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「仏教」について、創始者であるブッダの生涯とその思想、仏教教団の展開、大乗仏教の歴史と思想の他、日本にどのように浸透していったか等を、コンパクトにまとめる。
出版社:ナツメ社
『聖☆おにいさん』というマンガが好きなのだが、それを読んでいるとき、仏教のことってよく知らないよな、と思ったのがこの本を読み始めたきっかけである。
きわめてミーハーなわけだが、本書はそんなミーハー初心者の僕にもわかりやすいように書かれている。
本書は、仏教の基本的な思想を体系的に説明してくれている。また難解な仏教の論理が、地方の文化を吸収し、大衆にも理解しやすいよう、いかに変容していったかという、歴史的な流れも丁寧に説明されている。
そういった仏教のさわりを知る程度なら、本書は充分役割を果してくれるだろう。
そのわかりやすさこそが、このシリーズのいいところだ。ありがたいことである。
ところで、本書を読んでいて、哲学と宗教というものは相通じるものがあると僕は感じた。
二つの共通項とは、この世界をいかに解釈するかという点に尽きるだろう。
この世界はたった一つだが、それをどう捉え、定義化するかは、多義的なものでしかない。
そして、多義的なこの世界を一つの形に定義化し、生きていくための指針を与えるものが宗教なのだろう、という風に僕は思った。非常にどうでもいいことだけど。
だが実際ここに紹介されている、釈尊の生涯やその思想、大乗仏教の思想などは、どれも哲学的な要素に満ちている。
有名な言葉で言うなら、四苦八苦や業、縁起、煩悩、方便、三昧などは世界をいかに解釈するかというのが、思考の根本に据えられているように思う。そういう意味、仏教というものは結構論理的なのだろう。
個人的には龍樹の思想がもっともおもしろかった。
ここでざっくりと紹介されている彼の思想は、はっきり言って、ただの言語ゲームにしか見えない。
ある意味、ヴィトゲンシュタイン的だが、龍樹の場合は「戯論」という単語を用いて、言葉の意味を剥ぎ取ることに主点を置いているように見える。その辺が個人的にはおもしろい。
そんな戯論を生み出す心を、アーラヤ識という解釈方法で捉えるところも、またおもしろく映った。三島の『暁の寺』にいろいろ書いてあったと思うが、きれいさっぱり忘れていたので、こういう風に再勉強できるのはうれしい。
そのアーラヤ識で、個人的におもしろいと思ったところは二点ある。
一つは種子という発想を用いて、心、あるいは自我というものの唯一性を否定しているところ。もう一つはそのアーラヤ識を認識するのが心であるというところに矛盾が生じ、自家撞着に陥っているところだ。
その発想法や矛盾がおもしろく、もう少し深くその内容についてつっこんで考えたい気持ちも湧いてきた。実際にちゃんと調べるかはともかく、そう思わせるきっかけをつくってくれるのはありがたい。
ともかくいろいろと刺激に富んだ内容である。
身近な存在である仏教を軽く理解したい程度なら、これで充分だろう。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
そのほかの図解雑学シリーズ
『図解雑学 現代思想』小阪修平
『図解雑学 重力と一般相対性理論』二間瀬敏史
『図解雑学 心の病と精神医学』影山任佐
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