私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

『深夜プラス1』 ギャビン・ライアル

2011-02-23 19:18:32 | 小説(海外ミステリ等)

ルイス・ケインの引き受けた仕事は、男をひとり車でリヒテンシュタインへ送り届けること、タイムリミットは深夜プラス1。だが、フランス警察が男を追っているし、男の敵は名うてのガンマンを差し向けてきた! 執拗な攻撃をかいくぐり、ケインの車は闇の中を疾駆する! 英国推理作家協会賞受賞の名作冒険小説
菊池光 訳
出版社:早川書房(ハヤカワ・ミステリ文庫)




『深夜プラス1』はおもしろい作品だ。
いろいろあるけれど、最終的に、おもしろい、と思える。それだけでも本作は及第点の作品である。


もちろん、どことは言わないが気に入らない部分はある。
しかしトータルで見ると、作中には一定の緊張感が流れていて、その点に僕は読んでいる間、ずっと惹かれていた。

最初の方の、車の中に死体があるシーンからドキドキするし、富豪をリヒテンシュタインまで送る間、危機が次々と迫り来る展開にはワクワクし、その危機を乗り切ろうと、手段を講じる様にはうなってしまう。
単純な話、読み物として普通におもしろいのだ。
それもすべてはプロットの見せ方が巧みだからなのだろう。
おかげで集中力が切れることなく、一気に読むことができる。エンタテイメントとして、非常に優れている。


また第二次大戦後のヨーロッパの雰囲気が出ていて、その点も目を引いた。

この作品に登場する人々たちは、いまでこそ、弁護士やビジネス・エージェントやガンマンとして働いているけれど、戦時はヨーロッパの戦線で、レジスタンスなり、諜報員として戦ってきた。
戦争を生きてきた彼らは、平和な現代に生きていても、まだどこか戦争の影を引きずっている。
物語はエンタテイメントだけど、時折落ちるそういった人物の影が心に残る。

気に入らない部分はあれ、良い部分がそれを挽回しており、非常に楽しい。良質のサスペンスである。

評価:★★★★(満点は★★★★★)

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