2008年度作品。アメリカ映画。
2004年、イラク・バグダッド。駐留米軍のブラボー中隊・爆弾処理班の作業中に爆発が起き、班長のトンプソン軍曹が爆死してしまう。トンプソン軍曹の代わりに派遣されてきたのは、ウィリアム・ジェームズ二等軍曹。彼はこれまでに873個もの爆弾を処理してきたエキスパートだが、その自信ゆえか型破りで無謀な行動が多かった。部下のサンボーン軍曹とエルドリッジ技術兵は彼に反発するが、ある事件をきっかけに打ち解けていく。(ハート・ロッカー - goo 映画より)
監督は「K-19」のキャスリン・ビグロー。
出演はジェレミー・レナー、アンソニー・マッキー ら。
戦争の雰囲気はどこかピリピリしている。
もっとも命のやり取りの現場なのだから、それも当然と言えば当然かもしれない。
この映画で描かれるのは、イラク戦争における爆弾処理班を描いたものである。そんな場面でも(そんな場面だからこそ)、場の空気はピリピリしている。
たとえば爆弾の解体作業のため現場に乗り込むときは、行くまでの途中に敵がいるかもしれないという恐怖に襲われたりする。
現場に着けば、爆弾がいつ爆破するかしれない恐怖があるし、爆破装置を起動する人間が近くにいるかもしれないという恐怖も存在する。
その際の空気はピンと張り詰め、じりじりともしている。恐怖のあまり焦りすら生まれている。
映画のスクリーンで見ているだけでも、それは結構神経をすり減らされるものだ。当の現場ならなおのことだろう。
そんな場面だけにチームプレイは重要となってくる。
しかし新しいリーダーのジェームズは、死を恐れないような無謀な行動を取るし、自分の復讐心から敵を追い、結果的に味方にケガを負わせてしまうような場面だってある。
その姿は、好意的に語るなら、豪放磊落。しかしあまり誉められたものでもないだろう。
けれど、そんな繊細さと無縁に見える彼ですら、戦争という現場を生きていくことで、神経をすり減らしているのだ。
映画の中でジェームズは、イラクで親しくなった少年が人間爆弾の犠牲になったのでは、と思い込む場面がある。
その残酷なイメージが、結果的に彼を極端な行動をとらせるに至らしめている。
そこにあるのは、紛れもない苦悩である。戦争が彼の心を追い詰めていることは疑いえない。
彼は一見豪放で、危険な行動を取っているが、精神的にやられている姿を見ていると、その大胆な行動は、戦争で心が追いつめられた結果ではないかとすら思えてくる。
平たく言えば、心が追いつめられるあまり、無意識のうちに死を望むようになった。そう見えなくもない。
戦争は恐ろしく、死に近づく場面も多く、心を削られるかのような事態にも出くわす。
戦争を忌避したくなっても、誰も文句は言えまい。
だが戦争の真に恐ろしいところは、そんな苦しい場面を味わったにもかかわらず、再び戦場に戻りたくなってしまうという点にあるのだ。
彼は戦争によって、苦しめられた。
しかし命のやり取りが行なわれるギリギリの状況を生きた彼は、もう平凡な日常に戻ることはできない。
その姿が実に悲しく、恐ろしいのである。
物語として見れば、大しておもしろいわけではないのだが、問題意識の大きさが非常に印象的な一品である。
アカデミー賞を取ったのは、そのテーマ性にあると思う。
ともあれ、これもまた戦争映画の一つの佳品と言えるだろう。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
出演者の関連作品感想
・ジェレミー・レナー出演作
「スタンドアップ」
この映画はすごいねー。残酷なシーンが全然見られないヘタレな私が、戦争映画を一度も目を覆うことなく最後まで見たのは今回が始めただよ-。すげぇ~!
なんつーか、戦争映画なのにそんなに残酷なシーンはなくて、でも臨場感はバッチリあって、始終ピリピリとした雰囲気が漂ってて、「次は何が起きるんだ?」ってこっちの神経も消耗してくんだよねぇ、この映画(文章長いぞ)。テーマは重いのに、ちゃんとエンタメになってるところがすごい。戦争映画も進化したもんだ。
私、『アバター』を2回見に行っちゃうぐらいハマったんだけど(でもってみんなから笑われた・汗)、作品的には断然こっちの方が上だね。オスカー取れてよかったぁー。
確かに臨場感あるし、こっちまで神経を消耗するんですよね。なんかすごいよなー、って見ていて何度も思いました。それに、ずっしりとした手ごたえっていうのかそんなものを、見た後には感じました。
やっぱすごいです。
『アバタ―』2回観賞はすごいですね。よっぽどはまったんですね。
僕も『アバタ―』はおもしろくて、個人的な好みでは、『ハート・ロッカー』よりも上だけど(ただしアカデミー賞的には妥当)、映画館に2回は行けないです。
やっぱさー、ああいうビジュアル勝負の映画って、初めて見たときのインパクトはすごいけど、2回目になるとおもしろさが半分以下になるね。伏線が張りめぐらされた複雑なストーリーだったら、2度目の鑑賞でも見応えがあったかもしれんけど。。。
そういやこの間、『GOEMON』をDVDで見たんだけど、やっぱ映像的には『アバター』とは比較にならないね。戦のシーンがゲームっぽくてがっかりした。こうやってビジュアル対決で見ると、やっぱ『アバター』ってぬきんでてるなぁと思う。
『アバタ―』はおもしろかったけど、僕もいま見たらおもしろいと思えるかどうか。
ストーリーを微妙に忘れたころにもう一度見たら、結構楽しめそうだけど。
『GOEMON』は見たことないけど、同じ監督がつくった『キャシャーン』だったら、見た事あります。記憶する限り、『アバタ―』よりはやっぱり落ちました。
やっぱり技術的な差なのかな、むしろ金の差か。何にしろ『アバタ―』の映像はやっぱり凄いな、って改めて思います。