1996年度作品。アメリカ映画。
ミネソタ州ファーゴ。借金返済のため妻の偽装誘拐を工作した自動車ディーラーの狙いは、裕福な義父から身代金をせしめること。ところが、役に立たない凸凹コンビに誘拐を依頼したばかりに、思いも寄らぬ方向へと進展していく…。
監督は「バートン・フィンク」のジョエル・コーエン。
出演はフランシス・マクドーマンド。ウィリアム・H・メイシー ら。
殺伐とした殺人が展開される、幾らか陰惨な映画だ。
妻の偽装誘拐を行ない、義父から金を巻き上げるという単純な計画だったのが、保身のため行き当たりばったりに次々と人を殺していくという展開はあまりに悲惨だ。
描写も怖いものが多く、妻の誘拐のため家に押し入るシーンといい、通りすがりの目撃者を殺害するシーンといい、共犯者を手にかけるシーンといい、結構ぞわりとするものがあってそれなりにえぐい。
だがそれでもこの作品は単純に悲惨で、陰惨なだけの映画にはなっていない。それはやはり女性警察官のマージの存在が大きいのだろう。
だがはっきり言って、このマージのパートにはあまりに不要な部分が多いのである（ヤナギダのシーンなどはその最たる例だ）。
彼女のパートを映画に組み込んだのは、殺人犯の非日常と対比するためだとは思うのだが、それは必ずしも効果的とは言いがたい。
だがそれでもこのマージのパートは、無駄が多いながらも、一つのアクセントにはなっていたと思う。
そこからにじみ出る妙なユーモアや生活感には何度もくすりとさせられて（特に女二人に聴取をするシーンは笑える）、陰惨な中にしっかりとした温かさを植えつけている。
いくらか難はあるが、個人的には結構好きな作品だ。
評価：★★★★★（満点は★★★★★）
製作者・出演者の関連作品感想
・ジョエル＆イーサン・コーエン監督作
「ノーカントリー」
・フランシス・マクドーマンド出演作
「スタンドアップ」
・ウィリアム・Ｈ・メイシー出演作
「インランド・エンパイア」
「サンキュー・スモーキング」
「ボビー」
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私、この映画を観る前は、「もしも殺人犯に命をねらわれたら…、やっぱ命乞いするかな。話せば、わかってくれるかもしれん。相手も人間なんだしさ～」とか思ってたんですが（笑）、この映画を観て、「あかん。こんなのに遭遇したら、もうおしまいやー（関西人か、私は）」と腹をくくったのを覚えてます。この殺人者、すごいリアリティがありますよね、感情がなくて。サイコパスってこんな感じなんだろうか。。。
『ファーゴ』の衝撃があまりに強くて、去年『ノーカントリー』が公開されたときに、「コーエン兄弟だ～♪」とかいいながら、いそいそと映画館に観に行ってしまい…、激しく後悔。「なんであたしはこんな怖い映画を、金払って見てんだー！？」と（笑）。やっぱコーエン兄弟は、DVDに限りますよね。。
確かにあれは話し合いがどうこうってレベルじゃないです。やたらリアルで、いるかもしれないって思ってしまう。できれば、ああいう人に出会うことは丁重にお断りしたいです。
>「コーエン兄弟だ～♪」とかいいながら、いそいそと映画館に観に行ってしまい…
少し笑いました。確かにそのノリで「ノーカントリー」見にいったら、きついっすよね。その髪型はどうよ、って感じなのに、むだにこわいハビエル・バルデム。でも「ノーカントリー」は個人的にはかなり好きです。
私、映画や小説で猟奇殺人犯が出てくるたびに、「こんな人いないよ～」とか思ってたんですが、『ファーゴ』を見て初めて「いるかもしれん、こういう人間。ってか、絶対いるよー！」って確信しましたもん。
今もって『ファーゴ』ほどリアリティのある猟奇殺人犯キャラにはお目にかかってない気がするなぁ。『ノーカントリー』は確かに超怖かったけど、「んーー。でも、やっぱこんな人いないよー」と思いました。
といっても、「じゃあ、リアリティの境界線はどこだ？」と聞かれても答えられないんですが。。。どこなんだろう？ なんか感覚的に「こういう人っていそう」「いなさそう」って思うんですよね。。。
設定が、殺し屋か、チンピラかってのもあるのかもしれないけど、それだけで片付けるのもちがうような気もするし。「ファーゴ」の方が、殺人犯が微妙に人間くさいからかな、って思ったけど（話しかけても、めんどくさそうな顔して返事しないところとか、主観だけどそう感じる）、どうなんでしょうね。
わかんないな。わからないから、すごいもどかしい。