私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「世界にひとつのプレイブック」

2013-04-09 20:43:48 | 映画(さ行)

2012年度作品。アメリカ映画。
妻の浮気が原因で心のバランスを崩し、すべてを失ったパット(ブラッドリー・クーパー)は、実家で両親と暮らしながら、社会復帰を目指してリハビリをしている。そんなとき、近所に住むティファニー(ジェニファー・ローレンス)と出会う。ティファニーは愛らしい姿からは想像もつかない過激な発言と突飛な行動を繰り出し、パットを翻弄する。実は彼女も、夫を事故で亡くし、心に傷を負っていた。立ち直るためにダンスコンテストへの出場を決意したティファニーは、パットを強引にパートナーに任命する。こうして、2人の人生の希望を取り戻す挑戦が始まった……。
監督はデヴィッド・O・ラッセル。
出演はブラッドリー・クーパー、ジェニファー・ローレンスら。




人はある程度はクレイジーだ、って感じのセリフが最後の方に出てくるけれど、確かに一面では正しい。

この映画の中で心の病を負っているのは、主人公2人である。
けれど、それを見守る周囲の人間だって、見ようによってはどこかクレイジーだ。

主人公の父親は、アメフトのスタジアムで暴力沙汰を起こしているし、主人公の兄貴も似たことをしている。それに父親はギャンブル中毒と言ってもいいような状況だ。
ただ彼らが、心理療法を受けないのは、それを極端な形で発露しないからだろう。


一方の主人公の行動は、やや極端だ。
妻の浮気現場を目撃して、浮気相手をぶん殴るのは、良しとしないまでも理解はできる。
だがその後の、本の内容が気に入らないからと窓を壊して親を叩き起こしたり、結婚式のビデオが見つからないと深夜に騒ぐのは、やはり常軌を逸している。

見つけたいものが見つからなくていらいらする気持ちはよくわかる。
問題は、彼はそのいらいらを行動として表さざるを得ない点にあるだろう。
そんな風に騒がずにいられない姿を見ていると、当人もしんどいだろうし、周囲もきついのだろうな、と見ていて感じる。

人生はときにおいては、とかく生きづらい。

そんな主人公は妻とよりを戻そうと焦そうとあくせくする。
いやいや無理だろう、とは思うのだが、彼としては真剣だ。
そしてその過程で夫を亡くして、性的な意味で荒れてしまった女、ティファニーと出会う。


ティファニーもなかなかエキセントリックな女性である。
同僚男性全員と性的関係を持つという時点で、精神的にかなり不安定だということはよくわかる。クレバーな人とは思うが、やはり何かがゆがんでいる。

実際感情を暴発させる場面も見られるわけで、これはきついな、と感じる面はあった。
彼女も生きていくのは大層しんどいことだろう。

そんな二人じゃ、精神的に合わないよね、とは思うのだが、いろいろありながらも、ラストのダンスシーンに向けて、二人して関係を築いていく。


そんな物語はよく言えば予定調和である。
物語展開にひねりはあるけれど、着地する場所は、概ね予想通り。
個人的にはあれほど妻と会うことに執着していた主人公が、ヒロインに心を移す過程が、ピンとは来なかったけれど、つっこむのは野暮なんだろう。

だがよくまとまった物語で、それなりに楽しめるのは事実である。
心を病んでいる主人公たちの描き方なども結構好きだ。
もどかしさはあるけれど、よくできた作品ということは確かだろう。

評価:★★★(満点は★★★★★)

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