私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「最後の忠臣蔵」

2011-01-06 21:10:45 | 映画(さ行)

2010年度作品。日本映画。
吉良上野介邸討ち入りの後に、大石内蔵助から「討ち入りの真実を赤穂の遺族たちに伝え、彼らの生活を助けよ」という命を受けた寺坂吉右衛門。16年後、彼は最後の遺族を訪ね、すべての使命を果たし終えた。その後京都を訪れた寺坂は、討ち入りの前日に逃亡した瀬尾孫左衛門の姿を見かける。実は瀬尾も大石から密命を与えられていたのだった。その密命とは、大石内蔵助と側女の間にできた子どもを、保護して育てよと言うものだった。(最後の忠臣蔵 - goo 映画より)
監督は「北の国から」の杉田成道。
出演は役所広司、佐藤浩市 ら。




忠臣蔵、こと元禄赤穂事件は非常に有名な事件だが、吉良邸討ち入りに参加しなかったものは、世間的には白眼視されたという話はよく聞く。
有名どころだと大野九郎兵衛などがいいところだ。
芝居の中だとかわいそうなことに、完全に彼は大石の敵役である。

彼らは討入りに参加しなかったために、臆病者と罵られ、世間からはつらい仕打ちを受けることになる。
そしてそうやって英雄たちに荷担しなかったことを責めるのは、人間心理としてはありがちなのだ。

だが残った者には残った者の理由や事情があり、それ相応の苦悩があるものだ。そして生き残ったがゆえの罪悪感というものもある。
さながら重大事件の被害者が感じるというサバイバーズギルドのような感覚だって覚えるのかもしれない。


役所広司演じる瀬尾孫左衛門も吉良邸討ち入り直前に逐電して生き延びることになる。
しかしそこには大石内蔵之介の愛人と子を守るという理由があり、そしてそれをもって生き延びろ、とも言われている。


そんな孫左衛門は大石の忘れ形見、可音に惚れられることとなる。
可音の恋心はいかにもファザコン的で、ちょっとゆがんで見えるのだが、少し切なく感じられる点がいい。
ついでに言うと、孫左衛門は可音以外の別の女にも惚れられることになる。
孫左衛門、やたらモテモテである。うらやましい役どころだ。

だが孫左衛門は、そんな二人の愛をあくまで拒絶する。
二人の愛を拒絶する理由はそれぞれ微妙に異なっている。だが結論的に見ると、根っこは一緒だ。
それは孫左衛門は武士道を貫きたかった、という一点に尽きるのである。


正直な話、現代を生きる僕からすると、彼の武士道を貫こうとする生き方は理解できない面はある。
それは自分の生き方を狭めるものでしかないからだ。
僕には、彼の生き様はあまりに窮屈で面倒なものにしか見えない。

しかし彼はそういう生き方しかできない男なのだろう。
そしてその窮屈としか見えない生き方こそ彼の美学でもあるのだ。
そしてそんな彼の武士道の美学がラストの行動を生んでいるのだろう、と思う。


僕は孫左衛門の生き方をとやかく言う資格はない。
だが僕には、彼の行動と武士道は、あまりに悲しいものとしか映らなかった。正直に言うなら、それはないよ、と思ってしまう。たとえ、彼がそういう生き方しかできない男だとしてもだ。

その悲しみと武士道の価値観が、個人的にはうまくなじめなず、どうしても高評価をつける気分にはなれない。
だが丁寧に忠臣蔵の一側面を描いていて、興味深い作品というのは確かだろう。

評価:★★★(満点は★★★★★)



出演者の関連作品感想
・役所広司出演作
 「THE 有頂天ホテル」
 「叫」
 「SAYURI」
 「十三人の刺客」(2010)
 「それでもボクはやってない」
 「劔岳 点の記」
 「トウキョウソナタ」
 「パコと魔法の絵本」
・佐藤浩市出演作
 「秋深き」
 「アマルフィ 女神の報酬」
 「暗いところで待ち合わせ」
 「THE 有頂天ホテル」
 「ザ・マジックアワー」
 「誰も守ってくれない」
 「天然コケッコー」 
 「闇の子供たち」

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