真さを失い、そんな自分に傷ついていく…。時が経っても痛みを伴う回想の中で、ジャックは心の平安にたどりつけるのか?(ツリー・オブ・ライフ - goo 映画より)
監督は「シン・レッド・ライン」のテレンス・マリック。
出演はブラッド・ピット、ショーン・ペン ら。




いかにもアート系の映画といった内容の作品だ。
本作はブラッド・ピットが主演ということもあってか、シネコンで上映もされているけれど、シネコンのメインの客層に受けるのだろうかとよけいな心配をしてしまう。
これはミニシアターでこじんまりと公開するタイプの作品だろう。

そんな風に感じたのは内容がわかりにくいということが大きい。前半部などは特にそう感じる。


映画の冒頭で、主人公一家の次男が死んでしまう。その家の長男はその後大人になるが、弟のことを忘れるな、とおそらく親からいまだに言われているようなありさまだ。それを受けて男は過去をふり返り、自分たちの罪はいつ始まったのかと自問するようになる。
そういう展開である。そこまでは別に問題ない。

しかしそこから映像は、火山の爆発の映像へと切り替わっていく。
その流れが最初まったくもって理解できず、いくらか戸惑ってしまう。

だが時間が経つにつれ、それは地球創生の過程を描いているのだろうということが何となく見えてくる。
つまり自身の罪についてそのレベルにまでさかのぼって考えているものと、あるいは心象風景をそのようなイメージに仮託して描いたものとと勝手に解釈した。
それは見ようによってはスケールが大きいとも言えるかもしれないけれど、やり過ぎの感がある。僕には、あのシーンはギャグにしか見えない。


しかし後半の父子関係の描写は繊細でなかなか良かった。

ショーン・ペン演じる彼が過去をふり返るのは、ラストの病室を思わせる機械音からして、親が死にかけているのが要因と思われる。そのため、彼は自分の過去を見直しているのではと思う。

そこから見えてくる、父子関係はそんなに変なものではない。

少なくとも、父も母も子供たちを愛しているのはまちがいないだろう。
ただ、それぞれの子どもたちへの接し方が対象的である。具体的に言うと、父は息子たちに厳しく接し、母は愛情をもって接しているような状況だ。
そのため、子どもらは、父に対してその暴君のような態度に反発する。子どもらは父よりも母を愛しているようだけど、そんな母に対しても、父に対して弱腰だとひどい言葉をぶつけることもある。

息子の父に対する反発は、至極まっとうである。
僕の家も似たようなところがあるので、長男の気持ちは痛いくらいによくわかる。自分自身にあてはめて考えるのはよくないが、心情的な流れはわりあいリアルだ。
そのため、個人的にはしんしんと胸に響いてならない。


そんな父子の関係は、父のリストラにより微妙な変化が生まれる。そこから見えてくるのは、弱い父の姿だ。
それを思い返したことで、彼はようやく対等の人間として親と向き合えたのではないだろうか。まるで死者との再会を思わせるラストシーンを見ているとそんな風に感じられてならない。
そのため、全体の印象はポジティヴだ。


本作は、アート系の映画にありがちな、ひとりよがりな側面の濃い作品だと思う。
けれども、親子の関係を静かに追っていて、いくつかの点で、強く印象に残る。
人には薦めないが、僕はわりに好きな映画のようだ。

評価:★★★(満点は★★★★★)



出演者の関連作品感想
・テレンス・マリック監督作 
 「ニュー・ワールド」
・ブラッド・ピット出演作
 「イングロリアス・バスターズ」
 「オーシャンズ13」
 「バベル」
 「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」
 「Mr.&Mrs.スミス」
・ショーン・ペン出演作、監督作
 「イントゥ・ザ・ワイルド」
 「ミルク」

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