霊感が強く、霊が見える少女キーリ。彼女は冬の休暇中、不死人の青年ハーヴェイと、小型ラジオの憑依霊・兵長と知り合う。キーリは彼らの旅に勝手についていくことに…
第9回電撃ゲーム小説大賞を受賞した、壁井ユカコのシリーズ1作目。
出版社:メディアワークス(電撃文庫)
エンターテイメントとして、単純におもしろい。そう素直に思える作品だった。
霊感が強く、幽霊が見える少女が旅をするというお話だ。
そこで出てくるエピソードのつなぎのうまさと、テンポの良さにただただ舌を巻く。特に前半部の各エピソードは短編として切り取ってもいいくらい、端正できれいにまとまっている。加えて、その後の展開を思わせる内容が含まれていて、その手腕は見事なくらい鮮やかだ。
もちろん後半の怒涛の展開も含めて、かなり上手に組み立てられた作品である。思わず一気読みをしてしまうほどだった。
本書はロードムービー、ホラー、アクション、恋愛の融合系ともいえる作品である。それらを無理せず組み立てて、メインの二人を光らせている様がすばらしい。
めんどくさがりのハーヴェイが心を開いていく姿、キーリがハーヴェイと兵長と離れたくないと思う過程が、エモーショナルで極めて感動的である。その恋愛すれすれの二人の思いの暖かさが胸に深い余韻を打つ。満足の一品だ。
評価:★★★★★(満点は★★★★★)
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