私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

『コフィン・ダンサー』 ジェフリー・ディーヴァー

2008-07-20 08:50:30 | 小説(海外ミステリ等)

FBIの重要証人が殺された。四肢麻痺の科学捜査専門家リンカーン・ライムは、「棺の前で踊る男(コフィン・ダンサー)」と呼ばれる殺し屋の逮捕に協力を要請される。巧みな陽動作戦で警察を翻弄するこの男に、ライムは部下を殺された苦い経験がある。今度こそ…ダンサーとライムの知力をつくした闘いが始まる。
ジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライムシリーズ第2弾。
池田真紀子 訳
出版社:文藝春秋(文春文庫)


シリーズ2作目だが、相変わらずリンカーン・ライムをめぐる面々はユニークでキャラが立っている。ライムやアメリア・サックスとの関係も、お約束といえばその通りだが、進展が見られて興味深い。
こういったキャラクターの魅力とその後の展開で惹きつけていくのもシリーズものの強みであろう。

物語の方は前作同様、いろいろな意味で綿密につくられている。科学捜査のリアリティは今回も健在で物語に説得力を与えるのに一役買っている。
だが今回は科学捜査以上に、飛行機に関する緻密な描写に驚かされた。特にパーシーがコロラドに緊急着陸するシーンはすさまじい。そのシーンでは作者の取材に基づく緻密な描写がくりかえされていて、情景がリアルに想像でき、シーンのそこかしこに緊迫感が生まれていたのが印象的だ。

また細部だけでなく、全体のプロットの流れも優れている。
伏線が丁寧に張られラストで一斉に回収していく点ももちろんすばらしいのだが、たたみかけるようにクライマックスを連続させるあたりなどは圧巻の一語である。よくもこれだけのアイデアを思いつき、惜しみもなくつぎ込めるものだと感心してしまう。これこそがジェフリー・ディーヴァーの真骨頂なのだろう。

惜しむらくは、コフィン・ダンサーの正体が狙いすぎて、若干嘘っぽく見えたことだろうか。
もちろんその真相の理由は丁寧に書かれていたし、伏線も張られているし、読んでいる最中はものすごく驚かされたのだが、少し無理があるような気がしなくはない。

しかしトータルで見れば、満足そのものの一品である。前作の『ボーン・コレクター』よりも個人的にはこちらの方が好きだ。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)


そのほかのジェフリー・ディーヴァー作品感想
 『クリスマス・プレゼント』
 『ボーン・コレクター』

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